3月15日より、第2回新潟国際アニメーション映画祭が開幕した。昨年3月の第1回映画祭より、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、日本のみならず世界へも発信される映画祭。
映画祭5日目となる3月19日(火)、【長編コンペティション】ノミネートの3作品の監督が記者会見に登場した。
【長編コンペティション】記者会見
登壇者:マルセロ・マラオン監督、ヴィーラパトラ・ジナナビン監督、フレッド・ギヨーム監督
日本の観客に作品を披露するのは初めてと語った3人。『深海からの奇妙な魚』はハンド・ドローイング、『マントラ・ウォーリアー』はCG的技法、また『オン・ザ・ブリッジ』はアニメーション・ドキュメンタリーと、さまざまな手法でアニメーション・クリエイティブの可能性を広げている。また、3人ともアニメーション業界では20年以上のキャリアを持つ。
『深海からの奇妙な魚』のマルセロ・マラオン監督は、「ブラジルではアニメは最近のもの。初めてのアニメーション作品は1917年公開と100年以上前になるものの、20年前はテレビ・シリーズも劇場用アニメーションも存在していなかった。ここ20年でやっとプロフェッショナルのアニメーション制作が行われるようになりました。ブラジルのほとんどのアニメ会社ではカットアウトというツールを使ってのアニメーション制作が行われていますが、私は古いアニメーターなので紙に鉛筆で描く手法でやっています。この作品は初めての長編作品ですが、仲のいい友達やパートナーと少人数での制作を選びました」とブラジルでのアニメーション制作の最前線について語った。
『マントラ・ウォーリアー』は「20年前からアニメ産業に携わり、この映画は自分たちのスタジオで初めて作り上げた映画。タイでは昨年公開されました。インドの叙事詩ラーマーヤナを別の表現で取り入れた作品。3DCGでもなく2Dでもない、“2.5D”と自分たちは呼んでいます。フルCGというとピクサーのアニメーションを思い浮かべる人も多いと思いますが、現実問題莫大な予算がかかる。『スパイダーマン:スパイダーバース』がトレンドの先を行っていたので、それに追随する動きがありました。フルCGを2Dっぽく見せるやり方がトレンドになり、2Dや手描きに戻ろうとする傾向が見られたことは自分たちのような小さなスタジオにとってはラッキーでした」と制作の現場を語る。
また、本映画祭でも取り上げられ、今、世界のアニメーションのトレンドでもあるアニメーション・ドキュメンタリーという手法を用いたのが『オン・ザ・ブリッジ』。フレッド・ギヨーム監督は「アニメーションに本当の人たちの声を重ねたものです。スイスはドキュメンタリー制作が盛ん。ドキュメンタリーを作る上で“声”は中心におかれます。カメラを携えていくのとマイクを持っていくのとでは大きな違いがあります。取材対象者に安心感を与え、守られているという実感を持たせる。無名であるという安心感があるそうです。生から死への変化を描こうと思ったのですが、取材した人々は皆、死に直面する人々でした。人生の死に至るまでの変化を描こうと思ったのですが、最終的には“死”について語りたいと思ったのです。アニメーションドキュメンタリーという手法は、なかなかアクセスしづらい題材を取り上げることを可能にするのだと思います」と語った。
『深海からの奇妙な魚』という変わったタイトルについて尋ねられたマラオン監督は「皆様にこれからとてもとても奇妙な映画を観るという覚悟を持って欲しかったのです」とユーモアを交えて答えながら「描きたかったのは3つ。1つは魚。魚が好きで、出てくる魚は実在する魚です。もう1つは私自身の人生や家族との記憶、そしてもう一つは女性がゴリラに変わってしまうような、現実ではあり得ないことを描きたいという3つの意図でした」と語った。
また、それぞれ影響を受けた作品を尋ねられると「私自身は『タンタン』」(マラオン監督)、「『王と鳥』というフランスの80年代の映画に非常に影響を受けています。宮﨑 駿監督や高畑 勲監督もこの映画から影響を受けたんだろうなと思うので、それを分かち合っていることを誇りに思います」(ギヨーム監督)、「『ドラゴンボール』や『ワンピース』はタイでも大人気で、私も影響を受けました」(ジナナビン監督)。
また、近年AIも台頭してきたが、「さまざまな手法がさまざまな可能性を広げる、それが大事なこと」(マラオン監督)、「アイデアは取られたくないけど(笑)、手法としては良いと思う。誰にでもできることはAIに任せて、クリエイティブは私たち、というような棲み分けが可能になる」(ギヨーム監督)、「ツールの台頭でアイデアにフォーカスすることができる。そこにはさまざま未来が広がっていると思います」(ジナナビン監督)と、これからのアニメーション・クリエイティブの可能性として捉えていることを話してくれた。
■国際映画祭の舞台となる新潟市とは
19世紀、海外への窓口となる世界港をもつ新潟は、江戸を凌ぐ国際的な商業都市でした。また新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーターを輩出し、2012年から10年間、「マンガとアニメを活用した街づくり構想」を実施、継続的なイベントとして「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」(来場者約5万人)、1996年から全国対象で「にいがたマンガ大賞」も実施。また、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や蔵書1万冊を誇るマンガ図書館「新潟市マンガの家」を運営、マンガ家志望者のための家賃補助施設「トキワ荘」、そしてマンガ雑誌編集部と結んだ無料「ON LINE添削」を実施するなど、日本有数の熱烈なアニメ・マンガ都市でもあります。そして──21世紀、本映画祭に集結したエネルギーを、グローバル・アニメーションの創造へのマグマとし、新潟は世界のアニメーションの首都を目指します。
■新潟アニメーション首都宣言
新潟はアニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市です。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指すアジア最大規模の「新潟国際アニメーション映画祭」第2回の展開にぜひともご注目ください。
第2回新潟国際アニメーション映画祭
英語表記:Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
会期:2024年3月15日(金)~20日(水)
公式サイト:https://niaff.net(外部サイト)
公式X(旧Twitter):@NIAFF_animation(外部サイト)
公式Youtube:https://www.youtube.com/channel/UC81m7n8a8MgQGC-8MUXs7pA(外部サイト)
(オフィシャル素材提供)