舞台を中心に活動している俳優・田中稔彦が初監督・脚本を手がけた『莉の対』(れいのつい)※英題『Rei』が、オランダの第53回ロッテルダム国際映画祭の授賞式(現地時間2月2日 18時)にて、タイガーコンペティション部門の最優秀作品賞(タイガー・アワード)を受賞した。
邦画が選ばれることが稀であるメインのタイガーコンペティション部門。無名でありながらも会期前に全3回の一般上映がすべて完売したため、大きく期待されていたことはうかがえる。
同賞は、2014年の「山守クリップ工場の辺り」(池田 暁監督)以来、10年振りに日本人での受賞で、単独では初の快挙となる。
タイガー・アワードの賞金は4万ユーロ(約640万円)。
審査員マルコ・ミュラーのコメントは「今年のタイガー賞は、自由でセオリーに捉われないやり方で制作することを選んだ新進気鋭の映画監督(初監督作)にタイガー賞を授与することを決定しました。彼の強みは俳優を中心とし、共に作品を作り上げる環境を築き上げたこと。又、ストーリーを観客に伝えるための細心の注意力。そしておそらく最も重要な点として、さまざまなロケーションの魅力が徐々に発揮されていく中、全体の構造の中で、本来は自然の力に飲まれるはずの演技に、自然な役割を果たさせている彼のセンスが挙げられます。人は常に外の世界の脅威に脅かされているという示唆で、作品はエンディングを迎えます。それでも、人は共に生きていくことを選ぶかもしれない」と述べた。
留学経験があり、TOEICスコア930の田中監督は流暢な英語で受賞コメントを披露。同席したキャスト陣も喜びを隠しきれず、監督のもとに駆け寄っては胴上げをし、日本式の祝福を観客たちは割れんばかりの拍手と笑顔で見守った。
田中稔彦監督 受賞コメント
ありがとうございます。
こうして今、素晴らしいキャストたちとここに立っていることが、ただただ信じられません。
日本にいるクルーと支えてくださった方々ともこの時間を共有できたらなと思っています。
全ては彼らのお陰で私は今、最高の“仲間”つまり、最高の船員達(クルー)と一緒にこの場にいることができています。本当に、本当にありがとうございます。そして、このトロフィーをアシスタントディレクターであり、僕の親友である彼に渡したいと思います。
※ そうして田中はアシスタントディレクターの池田彰夫にトロフィーを渡し、池田は一言「ありがとうございます!!」と締めた。
本作は、東京と北海道を舞台に出会うはずの無かった二人の男女の物語であり、とりまく周りの人たちもさまざまな問題を抱えていることを映し出し、人間の脆さや弱さを自然の美しさと対を成すように描いた190分のヒューマンドラマ。2024年春に国内上映予定。
ロッテルダム国際映画祭は2月4日(現地時間)まで開催。
田中稔彦(たなかとしひこ)監督プロフィール
1983年生まれ。大学卒業後、某都市銀行に就職。
その#コピーライト
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後退職し、俳優に転身。2022年に制作会社、株式会社No Saint.& Bloomを設立。『莉の対』は自身初の長編映画になる。
俳優としては舞台を中心に活躍。映像での代表作に『抱きしめたい -真実の物語-』(塩田明彦監督)、『子宮に沈める』(緒方貴臣監督)、『陽はまた昇る』(テレビ朝日)などがある。
ストーリー
自分の存在の希薄さを感じながら生きている光莉。ある日、ふとしたきっかけで1枚の写真に心惹かれた光莉は、その写真を撮った人物に自分のポートレイト写真を撮ってくれないかとメールで依頼する。光莉の元に返ってきた返信は「人物の写真は撮ったことがありません。あと。僕は、耳が聴こえません。なので、しゃべることもできません。うまくコミュニケーションが取れないと思います。それでもよければ……」風景写真家である真斗からのメッセージ。真斗は失聴者だった。
光莉と真斗、それぞれを取り巻く人間関係が少しずつ影響を与えあい、そして脆く崩れていく。自然の美しさと対比されるように描かれていく人間模様。
『莉』は単独ではほとんど意味を持たない。
他と結びつくことで初めて意味を持つ。
(英題:Rei、2023年、日本、上映時間:190分)
キャスト&スタッフ
監督:田中 稔彦
キャスト:鈴木タカラ、大山真絵子、森山祥伍、池田彰夫、勝又啓太、田野真悠、菅野はな、内田竜次、築山万有美/田中稔彦
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公式X:@reinotsui
公開表記
2024年春より国内上映予定
(オフィシャル素材提供)