登壇者:森 優作(土居圭吾役)、𠮷田恵輔監督
2022年の出産後、1年9ヵ月ぶりの芝居に臨んだ石原さとみが主演を務め、 『空白』(21)、『愛しのアイリーン』(18)、『ヒメアノ〜ル』(16)の𠮷田恵輔がオリジナル脚本でメガホンをとった映画『ミッシング』が全国公開中!
鑑賞後の熱いコメントに後押しされる形で、平日の動員が週末の数字を上回る映画館が続出するという異例の活況に沸く中、劇場公開から1週間目となる5月23日(木)に、監督・脚本を務めた𠮷田恵輔監督と主人公・森下沙織里(石原さとみ)の弟、土居圭吾役を演じた森 優作が登場する“心揺れる”ティーチイン付き上映会が行われた。本作を鑑賞した観客から、“弟役の森 優作に全部持っていかれた!“、”本年度の映画賞では助演男優賞確実“、“圭吾の不器用さが痛いほど伝わる”と絶賛のコメントが続き、話題の人となっている森 優作と人間描写の鬼、𠮷田恵輔監督の話を聞きに、平日木曜日17時上映という社会人には参加しづらい時間の上映にもかかわらず、ほぼ満席となる100名近い観客が集まりティーチインが行われました。公開後の今だから話せる裏話や撮影エピソードが飛び交う特別なイベントとなった。
◆公開後、𠮷田はエゴサーチ追いきれず、森は旧友からのメッセージで本作の話題性を実感!
感動の余韻に浸る観客の前に、登壇した𠮷田恵輔監督と森 優作は、まずは「ご自身の周囲の人からは、どんな反応がありましたか?」という司会者からの質問に対して、「観た人の声を知りたいので毎作品、エゴサーチをしているが、今回は多すぎて全て見切れない! これまでの作品とは比にならないくらい多すぎて嬉しいけれど、一日中(携帯の画面を)見てしまうので老眼も加わり、具合が悪くなっている(笑)」と吉田監督。「本作での一日の動員が、過去作品のトータルの動員くらい来てくれたりするので、とんでもないことが起きているなと思って嬉しいです」と笑顔で語った。
SNSで「弟役の森 優作、今回初めて名前を知りました」「動の石原に対して静の中村倫也、森 優作が凄い」「最も最優秀助演男優賞に近い!」とその注目度が急上昇中の森は、「役者の友達とかはすごくたくさん連絡をもらいます!」とその反響の大きさを実感。そして、イベント前には、ずっと連絡を取っていなかった中学の同級生から連絡があったという。「すごく熱く『ミッシング出てるね! ニュースとか見てるよ!』って超長文のメールが来ました。『頑張ってね!』と書いてあったけど、実はまだ『ミッシング』観てなかった……」とまさかのオチを披露しつつ、本作が世の中で話題になっていることを実感していることを語った。
そんな二人に直接映画の感想を伝え、質問できるティーチインイベントする貴重な機会とあって、観客席からは続々と質問の手があがる。
◆会場からの質問 ①「沙織里(石原さとみ)から殴られる場面はものすごく痛かったのでは?」
まずあがったのは圭吾の姉・沙織里(石原さとみ)とのクライマックスの車中でのシーンについての質問。このシーンは、沙織里と圭吾が本音を打ち明ける重要な場面。「車中のシーンがとても印象的でした。殴られているのもすごく痛かったのかなと思うんですけれど、どういったところを意識していたのでしょうか?」という問いに森はいきなり「めちゃくちゃ痛かったです(笑)」と冗談交じりで答えつつ、「でも、それは本気なので僕も石原さんもお互い本気だったし、台本を読んだ時からすごくエネルギーがいるシーンだなと思っていました。実際は何回もテイクを重ねました」と撮影を振り返ると、𠮷田も「20回くらい撮ったよね」と多くのテイクを要したことを明かす。「森君はそのシーンの前までは優等生でずっとポンポンポンって進んでいたんだけど、そのシーンでは(NGの沼に)ハマっちゃったんだよね」と回顧。すると森は「何度もやっているうちに、新鮮味が全く無くなっていって。自分の心を柔らかくしないといけない!と思って一回車の外に出て体を動かしたんですよ。そこで監督のほうをパッと見たらなんと監督はゲームしてたんですよ!」と大事なシーンの撮影中にまさかのゲームをしていたことを暴露。「そこで監督に『ハグしてください!』とハグしてもらいに行ったんです」と驚きの行動を告白。𠮷田はその時の森の様子を「濡れた犬みたいで抱きしめなくちゃ!と思った」と。車に戻った森は「姉ちゃんだからいいだろうと思って、石原さんにも『ハグしてください』とお願いしてハグしてもらいました。すごくエネルギーもらい、そのまま撮影を乗り切りました」と名シーン誕生の裏側を明かした。
◆会場からの質問②「姉・沙織里と、失踪した姉の娘と最後一緒にいた弟・圭吾の関係性について」
続いて、早くも3回目の鑑賞だったという観客から、「姉弟という沙織里と圭吾の関係性が一番容赦なく本音をぶつけ合っている。この作品の中で一番濃いんじゃないかと思いました。森さんはどういった感じで演じられたのでしょうか?」という質問が。森は、まず圭吾という役柄の印象について「普通の人なんだけれど、人と人との間(ま)であったりタイミングだったり、全部ちょっとずつずれている人だなと思った。そういう“生きづらさ”みたいなのは、自分の小さい時が本当にそうだったんです。全く同じではないですが、そういうのを取っ掛かりにしました」と自身の経験と重ね合わせて演じたと語る。さらに「石原さんのエネルギーに引っ張ってもらった部分すごく大きいです。すっごいピュアなエネルギーを持った方で、役者として絡ませてもらった人たちの中では、今までにないタイプの女優さんだったので、すごく刺激的な撮影だったでした」と振り返った。
続けて𠮷田は、本作の物語はもともとミキサー車の男の話を書こうと思っていたと語り「鬱屈としているのは、こいつ(ミキサー車の男)はお姉ちゃんの子どもを預かって、目を離したときにいなくなっちゃって……という負い目を感じているんだ、と書いていたけれど、だんだんとお姉ちゃんのほうがキツイな、となってきて、主役はお前じゃないな、と」と脚本作りの過程を説明。さらに、自身も姉がいるという𠮷田は「俺も空気の読めない子だった。で、友達があまりいない、アッパーで、一人でしゃべって一人で走っているような子だったので。姉ちゃんに睨まれないようにしながら生きてきたので、自分の中の実体験がちょっと入ってたかな、と思う」と前置きしつつ、「家族の再生というか、家族が辛い目に合った時に、どういうふうに踏み出していくのか。血が繋がっている姉弟の再生みたいなものを描きたいな、というのが軸になってたましたね」と本作のもうひとつの「軸」についても語った。
◆会場からの質問③「豊(青木崇高)と圭吾が偶然会ったシーンでの”意地悪な間の長さ”について」
続いては、「沙織里の夫の豊(青木崇高)と圭吾が車の修理工場で沈黙しているシーンで、2人が黙っている“間の長さ”に監督の意地悪さを感じ、印象的でした。あの間の長さはどういう発想から生まれたのでしょうか? そして、森さんは、その気まずいシーンをどういう感情で演じられていらっしゃったのでしょうか?」との質問。まず“「間の長さ”について𠮷田は、「台本には“異常に長い間”と書いたんだけど、僕は、登場人物全員を“良い人”には描かないんです。俺もそういう性格のところがあるんですけど、いい人のフリをして相手へのストレスをぶつける、というか。一番の味方だよ、って言いながらもねちねちと過去のことを言ったりする。ここで『しゃべらないという選択』が、豊の意地悪さというか。良い人キャラなんだけど、人間誰しも持っているちょっとした悪意というか、彼の“小ささ”みたいなもの、人間のそういう部分があるからこそ優しくもできるということを描きたかった」と、“人間描写の鬼”と呼ばれる𠮷田ならではのキャラクター造形について語った。このシーンは、修理工場のスタッフに呼ばれるきっかけで豊が立ち上がる場面だが、𠮷田はそのきっかけとなる合図をなかなか出さず、45秒も青木と森の様子を見ていたという。「森君の横顔を見てたら、45秒の間にだんだん涙が溜まっていって。森君、黒目しか見えないのね。その姿が小動物みたいで……」とそのシーンの裏話も飛び出した。
質問者の中には、本作をすでに観て、「この映画を作った人なら何か生きるヒントを与えてくれるのでは」という切実な思いから、自分自身の辛い経験を吐露した質問も飛び出したが、劇中さながらの“救い”をもたらすように、𠮷田と森はひとつひとつの質問に真摯に回答。目を潤ませながら深く頷く人や、ノートにメモする熱心な観客の姿も見受けられた。
最後の挨拶で森は、「自分の家族であったり、友達だったり恋人だったり、これから出会う人であったり、もう会えないかもしれない人であったり、そういう人たちに対してほんの少しでも思いを持ってもらえたら、この映画の存在意義があるのかなと思います。SNSというのはすごくパワーを持っていて、今実際に口コミでたくさんの人たちに観てもらっていると聞いてすごく嬉しく思っています。でも自分は自分自身の心を大切にしているので、何よりも今日劇場に足を込んで観に来てくれたことに一番感謝しています。今日はありがとうございました」と挨拶。
𠮷田は「自分にとって大事な分岐点になる作品で、出ている役者皆さん、すごく頑張りました。石原さんも自分を変えてほしいという願いの下に、7年の月日を経て、やっと公開ができました。いつも映画というのは自分の子どもだと思っているので、全部に等しく大切に思っているんですけど、ものすごく苦しみの中から生まれた作品です。なので、自分の悲しみ、苦しみもここに乗っけて、そこで世界がちょっとでも優しくなるような願いを込めて作った大切な作品なので、誰か一人でも多くの人に観ていただけるように、一人でも多くの方に届いてほしいです」と、思いのたけを込めた力強い言葉で締めくくり、イベントは温かい拍手と笑顔に包まれ終了した。
公開表記
配給:ワーナー・ブラザース映画
全国257劇場にて、絶賛公開中
(オフィシャル素材提供)