父親の記憶がほとんどない兄弟と、その父親が残した異母妹が織りなす、ちょっと笑って、ほっこりする短編映画『ピッグダディ』、2月2日に東京のテアトル新宿にて公開記念舞台挨拶が行われた。自ら主演も務めた泉 光典監督、同じく主演のカトウシンスケ、そして脚本と演出の河西裕介が登壇し、映画を製作するに至ったキッカケの話や、撮影現場でのエピソードを交えたトークを繰り広げる晴れやかな舞台挨拶となった。
父親になる決心がつかず家出してきた兄、山本健一(泉 光典)、その兄をガレージで寝泊まりさせている弟、匠(カトウシンスケ)。兄弟の前に突如現れた、異母妹、音麗実(どれみ)。そんな即席三人兄弟が繰り広げるハートフル・ショート・ムービー。
司会を務めるのは登壇者とも仲の良い女優、木村梨恵子。彼女から紹介され盛大な拍手で迎えられた、泉 光典監督、カトウシンスケ、河西裕介。
「この作品は、舞台など一緒に行っている河西くんに脚本の話をして、カトウくんにも急なオファーでお願いするなど、そこから始まった作品を劇場で公開することができて本当に良かったと思います」という泉監督の挨拶に続き、「本当に小さなところから製作がはじまったこの作品が、まさかテアトル新宿さんで上映していただけるなんて、驚きでまだ夢から覚めていない状態です」とカトウが挨拶、そして「今回初めて映画に携わらせていただいて、とても光栄でしたし、皆様に鑑賞していただいて、興奮しております、ありがとうございます」との河西の挨拶で舞台挨拶がスタートした。
ここからは、上映後ということもありネタバレ気にせず、司会者の木村も交えてのフリートーク形式にて舞台挨拶は進行。
本作では監督と演出が存在することが話題になり、泉監督から「脚本を河西くんにお願いしたんですが、現場では自分はずっと役者として出ているため、すべてを確認することが難しいので、以前から舞台でも演出をしてもらって信頼している河西くんに演技のチェックなどをお願しました」とのコメントに、「現場で、“カット!”の声掛けも頼まれて、最初は恥ずかしかったが、最後のほうでは心地よくなりました。実はちょっと言ってみたかった」と河西が本音を語る。
撮影前に、二日ほどリハーサルとして本番に近い形で演技をして、河西が気づいたところをチェック、修正する作業をしたとのこと。そのため現場では各撮影、ほぼ1テイクで撮影できたことが、泉監督、河西から語られたあと、司会の木村からの「じゃあ、監督は何をするんでしょう?」とのツッコミ質問。
「まず最初に大きな声で“映画を撮りたい!”ということです」と泉監督の答えに会場から笑いが。続けて「キャストさん、スタッフさんへの連絡、それから劇中で使用された部屋も、以前、自分が住んでいた部屋で、撮影用に片付けなどもしました」とインディーズ映画製作の苦労を告白すると、劇中に登場したご飯も、すべて泉監督の手作りであったことが判明。ここで、「質問は、監督の仕事でしたよね?」とカトウが軌道修正。
「でも撮影がクランクアップしたあとは、ぼくはほとんどノータッチで編集から完成までは泉監督がおこなっていました」と河西から制作の裏側が語られた。
映画を製作するキッカケについての木村からの質問に、「映画はもともと好きですし、俳優は、一度は映画を撮ってみたいと思うのではないかと」とのコメントにカトウは「俳優を始める前は撮ってみたい思いはあったかもしれないが、いまは、難しそうに感じてしまう」との告白、「もし映画を撮るならば、今作の河西さんのように演出の方にいていただいたほうがいいかなと思う、芝居面を一緒に見てくれる人がいてくれたほうが、やりたいことができそうな気がします」と今後を期待させるコメントも。普段は演劇の演出をメインとする河西も「実は以前から映像とか映画とか撮ってみたほうがいいですよ、と言われてはいたが、映画はおしゃれ、みたいな思いがずっとあって、無理ですなんて断っていました。でも今回経験してみて、映画を撮ってみたくなりました」と映画制作への意欲を語った。
妹、音麗実(どれみ)役を演じた波多野伶奈については、河西から「今日のお客様は本当は波多野さんに会いたかったんだろうな」とのコメントのあと、「以前、波多野さんが出演していた河西くんの舞台を観劇して、そのあと彼女と共演する機会もあって。今回のキャストを河西くんと話していた時に、音麗実役は”波多野さんしかいないでしょ”と一発でふたりの意見が合ってオファーしました」と泉監督から波多野をキャスティングした理由が語られた。
波多野との共演が初めてだったカトウは「改めて波多野さんの演技が素敵でした、本当にすごく良かったと思います」と彼女の演技への感想を熱く語った。
タイトルの「ピッグダディ」に関して司会の木村から質問が。
「泉監督は意見が違っても、尊重しつつ話し合ってくれる優しい方なんですが、唯一、タイトルだけは、“何とかならない?”と変更を要望されたんです」と河西の口から暴露発言が、「そうなんです、完成後に映画祭などに出品する際に、どうかな、と考えてしまって」と泉監督が当時の心境を振り返ると、「実はこのタイトルが先にあって、何年も前から、やりたかったタイトルなんです。使っているネタ帳の最初のページに“ピッグダディ”と書いているんです。でも、最終的には泉監督も認めてくださって良かった」との更なる暴露に泉監督もカトウも驚いた表情を見せた。
最後に、「本日はありがとうございました。あと6日間上映がございますので、お知り合いの方々に映画を宣伝していただけますと嬉しいです」と河西の挨拶に続き、「35分の短い作品で、小規模な製作陣で作った映画が、テアトル新宿さんで上映されるのは本当にすごいこと。あと6日間ですが、ここから右肩あがりになるように、周りの方々に映画のことを伝えていただければ嬉しいです。本日はありがとうございました」とカトウがコメント、そして「無事に初日を迎えられて感無量です。監督として制作した作品を映画館で上映することが初めてでしたので、いろいろ大変でしたが、今までに感じたことがない想いなどもこれから感じられるかなと思います。本当に、本日は劇場に足をお運びいただきましてありがとうございました」との泉監督の挨拶で締めくくった。
ほのぼのとした木村の司会も相まって、泉監督、カトウシンスケ、河西裕介による公開記念舞台挨拶は、会場の観客含め終始アットホームな雰囲気の中で実施された。
登壇者:泉 光典(主演・監督)、カトウシンスケ(主演)、河西裕介(脚本・演出)
MC:木村梨恵子
公開表記
配給:ニチホランド
2月2日(金)よりテアトル新宿にて一週間限定レイトショー中
(オフィシャル素材提供)