登壇者:原 廣利(監督)&佐藤 匡(カメラマン)
5月15日(水)、日本大学芸術学部にて、本作のティーチイン付き特別試写会が実施! 原 廣利監督とカメラマンの佐藤 匡が登壇し、貴重なトークを展開した。
日本大学芸術学部で行われた本作のティーチイン付きの特別試写会。授業は齊藤裕人教授による「映画鑑賞批評Ⅰ」という講義の一環で実施され、授業には同大学の卒業生である原 廣利監督とカメラマンの佐藤 匡が登壇した。
まずは上映前に齊藤教授から「あぶない刑事」の“生みの親”でもある黒澤 満についての話や、「あぶない刑事」や日本の刑事・警察ドラマの遍歴についても簡単に解説が行われた。授業を受け学生の中には、本日行われる最新作の上映とティーチインに備え、初めて「あぶない刑事」を観たという熱心な学生の姿も。
本編の上映後に行われたティーチインでは、原監督と佐藤が在学生からの質問に応えた。一人目の学生からは、監督に対し「『あぶない刑事』は30年以上続いている歴史ある作品だからこそ責任も大きかったと思いますが、最新作を制作するにあたり意識したことは?」といった質問が。監督は自身とあぶ刑事の関係について、「僕の父(原 隆仁氏)がドラマ・シリーズの監督を務めていたこともあって、その関係で多少観たことがあった程度」と説明をしながら、「“新しい『あぶ刑事』を見せてほしい”とオファーを受けたので、もちろん今までの『あぶ刑事』ならではのお約束とか、舘さん恭兵さんお二人へのリスペクトは残しつつ、僕らだからこそできることをカメラマンの佐藤と考えて作り上げて行きました」と明かしていた。
一方、カメラマンを務めた佐藤に寄せられたのは、「ダイナミックで迫力ある映像が魅力的でしたが、撮影する際に意識したことは?」という質問。「“令和の新しい『あぶ刑事』を作ってほしい”という製作陣の意向もあったので、今までの『あぶ刑事』ではやっていないシネスコで撮ってみようとか、車を沈めてみようとか、新しいアイデアをどんどん加えながら進めていきました」と振り返る佐藤。さらにこれまで錚々たるスタッフが参加してきた『あぶない刑事』シリーズに携わるにあたり、肩に力が入りすぎてしまったことで、「当初は真面目になりすぎてしまっていたんですよね。この作品の先にはコメディがあるはずなのに、カッコ良さを追いかけすぎなんじゃないかと」と振り返る佐藤。そういった自身の実体験を交えながらも、まずは「真面目になりすぎずに一歩引いて考えてみたり、新しいことにトライしてみることも大事」と学生に語りかけていた。
続いて飛び出したのは、「本作の中で撮影が難しかったシーンは?」という質問。まず監督が挙げたのは、タカ&ユージらが激しい銃撃戦を繰り広げるカプリアイランドでのシーン。カプリアイランドの撮影は栃木にある体育館を活用し、中にセットを立てて撮影を行っていたという。「僕らもアクションの撮影に関してはまだまだ知らないことも多くて。さらに舘さんと柴田さんお二人の意見が役を動かすことも多かったので、僕らがやりたいことと、俳優部がやりたいことをすり合わせていく駆け引きや、ディスカッションは大変でしたね。だからこそ、自分としては良いシーンになったなと感じています」。
対して佐藤は車を海に落とすシーンを挙げる。「実はあのシーンの撮影の時、(車を)海に落とす前に天気が曇ってしまって。流石に晴れた時に撮りたいとなんとか粘っていたんですが、スタントの人はずっと緊張しながらスタンバイされているので、このまま緊張状態が続くと失敗する可能性もあるなと思い、休憩を入れたり……」と当時の状況を説明する佐藤。そのような予期せぬ事態に直面する場面もあったというが、「一回しか撮影ができないので僕も本当に緊張していたのですが、なんとか良い画を撮ることができて。現場からは自然と拍手も湧き起こっていましたね。頑張って撮影した甲斐があったなと思います」と笑顔を見せていた。
さらに質問はキャストに関するものも。「出演者の方々とのコミュニケーションで印象的だったことは?」という質問に、監督は柴田恭兵との思い出を振り返る。「撮影が始まった三日目くらいの時に、恭兵さんから“現場や芝居の空気を大切にしながら撮ってほしい”というお話をしていただいたことがあって。それまで何度も同じお芝居を撮らせてもらうこともあったのですが、佐藤と“お芝居を優先にしていこう”という話をして、俳優さんたちのスタイルに合わせながら撮影のスタイルも考えていきました」。
そう語る監督の言葉に佐藤も頷きながら、「そういうコミュニケーションをとってもらえた真意をまず考えることが大事だなと。自分たちの意見を突き通すのではなく、“この組なりの良い形”を模索しながら進めていきましたね。結果的にも良い方向に誘ってもらえた気がします」と語っていた。
さらに「真面目になりすぎないように新しいことに挑戦していたという話がありましたが、撮影途中から完成に至るまでどのようなところが変化していきましたか?」という質問が。
本作のクランクインはタカ&ユージが横浜に帰ってきた冒頭のシーンの撮影から始まったそうで、撮影当初は「ものすごく真面目に考えてしまってガチガチに緊張していた」という監督。「いざ現場に入ってお二人の姿を見ているだけで、“タカ&ユージだ!”と。カメラを構えたら、これで『あぶ刑事』になるなと感じた時に肩の力も抜けて、舘さんや恭兵さんからも“こうしたいんだよね”と次第に意見をいただけるようにもなって……」と当時の様子を振り返りながら、「撮影中もどんどん変わって行きましたが、クランクアップ後、編集している時にも遊びを取り入れるようにしました。編集マンが繋いだものを見て、僕が“もう少しこうしたい”というのを伝えて、最初のほうから組み立てを少し崩していくような特殊なやり方で進めて行きました」と明かす。
編集の際に監督は佐藤に対しても意見を聞いていたそうで、佐藤も「編集の時に僕も聞かれましたね。“これ面白い?”って。そういうのも良いと思います。普通の現場だとできないようなコミュニケーションを取り入れられると良いですよね。そういう意味では、仲間はたくさんいると良いと思います」と実体験を交えながら学生たちに言葉を送っていた。
映像業界の第一線で活躍する両者の言葉に、学生たちは目を輝かせながら耳を傾ける中、最後には両者から学生たちに向けてメッセージが。「今はたくさん遊んでいろいろな経験をすれば、それが画で表現できるようになると思います。僕もずっと監督とそうやってきて、今があります。もっと面白い作品ができるように頑張るので、みんなも頑張ってください」(佐藤)、「今日は『あぶない刑事』を同級生と一緒に作ることができたというので、みんなの刺激になればいいなという想いで今回このような場を設けさせていただきました。今だからこそ経験できることが絶対あると思います。近くにいる仲間を大切にしているとこういうことができるよ、というのが僕が今日伝えたかったことです。周りのいる人たちを大切にしながら、学校生活を楽しんでもらえたら」(監督)とメッセージが送られ、授業は締めくくられた。
また、授業終了後には、授業に参加した学生に向け本作に関するアンケートを実施。本作に対して「タカとユージがカッコ良すぎました」(男性・18歳)、「タカとユージのアクションがすごくカッコよかった!!」(女性・19歳)とタカとユージの魅力に惹かれたという声や、「とても過去作を見たくなる作品でした。過去作を見ていなくても十分に面白かったし、楽しめました」(女性・18歳)、「『あぶない刑事』シリーズは今まで見たことがなかったが、事前知識がなくてもコメディ・シーンやアクション・シーンなどとても楽しめた」(男性・18歳)と“「あぶ刑事」ビギナー”でも楽しめたという声が多数寄せられていた。
さらに印象的だったシーンとして「煙の中からバイクに乗って出てくる舘ひろしさんがあまりにカッコよかったです」(女性・18歳)や、「ラストシーンのタカ&ユージの表情が一番心に残りました。なんとも言えない感情になって、グッときました」(女性・18歳)と言ったシーンを挙げる学生も。このアンケート結果からも、本作が年齢に関係なく、さらに過去シリーズを観たことがなくとも楽しめる作品であることを示していた。
公開表記
配給:東映
2024年5月24日(金)より全国公開
(オフィシャル素材提供)