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「第2回新潟国際アニメーション映画祭」【世界の潮流】ノラ・トゥーミー特別講演

 3月15日より、第2回新潟国際アニメーション映画祭が開幕した。昨年3月の第1回映画祭より、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、日本のみならず世界へも発信される映画祭。
 映画祭4日目となる3月18日(月)、【世界の潮流】にて長編コンペティション部門の審査員長ノラ・トゥーミー氏の特別講演が行われ、日本でも人気の高い自身のスタジオ・カートゥーン・サルーンについて、そして絵で語る=ビジュアルストーリーテリングをテーマに自身のクリエイティブについて語った。

【世界の潮流】「カートゥーン・サルーンとビジュアルストーリーテリング」

 講演:ノラ・トゥーミー(カートゥーン・サルーン/第2回新潟国際アニメーション映画祭長編コンペ審査員長)

 日本でも人気の高いカートゥーン・サルーンのノラ監督の生の声が聞けるとあって、映画ファンのみならずクリエイターも多くこの講演に駆けつけた。25年前、大学の友達と立ち上げたというカートゥーン・サルーン。絵を描くことが好きで、アニメーションが好きで、スタジオを作り、今や世界的なアニメーション・スタジオとして知られる。ノラ監督は創設当時の社内の様子や、一番最初に手がけた短編アニメーション、また初の長編作品となった『ブレンダンとケルズの秘密』などのスライドを交えながら、今世界の最前線のクリエイターとしての考えを語ってくれた。

 「最初は大量の紙に描いて、PCは1台をスタジオのみんなで共有していました。そこから次第にデジタル化されることで社外の人とも協力して作ることができるようになったんです」と創設当時を語る。

 大学では絵を描く勉強はしたけれどストーリー・テリングについては勉強しなかった、創設当時の1、2年でストーリー・テリングについて学んだというノラ氏。最初の短編「Fron Darkness 2002」はイヌイット族の民話をもとに作られた。恐怖に立ち向かうこと、またその恐怖は自分の中でどのように変化していくのかがテーマになっていると語り、「ストーリー・テリングには“声”=ビジョンが大事。私自身も怖がりですから、テーマが自分自身に近いことは重要だと思います。また、時間を使うことに対して自信を持つこと、『この間は必要なんだ』と自信を持つことは大事です。そしてお客さんの時間に対する尊敬。みんなが見る価値があるものを作ることが重要です」との言葉は、アニメーションのみならずクリエイティブに関わる人々には深く染み渡る言葉だろう。そうしたノラ監督の言葉は続き、「何よりもシナリオは大事です。世界一のアニメーターを使っても、シナリオがダメなら良い作品には決してなりません。コンセプト、人々が入り込みたい世界を作ること、同時にどのくらい予算がかかるのか、賢い工夫をしないといけない段階でもあります」。

 また、監督はスタッフとの関係も重要だと語り、「監督はスタッフに動いてもらうために仕えている身分なんだと思います。部門長、統括者、そのアシスタントや中心になっているアーティスト。彼らに仕えている。スタッフに仕えないと自分のビジョンが観客に伝わらなくなるんです」。
 そして、「妥協することは悪いことではありません。予算があろうとなかろうと、時間は限られているし知識も限られている。でもその中で何を諦めたくないのか、手放したくないのか。いつも自問自答しています。ある1点にとらわれて他がダメになったものもたくさん見てきました。何が重要なのかを知ることは非常に大事なことです」。

 カートゥーン・サルーン初の長編アニメーションとなった『ブレンダンとケルズの秘密』では、古くからある宗教から新しくキリスト教に移り変わる“間の時代”に興味を持っていたと語る。きっかけになったのはキリスト教の写本の1ページだった。
 「中東やアジアのモチーフに影響を受けているようだが、どうやって書かれたのか。調べていくうちに、たとえばアイルランドにはブリギッドという春の訪れを告げる豊穣の女神がいますが、新しいキリスト教にも聖ブリギッドがいるんですね。新しい宗教が古い宗教を取り込んで入れ替わっていく。その移り変わり、はざまにあるものは私たちにとってとても興味深かったんです」。
 また、多国籍での作品制作が主流となりつつある今、「自分たちだけでコントロールできなくなる時もあります。でもキャラクター・デザインだけは、デザインが強ければ何も言われないだろうと、こだわった部分です」と語った。
 また「生と死、光と闇のようにコントラストを用いています。主人公を中心にその両方を観客は見る。ファミリー層向けですが、暗く重いテーマも扱っています。私たちのストーリーには犠牲がつきものなんですね。クロムという古代の死を司る神様が出てきますが、生贄を要求するんです。でも冬から春へ変化をもたらす神様でもあると言ったふうに。子どもが見て感じ取れるよう取り組みました。心配していたんですが、お客さんと一緒に見た時に、8歳の女の子が『アシュリン(荒っぽくて、人形遊びなんてつまらないと言う女の子)は私に似てる』と言ってくれたんです。見ている人たちが、キャラクターに自分を投影しているのがよく分かりました」とエピソードを交えて語ってくれた。

 そして、ノラ監督が尊敬してやまないという絵本作家・トミ・ウンゲアーの言葉を教えてくれた。
 「恐怖に打ち勝つ方法を知るには、子どもたちは恐怖を感じる必要がある、と彼は言っています。私が思う大人の役割は、子どもたちにどうやって困難に立ち向かっていくかを教える必要がある。それは私たちの責任だと思います」。

■国際映画祭の舞台となる新潟市とは
 19世紀、海外への窓口となる世界港をもつ新潟は、江戸を凌ぐ国際的な商業都市でした。また新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーターを輩出し、2012年から10年間、「マンガとアニメを活用した街づくり構想」を実施、継続的なイベントとして「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」(来場者約5万人)、1996年から全国対象で「にいがたマンガ大賞」も実施。また、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や蔵書1万冊を誇るマンガ図書館「新潟市マンガの家」を運営、マンガ家志望者のための家賃補助施設「トキワ荘」、そしてマンガ雑誌編集部と結んだ無料「ON LINE添削」を実施するなど、日本有数の熱烈なアニメ・マンガ都市でもあります。そして──21世紀、本映画祭に集結したエネルギーを、グローバル・アニメーションの創造へのマグマとし、新潟は世界のアニメーションの首都を目指します。

■新潟アニメーション首都宣言
 新潟はアニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市です。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指すアジア最大規模の「新潟国際アニメーション映画祭」第2回の展開にぜひともご注目ください。

第2回新潟国際アニメーション映画祭

 英語表記:Niigata International Animation Film Festival
 主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
 企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
 会期:2024年3月15日(金)~20日(水)
 公式サイト:https://niaff.net(外部サイト)
 公式X(旧Twitter):@NIAFF_animation(外部サイト)

 公式Youtube:https://www.youtube.com/channel/UC81m7n8a8MgQGC-8MUXs7pA(外部サイト)

(オフィシャル素材提供)

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