イベント・舞台挨拶

『霧の淵』公開記念舞台挨拶

©2023“霧の淵”Nara International Film Festiva

 登壇者:三宅朱莉、三浦誠己、堀田眞三、水川あさみ、村瀬大智監督、河瀨直美(エグゼクティブ・プロデューサー)

 若手クリエイターの台頭・村瀬大智監督 長編商業映画デビュー作、映画初主演で期待の新人俳優 三宅朱莉と実力派俳優 水川あさみが共演した映画『霧の淵』の公開記念舞台挨拶が4月20日(土) TOHOシネマズ シャンテにて開催された。

 映画公開の翌日にTOHOシネマズ シャンテで行われた公開記念舞台挨拶には、主演を務めた新人俳優・三宅朱莉をはじめ、三浦誠己、堀田眞三、水川あさみ、村瀬大智監督、そしてエグゼクティブ・プロデューサーの河瀨直美が登壇し、作品の魅力を語り合った。
 
奈良出身の新人俳優・三宅朱莉「めちゃくちゃ緊張します」と初々しい挨拶と作品への想いを語る
水川あさみは映画にゆかりがある着物で登壇

 オーディションで抜擢された奈良出身の新人俳優・三宅は映画初主演。満員の観客が見つめるなか、舞台のセンターに登壇すると「映画を観に来てくださって本当にありがとうございます」と初々しい表情で挨拶。水川や三浦、堀田らが登壇するなか、センターに立つ三宅は「こんなレジェンドがいらっしゃるなか、真ん中にいるなんてヤバいです。めちゃくちゃ緊張します」と語りつつも、「この映画の舞台になっている川上村は、すごく過疎が進んでしまっている村なのですが、映画の中に映っているように、すごくキレイで魅力がたくさんある場所なので、少しでも映画を通して美しさが伝わってもらえればいいなと思います」としっかり作品をアピールする。

 三宅演じるイヒカの父・良治役の三浦は「この撮影に協力してくださった川上村の皆さんにお礼を言いたいと思います」と感謝を述べると「お時間がありましたら、ぜひ川上村に訪れてください。魅力たっぷりの村です」と撮影中、充実した時間を過ごせたことを伝えると、母・咲を演じた水川は「2022年の春にこの映画は撮影されたのですが、この映画の舞台になっている朝日館の女将からいただいた着物を今日は着ているんです」と和装を披露し「私にとってはとても思い出深く忘れられない作品の公開が始まってとても嬉しいです」と感無量な表情を浮かべていた。

 キャスト陣が絶賛する奈良県川上村の風景。本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めた河瀨は「映画を客席の一番後ろで観ていたのですが、ワンカットワンカットが今なのか過去なのか、未来なのか分からないような、郷愁も伴ってホロっときていました」と改めて観客と一緒に劇場で作品を観た感想を述べる。
 さらに河瀨プロデューサーは「もしかしたら村がなくなってしまうかもしれないような集落に映画という陽が灯って、今日こんな大勢の皆さんに会いに来てもらえる作品に育ったんだなと思うと、今後もたくさんの人たちが集う映画祭でありたいなと改めて思いました」と、河瀨がエグゼクティブディレクターを務める、なら国際映画祭のプロジェクト「NARAtive(ナラティブ)」発の劇映画であることに感慨深い表情を浮かべていた。

水川あさみ、娘役の三宅朱莉を「とてもフレッシュ」「そこにいるだけで眩しかった」と絶賛

 撮影から2年が経過。ようやく作品が劇場公開された。三宅は「自分が(オーディションに)受かってこの映画を撮影し、こうして舞台に立っていることも、いまだに実感がないんです」と夢心地であることを明かすと、「本当に感慨深い気持ちでいっぱいです」と語った。

 そんな三宅に対して、登壇者は口々に「大きくなったね」と成長に触れると、三浦は「三宅さんはとても素敵な存在感で現場にいてくださいました」と佇まいを絶賛。水川も「とてもフレッシュでそこに立っているだけでイヒカという女の子を纏っていました。余計なことをしなくてもそこにいるだけで眩しかった。そういうフレッシュさはもう私たちにはできないこと。とても素晴らしいと思いながらお芝居をしていました」と撮影を振り返っていた。

 イヒカの祖父・シゲを演じた堀田も「俺にもあんな時代があったのかな」と三宅を羨ましそうに見つめると「これからどう育っていくんだろうと楽しみになります。こんな大作にオーディションで選ばれること自体、とてもいい運を持っている。運も実力のうちというか、運に勝る才能はない。これからもどんどん大きくなっていくと思うので、何かあったら役をください」と発言して会場を笑わせていた。

村瀬監督が明かす感動の撮影秘話と、子役選びの舞台裏「朱莉ちゃんが入ってきたとき、一人だけ黒目が真っ黒で、そのとき『この子で撮るんだろうな』思ったんです」

 「NARAtive(ナラティブ)」映画製作プロジェクトに選出された村瀬監督。河瀨プロデューサーは、これまでの歴史のなかで初めて学生部門から選出された監督であることを明かすと「コロナで海外の監督たちが参加していなかった時代。村瀬くんで行こうと制作体制を整えたとき、村瀬くんは2年ぐらい川上村に赴くなかで、地元の人たちからも信頼を得ていった。そんな寄り添い方も、作品のなかに出ていると思います」と村瀬監督の現場に根づいた撮影が作品に深みを与えていることを強調していた。

 丁寧な作りで映画を紡いでいった村瀬監督。三宅の起用理由について「(三宅演じる)イヒカが映画の中で小学6年生から中学1年生までのお話なのですが、僕はちょうどその時、地元の小学校で働いていたんです」と述べると「毎日小学校に行きながらシナリオを書いていたのですが、リアルに子どもたちと接するなかで、みんな子どもたちが何かムスっとしていて。その怒りの原因が自分のなかで分からない中、いろいろな人をオーディションさせていただいたのですが、(三宅)朱莉ちゃんが入ってきたとき、一人だけ黒目が真っ黒で、そのとき『この子で撮るんだろうな』思ったんです」と三宅がイヒカ役に適任だと感覚的に思ったという。

 また本作は、第72回サン・セバスチャン国際映画祭の新人監督部門に最年少で選出され、第28回釜山国際映画祭、ブルガリア最大規模の映画祭・第28回ソフィア国際映画祭などにも出品、大きな反響を呼んでいる。
 河瀨プロデューサーは、水川と村瀬監督と共に釜山国際映画祭に行ったときのことに触れ「会場にいる若いクリエイターたちやお客さんたちの熱気に感化された」と語ると、水川も「舞台挨拶や質疑応答をしていて本当に泣きそうになった」と回顧。共に「日本映画、頑張らなきゃいけないね」と強い思いに駆られたという。

 最後に河瀨プロデューサーは「なら国際映画祭という地方都市で行われる映画祭。山村、深い深い山の中にもこんなに豊かな人々が暮らしていて、それを世界の監督たちが映画にしてくれるというプロジェクトを今後も続けていきたいと思っていますし、日本にはもっとたくさん魅力的な場所があり、人の営みがあるということ知っていただくことで、次の世代の人たちにバトンを渡していけるのかなと思っています」と、映画メディアの魅力について語った。

公開表記

 配給:ナカチカピクチャーズ
 絶賛全国順次公開中

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