『ヴェルクマイスター・ハーモニー』や『ニーチェの馬』をはじめ、現代文明の崩壊と自然の復讐を描いた作品を手がけるハンガリーの映画監督タル・ベーラ。今日の映画界でもっとも尊敬を集めるアーティストの一人であるタル・ベーラ監督によるマスタークラスが2023年2月6日(火)より開催されることが決定した。
開催地は2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示対象地域となった福島県内の12市町村。参加者は世界中から集まった応募者の中から、タル・ベーラ監督がピックアップした8人。会期中は、タル・ベーラ監督が創立した映画学校「film.factory」の卒業生であるフィルムメーカー/アーティストの小田 香監督が記録監督を務める。
さらに、マスタークラスの開催に際して、山田洋次監督より応援コメントが到着。日本を代表する映画監督も注目するマスタークラスとなっている。
山田洋次監督 コメント
「心からの応援を――クラウド・ファンディングに寄せる」
タル・ベーラ監督は、実に不思議で魅惑的で、誰にも真似できない美しい映画を作る人であり、今ぼくが世界中で一番会ってみたい監督です。
フィルムの時代が終わるなら自分も映画監督を辞めるといって引退したという、伝説的な存在のタル・ベーラさんが日本のフクシマに来てくれるという知らせにぼくはとっても驚いています。『ニーチェの馬』のような、思い出してもぞくぞくするようなあの素敵な映画の発想はどのようにして生まれ、どのように撮影されたのか、ぜひとも聞いてみたいと思う。
冬のフクシマの寒い中でのワークショップの運営は大変だろうけど、これが成功して、かの天才的な監督から若い映画人たちがたくさんのことを学べるように心から念じてやみません。
山田洋次
また、本マスタークラスの開催決定とともにモーションギャラリーにて、クラウドファンディングがスタート予定。募集期間は90日間。世界的監督であるタル・ベーラ監督による貴重なマスタークラスに参加するチャンスだ。クラウドファンディングの詳細やその他の最新情報はXアカウント(@FFIR2024)で決定次第随時お知らせがある。
FUKUSHIMA with Béla Tarr開催概要
タル・ベーラは今日の映画界でもっとも尊敬を集めるアーティストの一人。
彼は現代文明の崩壊と自然の復讐をセルロイドのフィルム上に描き出し、映画的な時空間を創り上げてきた。
10年前の2013年にはサラエヴォに映画学校「film.factory」を創立し、多くの優秀な映画人を輩出した。
その中には今回のマスタークラスの記録をする小田 香さんもいる。タル・ベーラ氏により2024年の2月6日から2週間マスタークラスを開催することになった。場所は2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示対象地域となった福島県内の以下の12市町村[田村市、南相馬市、川俣町、 広野町、楢葉町、富岡町、川内町、大熊町、双葉町、 浪江町、葛尾村、飯舘村]から選定される。
実施期間:2024年2月6日(火)〜2月19日(月) 14日間
対象地域:福島県12市町村
招へい監督:タル・ベーラ
記録監督:小田 香
Xアカウント:@FFIR2024
一般公開イベント:
・受講者および講師紹介・上映交流会
日にち:2024年2月8日(木)
場所:朝日座(南相馬市原町区大町1丁目)
スケジュール:
午前の部 10:00 開場
10:30~12:00 受講者紹介
午後の部 13:00 開場
13:30 講師紹介および上映
13:30 ◎『鉱ARAGANE』
[2015年、68分、小田香監督作品]
15:00 ◎『ニーチェの馬』
[2011年、154分、タル・ベーラ監督作品]
18:30 終了
料金:
午前の部 無料
午後の部 3000円[ただし田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村の福島12市町村の住民の皆さまは1500円]
チケット予約:https://fukushimawithblatarr-0208.peatix.com/(外部サイト)
・成果報告会・上映交流会
日にち:2024年2月18日(日)
場所:葛尾中学校(双葉郡葛尾村落合字菅ノ又14-2)
スケジュール:13:00 開場 13:30 開始
料金:無料
チケット予約:詳細が確定し次第、Xアカウントにて告知予定
この事業は令和5年度 地域経済政策推進事業費補助金[芸術家の中期滞在支援事業]の支援を受けています。
主催:福島映画教室実行委員会
協力:ドリームゲート、鈴木映画、ビターズエンド、スリーピン、コミュニティシネマセンター、南相馬市、葛力創造舎、葛尾村
マスタークラスの先生:招へい監督 タル・ベーラ氏について
1955年ハンガリー、ペーチ生まれ。
哲学者志望であったタル・ベーラは16歳の時、生活に貧窮したジプシーを描く8ミリの短編を撮り、反体制的であるとして大学の入試資格を失う。その後、不法占拠している労働者の家族を追い立てる警官を8ミリで撮影しようとして逮捕される。釈放後、デビュー作『ファミリー・ネスト』(77)を発表。この作品はハンガリー批評家賞の新人監督賞、さらにマンハイム国際映画祭でグランプリを獲得した。1994年に約4年の歳月を費やして完成させた7時間18分に及ぶ大作『サタンタンゴ』を発表。ベルリン国際映画祭フォーラム部門カリガリ賞を受賞、ヴィレッジ・ボイス紙が選ぶ90年代映画ベストテンに選出されるなど、世界中を驚嘆させた。続く『ヴェルクマイスター・ハーモニー』(2000)がベルリン国際映画祭でReader Jury of the “Berliner Zeitung”賞を受賞、ヴィレッジ・ボイス紙でデヴィッド・リンチ、ウォン・カーウァイに次いでベスト・ディレクターに選出される。2001年秋にはニューヨーク近代美術館(MOMA)で大規模な特集上映が開催され、ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サントなどを驚嘆させると共に高い評価を受ける。
多くの困難を乗り越えて完成させた、ジョルジュ・シムノン原作の『倫敦から来た男』(07)は見事、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映された。2011年、タル・ベーラ自身が“最後の映画”と明言した『ニーチェの馬』を発表。ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)と国際批評家連盟賞をダブル受賞し、世界中で熱狂的に受け入れられた。
90年以降はベルリン・フィルム・アカデミーの客員教授を務め、2012年にサラエボに映画学校film.factoryを創設。2016年に閉鎖した後も、現在に至るまで世界各地でワークショップ、マスタークラスを行い、後輩の育成に熱心に取り組んでいる。フー・ボー(『象は静かに座っている』)や小田 香(『セノーテ』)などの映画監督が彼に師事しており、2021年カンヌ国際映画祭でA24が北米配給権をピックアップして話題となった『Lamb』のヴァルディマー・ヨハンソンもfilm.factoryの出身。タル・ベーラは同作のエグゼクティブ・プロデューサーも務めている。ブダペスト、プラハ、カイロ、ケララなどでもマスタークラスやワークショップを精力的に行っている。
インスタレーションや展示も積極的に手掛け、2017年にアムステルダムのEye Filmmuseumで“Till the End of the World”、2019年にはウィーンで“Missing People”を開催している。2003年エルサレム国際映画祭、2011年イスタンブール国際映画祭、エレヴァン国際映画祭、レイキャビク国際映画祭で栄誉賞、2023年12月にはヨーロピアン・フィルム・アワード栄誉賞など多数受賞している。
マスタークラスの記録監督:小田 香氏について
1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー/アーティスト。イメージと音を通して人間の記憶(声―私たちはどこから来て 、どこに向かっているのか―)を探究する。
2011年、ホリンズ大学教養学部映画コースを修了。卒業制作である『ノイズが言うには』(38分/2010年)が、なら国際映画祭学生部門nara-waveにて観客賞を受賞。東京国際LGBT映画祭をはじめ国内外の映画祭で上映される。
2013年、映画監督のタル・ベーラが陣頭指揮する若手映画作家育成プログラムであるfilm.factory (映画制作博士課程)に第1期生として参加し、拠点地であるサラエボで3年間暮らす。その間、『呼応』(19分/2014)、『フラッシュ』(25分/2015)などの短編他、film.factoryの作家陣と協働してオムニバス作品を多数制作。2014年にはポーラ美術振興財団在外研究員として助成を受け、2016年に同プログラムを修了し博士号取得。
ボスニアの炭鉱を主題とした第一長編作品『鉱 ARAGANE』(68分/2015) が山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門にて特別賞を受賞。リスボン国際ドキュメンタリー映画際、マル・デル・プラタ国際映画祭、台湾国際ドキュメンタリー映画祭などを巡り、2017年に国内劇場公開に至る。
サラエボでの映画制作の日々や、自身の映画制作の原点について綴ったエッセイ映画『あの優しさへ』(63分/2017)が完成し、ライプティヒ国際ドキュメンタリー&アニメーション映画祭ネクスト・マスターズ・コンペティション部門にてワールドプレミア上映。主たる舞台であるボスニア・ヘルツェゴビナやセルビアの映画祭でも上映される。
2019年最新作長編『セノーテ』が完成。山形国際ドキュメンタリー映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに招待され各国を巡回。メキシコ・FICUNAM映画祭、スペイン・ムルシア国際映画祭にて特別賞を受賞。
2020年、第1回大島渚賞を受賞。(ぴあフィルムフェスティバルが新設した「映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られる賞」)
過去作の特集と共に『セノーテ』国内劇場公開。映画配信サイトMUBIで独占配信。(日本とメキシコを除く)
2021年、『セノーテ』の成果により第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
長編映画制作と並行して短編映画や映像作品も制作しており、ほとんどの作品で撮影・サウンドデザイン・編集を自ら行っている。絵画の制作や展示にも取り組んでおり、近年では東根市まなびあテラス「小田香 光をうつしてー映画と絵画」(山形/2020)での個展開催や、3331アートフェア(東京/2019)に絵画作品で参加。市原湖畔美術館「メヒコの衝撃展」(千葉/2021)や、青森県立美術館と協働して行うアート・プロジェクト「美術館堆肥化計画」(青森/2021-2023)にも参加している。
(オフィシャル素材提供)