インタビュー

『渇愛の果て、』山岡竜弘 オフィシャル・インタビュー&演出家&映画監督らの推薦コメント解禁!

© 野生児童

 映画『渇愛の果て、』は、「家族・人間愛」をテーマにし、あて書きベースの脚本で舞台の公演を行なってきた「野生児童」主宰の有田あんが、友人の出生前診断の経験をきっかけに、助産師、産婦人科医、出生前診断を受けた方・受けなかった方、障がい児を持つ家族に取材をし、実話を基に制作した、群像劇。シリアスな内容ながら、大阪出身の有田特有の軽快な会話劇を活かした作品で、有田が監督・脚本・主演を務め、長編映画監督デビュー作となった。

 助産師・看護師・障がい児の母との出会い、家族・友人の支えにより、山元家が少しずつ我が子と向き合う様子を繊細に描きつつ、子どもに対する様々な立場の人の考えを描く。

 この度、5月18日(土)より新宿K’s cinema、6月1日(土)より大阪・シアターセブンで公開されるのを前に、妻の妊娠・出産に向き合う良樹役の山岡竜弘のオフィシャル・インタビューが解禁となった。

山元良樹役:山岡竜弘(Tatsuhiro Yamaoka)プロフィール

 1982年10月7日生まれ。東京都出身。
 2018年に日中合作映画『カップケーキ』 に主演、海外映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞するなど演技力を評価された。2021年には『エッシャー通りの赤いポスト』で物語の中心となる小林正役に抜擢され注目を集める。その後、ドラマ「だが、情熱はある」、朝ドラ「らんまん」など話題作出演が続く。

『渇愛の果て、』ヘの出演の経緯を教えて下さい。

 監督・主演の有田あんさんとは以前『エッシャー通りの赤いポスト』で共演したのですが、その時に俳優として信頼できる人だなと思っていました。その後も何度か交流があり、2020年、コロナの時期に今回のオファーをいただきました。有田さんのこの作品への熱い想いを聞き、「少しでも僕にできることがあれば」と思いオファーをお受けすることに決めました。

脚本を読んだ時、どう思いましたか?

 ともすれば教育的なものになってしまいかねない内容だと思ったんですが、そこを有田さんの笑いのセンスや、巧みな表現方法によって、たくさんの方に伝わる作品になると思いました。資料やドキュメンタリー番組にしか伝えられないものもあると思いますが、映画にすることでまた違った届き方、刺さり方があると感じました。

確かに、登場人物一人ひとりに物語がある、見応えのある人間ドラマになっていますね。

 そうですね。夫婦、家族、助産師、医師、それぞれの立場から、物語がしっかり誠実に描かれているところが、この作品の好きなところです。

演じた、山元良樹役についてはどう思いましたか?

 良樹の存在は、人との関係において教訓となるようなことを示していると思いました。私自身良樹からたくさんのことを教えてもらいました。彼は結婚、出産と、未知の領域に対して自分なりに想像を巡らし、最善を尽くそうと懸命に立ち回ります。その懸命な姿は「いい旦那さん」に映る半面、目の前のことに必死で、視野が狭くなり、時にすれ違いや勘違いを生んでしまう。思いやりの行動が少しズレてしまうことで彼自身が苦しむこともある。そんな、一元的には形容しきれない人間らしい側面もまた魅力的だと思いました。

監督の有田さんは、主人公・山元眞希役でしたが、ご一緒していかがでしたか?

 監督としてモニターチェックをした後、そのまま眞希の立ち位置に来て撮影に挑む。どうやって演者と監督のスイッチを切り替えているの?と最初は驚きました。しかし、撮影が進むと、この作品を届けたいという想いが役として全身から放たれているのを感じ、今思えばそれが一番の演出だったなと思います。そのエネルギー量に自分も感化されて引き出されるお芝居もありました。有田さんとご一緒できて、役者として成長できたし、良樹としてもできる表現の幅が広がったと思います。

有田さんが俳優さんだからこその演出などはありましたか?

 はい。俳優さんだからこそ、芝居の中に小さな嘘が混ざることを嫌がっていたと思います。台本で言いづらいところなど、「山岡さんだったらどう言いますか?」とか、「山岡さんならこういう時どうしますか?」と丁寧に聞いて下さり、あて書きでどんどん脚本を書き変えてくれました。物語ではなく、自分たちに起きていることとして捉えようという作品作りは、俳優をやっている有田さんだからできた演出だったのかなと思います。

撮影前にどのような準備をしたのでしょうか?

 有田さんの当時住んでいた家が撮影に使われたのですが、撮影前に実際にその家でシーン稽古をさせてもらえたことで、夫婦としての生活の想像ができ、その積み上げが良樹にとって大きな準備となりました。また、専門知識や専門用語の登場する物語なので、撮影前に勉強しようと思いました。しかし途中で「いや、違う。良樹の目線が観客の目線に近くなるはずなので、事前に知識を持たないほうがいい」と思い直し、準備をしないことを選択しました。怖い選択だったのですが、「知らない」という目線でどれだけその場で感じられるかを大切にしました。誰にでも起こり得る、特別なことではないという設定を意識し続けました。

松本 亮さんが演じた石井 竜の存在が、男性側の苦悩をより伝わりやすくしていたように思いますが、竜とのシーンはいかがでしたか?

 松本 亮さんはとてつもない安心感を与えて下さる俳優さんです。特に冒頭の宅飲みのシーンは、Zoomでリハーサルをやっていたのもありますが、松本さんの器の大きさや、安心感があったからこそ、僕も自然なお芝居ができたんだと思います。

演じて難しかったシーンはどこですか?

 全シーン難しかったです(笑)。でも、一番はポスターにも使われている、眞希と子どもの延命治療について話し合うシーンですかね。障がいを持つお子様の親御さんからお話をお伺いした直後に撮影したのがこの場面でした。改めて、このシーンの重要性や繊細さを考えながら慎重に撮影に臨みました。スタッフ・演者が一体となり、多くを語らずそっと撮影は始まりました。照明の明かりも相まって、空気の揺れすらも感じ取れるような、神秘的な時間でした。

昨年末結婚されたとのことですが、良樹を演じて夫婦生活に活かされたことはありますか?

 この撮影を経て、妻と「立ち止まって話し合う」ということを心がけるようになったかもしれません。以前は、出産の話などタブーとまではいかないまでも、話していいのか、という躊躇もありました。しかし今は出産に限らず「どう思う?」とその都度互いの立場を尊重することを心がけながらしっかり時間をかけて、何回でも話せるようになったと思います。

完成した作品をご覧になって、いかがでしたか?

 みんなで渡し合うバトンによって大きく伝わるメッセージがある作品だと手ごたえを感じました。またどこを観るかによって、感じることが変わる豊かさを持った作品だとも思いました。

読者にメッセージをお願いします。

 登場人物たちが、それぞれの立場で自分にも相手にも誠実に向き合おうとし続ける物語です。お客様にもぜひ、スクリーン越しに彼ら一人ひとりと対峙していただきながらこの作品を楽しんでいただければと思います。ぜひ、劇場でご覧ください。

 また、澤田育子、萩田頌豊与、映画監督の市井昌秀、戸田彬弘、木村聡志の推薦コメントが到着した。

コメント

澤田育子(演出家・脚本家・俳優)
 監督・脚本・プロデュース・主演。全てを担う有田あん氏に、敬服。その激しくも優しいエネルギー&リビドーは、時に強く時に弱く、それでも生きて生きて、とにかく生きることでの境界線なき世界、世界平和を願う確かな眼差しに思えた。

萩田頌豊与(東京にこにこちゃん主宰・脚本家)
 主演の有田あんさんをはじめ、個性的で印象的な俳優陣。顔の上で行われる戦争は、見る人を飽きさせない。映像じゃないと伝わらないこの作品の魅力がある。
 僕には映像を作る知識はまるでない。まずカメラの起動ボタンの場所も分からないし、カメラがどこに売ってるかも分からない。それでもこの映像作品がいかに優れているかということは分かる。
 起こるなと願い続けても人生を歩んでいる以上、つらく苦しい出来事は起きてしまう。でもその悲しみや苦しみを、ただの悲しみ苦しみでは終わらせない、有田さんによる魅力に富んだシーンの数々。色彩感覚の豊かさによって、観終わった後も鮮やかに残る「騒がしい友人たち」が今もなお画面の向こうに居るようです。

市井昌秀(映画監督・脚本家)
 ついデリケートな題材に目が行きがちだが、友達、夫婦、家族の心情や距離感を丁寧に描いていることに有田あん監督の誠実さが見える。また、軽妙な会話と時折差し込まれるミュージカルで観る者の心を掴んで離さない工夫も。しかし、私が何よりも圧倒されたのは「これ撮らな前に進まれへん!」という、監督の強い執念を感じたことだ。

戸田彬弘(映画監督)
 誰もが直面する可能性。誰もが一度は考えたこと。
 観ていて、どん底に落ちた。自分ならどうするか。
 容易に答えは見つからない。でも、家族がいれば、生きることは、十分だ。
 観終わった今、そう思う。

木村聡志(映画監督)
 本編が終わりエンドロールが流れたあたりで、この映画の魅力をロジカルで多くの言葉を持って説明する必要なんて全くないことにはたと気づく。『渇愛の果て』でも『渇愛の果て。』でもなく『渇愛の果て、』であることにこの映画の魅力の全てが詰まっている。
 映画を作るということを一つの出産だということに置き換えたとしたら、実に偉大な処女作をこの世に生み出した有田さんの第二子、第三子が今から待ち遠しくて仕方がないし、なによりも『渇愛の果て、』がこれから多くの出会いを通じてより大きく成長した姿でまた会えることをこの映画の一人のファンとしてとても楽しみにしています。

公開表記

 配給:野生児童
 5月18日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました