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『画家ボナール ピエールとマルト』「横浜フランス映画祭2024」舞台挨拶

©2023-Les Films du Kiosque-France 3 Cinéma-Umedia-Volapuk

 登壇者:ヴァンサン・マケーニュ、マルタン・プロヴォ監督、横山由季子(東京国立美術館研究員)

 第76回カンヌ国際映画祭 カンヌ・プルミエール正式出品、本国初登場フランス映画No.1の『画家ボナール ピエールとマルト』を、今秋よりシネスイッチ銀座ほかにて全国公開する。
 この度、「横浜フランス映画祭2024」にてジャパンプレミアが行われ、舞台挨拶にマルタン・プロヴォ監督と、ピエール・ボナールを演じたヴァンサン・マケーニュが登壇した。
 さらには、箱根ラリック美術館に所蔵されているピエール・ボナールの「LA RUE《通り》」も日本国内で50年ぶりに特別に披露された!

ヴァンサン・マケーニュ「アートを見る・アートを生きるということをこの映画で学んだ」

 日本では今秋にシネスイッチ銀座ほか全国での上映が決定している『画家ボナール ピエールとマルト』。今回「横浜フランス映画祭2024」にてプレミア上映が行われ、ひと足先に本作を鑑賞した観客からの大きな拍手に迎えられ、マルタン・プロヴォ監督とヴァンサン・マケーニュが登壇した。
 会場に詰めかけた観客に向け、監督は「このような機会をもてて、幸せに感じています。ボナールは“ジャポナール”と呼ばれるほど日本の美術に影響を受けているので、この作品が日本で上映されることはとても重要なこと」、マケーニュは「ここへ登壇できて幸せですし、感動しています。日本、そして日本映画が大好きなので、映画を通して日本という国を知っています」と挨拶。

 舞台上にはサプライズで、なんと箱根ラリック美術館が所蔵するボナール作「LA RUE《通り》」が。この上映を記念して、なんと日本国内では50年ぶりの特別披露となった。「LA RUE《通り》」はボナールが画家として生きることを決意した22歳、1889年に描かれた作品。1970年代前半に箱根ラリック美術館オーナーが入手したもので、それ以来公開をされていなかった貴重な絵画だ。
 今回、絵画の解説として東京国立近代美術館研究員の横山由季子氏も登壇し、「20年前にパリの美術館でボナールの絵画に触れる機会があって、それ以降研究してきました。なので今日、ボナールがマルトとの暮らしの延長線上で絵を描いていたということを『画家ボナール ピエールとマルト』を鑑賞して、より実感することができました」と映画の感想を述べた上で、「LA RUE《通り》」に見られるボナールの特徴として「平面的かつ複雑に色を重ねることで、モザイクのような効果が生まれています。そして右下に少年がいるのが見どころです。画面の縁に人物を描く手法はその後の作品でも見られますし、その顔がしばしばマルトだったりしますが、初期からそのような描き方をしていたことに驚きました。しばらく作品を眺めていると気がつくような、すぐには分からないような形で人物を描きこんでいるんです」と2つの見どころを挙げました。

 「LA RUE《通り》」を見て監督は、「ボナールが、まだマルトと出会う前の作品ですね。マルトと出会ったことで『ベッドでまどろむ女』のような官能的な作品をつくっていく。その後の変化を一層感じられますね」とコメントし、マケーニュも「まるでボナールがここにやってきたような気持ち!」と率直な感動を語った。

ヴァンサン・マケーニュ、監督からの命じられた役作りのためのミッションとは……?
いま振り返る、セシル・ドゥ・フランスとの読み合わせ――監督と追求し続けた画家ボナールの“精神”

 観客とのQ&Aでは、まず、「マルトを演じたセシル・ドゥ・フランスとの演技の掛け合い」について質問が上がった。マケーニュは「セシル・ドゥ・フランスとの演技は上手くいきました。撮影に入る前に、監督も交えて3人で読み合わせをしたとき、2人の関係性や、お互いに忠誠を尽くし、許し合いながら生きることを選択したこのカップルについて感動したのを覚えています」と当時を振り返る。
 続けて、「ボナールを演じる前の準備」について問われると、「ボナールの絵画を見たことはありましたが、画家としての彼を知りませんでした。絵画は人生のある瞬間を捉えたもの。画家がそこから何を言おうとしているのか……監督は常にそれを追求していました。なので私も、外から眺めるのではなく内側に入っていくような、美しさもおぞましさも強く感じていくことができる見方を、撮影の準備を進める中で教えてもらいました。アートを見る・アートを生きるということをこの映画で学んだと感じています」。

 「監督が作品に込めた想い」についての質問が飛び出すと、監督は「以前、(フランスの女流画家)セラフィーヌ・ルイの生涯を描いた『セラフィーヌの庭』という映画を作った時に、それを見たマルトの姪の娘から依頼があったんです。その時は断ってしまいましたが、後々ピエールとマルトが住んでいた家が僕の家の近くにあることを知ったり、彼の『昼食』という作品に興味を持ってからボナールの映画をカップルの映画として作りたいと思いました」とその経緯を明かした。

 「撮影にあたって、大切にされたこと」を聞かれ、マケーニュは「ボナールは毛が濃くなかったので、毛を剃るように言われたのと、痩せるようにとも言われました(笑)。それも作用して、セーヌ川で泳ぐシーンはなりきれましたし、非常に正確度を高めることを大切にしていました。そして、セットで撮影するのではなく実際の風景の中で演技できたことは大きかったです。彼の精神、彼の世界観に入り込むことができました」と答えた。
 マルタン・プロヴォ監督とヴァンサン・マケーニュとで追求し続けた画家ボナールの“精神”。彼が生きた世界に飛び込むことのできる本作の日本公開へ、一層期待が高まるイベントとなった。

公開表記

 配給:オンリー・ハーツ
 今秋、シネスイッチ銀座 他 全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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