「オーストリア映画週間2024 Our Very Eye－揺るぎなき視線」予告編解禁＆来日ゲストイベント決定！

　６月29日(土)～７月５日(金)の７日間、東京渋谷のシアター・イメージフォーラムにて「オーストリア映画週間2024―Our Very Eye 揺るぎなき視線」を開催することが決定した。オーストリア文化フォーラムの主催で開催される本映画週間は、現代オーストリア映画をメインに、世界的にも評価の高いオーストリア映画の魅力を紹介する特集上映である。開催概要、上映作品ライナップは以下の通り。またポスタービジュアルも完成した。

～Our Very Eye－揺るぎなき視線～
ヨーロッパで独自の地位を築き、今最も果敢でアヴァンギャルドな映画が次々と⽣まれるオーストリアから最新未公開作が集結！

　ヨーロッパの中央に位置するオーストリア。“芸術の都”ウィーンを⾸都に抱くこの国は、クラシック⾳楽や絵画などの伝統的芸術の地として知られるが、ミヒャエル・ハネケやウルリヒ・ザイドルに代表される、現代で最も果敢でアヴァンギャルドな映画作家や作品を脈々と⽣み出してきた歴史がある。彼らは⼈間の情けなさや醜悪な部分にも透徹した視線を向け、独⾃の世界を創造する。
　オーストリア映画週間2024 では、90年代以降の「オーストリア・ニューウェーブ」的状況の申し⼦とも⾔えるジェシカ・ハウスナー（『リトル・ジョー』『ルルドの泉で』）がミア・ワシコフスカを主演に据えて撮り上げたダーク・スリラー『クラブゼロ』や、ヴェロニカ・フランツ（『ロッジ⽩い惨劇』『グッドナイト・マミー』）とゼヴリン・フィアラの共同監督によるオーストリアン・ホラー『デビルズ・バス（仮題）』、ザイドル組の新⼈デュオによる『我来たり、我⾒たり、我勝利せり（仮題）』など、今の同国を代表する作家たちの最新作を上映。
　また世界中で⾼い評価を得るドキュメンタリー作家、ニコラウス・ゲイハルター（『⼈類遺産』『いのちの⾷べかた』）が世界中の⼤量ゴミ処理の現場を捉えた『無⽤物』や、ルート・ベッカーマンが移⺠の子どもたちが⼤部分を占める最前線の教育現場に３年間密着した『ウィーン10 区、ファヴォリーテン』という、上質なドキュメンタリーも上映。
　加えて要注⽬の若⼿作家ミレーナ・チェルノフスキーの作品『ベアトリックス』、そしてアヴァンギャルド映画の⽂脈からエドガー・ホーネットシュレーガー監督作『ミダースの蟻』など、全て⽇本初公開(!!)の７作品が集結！　上映作品の監督陣も来⽇し、上映時にトークショーやディスカッションも開催。（来⽇ゲスト、関連イベント等は後⽇発表）

上映作品

クラブゼロ Club Zero

　（110分／オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール／2023年）

“クラブゼロへようこそ”。ホラー？喜劇？ジェシカ・ハウスナーの人間社会に対する透徹した視線が際立つ、不安に満ちたサタイア。

　裕福なインターナショナル・スクールに栄養学のノヴァク先生が新任としてやってくる。“意識的に食べる”ことの大事さを、優秀だが無垢な生徒たちに教えこむ先生。大量消費主義がいかに地球と人間の体を破壊しているか。だからこそと“食べる量を少なくすること”を勧められた生徒たち。両親たちの心配をよそにその教えにのめり込んで行く……。
　ミヒャエル・ハネケに師事した筋金入りの真っ黒なユーモアで観るものを蹂躙するハウスナーの野心に満ちた作品。
　2023 年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品／2023年ヨーロッパ映画賞最優秀作曲賞受賞作品

　監督・脚本：ジェシカ・ハウスナー
　脚本：ジェラルディン・バジャール、
　撮影：マルティン・ゲシュラハト
　出演：ミア・ワシコウスカ他
　配給：クロックワークス＊2024年公開予定

デビルズ・バス（仮題）Devilʼs Bath

　（121分／オーストリア・ドイツ／2024年）

“私の狂った妄想が世界に毒を盛ったのです……。”声なきまま歴史に葬られてきた女たちの視線を通し、「暗黒の中世」の血塗られたタブーを限りなくダークに描くグロテスクなサイコ・ドラマ。

　1750年、オーストリア北部。処刑された女が、見せしめのために断崖に晒されている。それを哀れみの目で見つめる信心深いアグネス。新婚の彼女は夫との関係に悩んでいた。農村の重労働と周りからの視線に押し潰され、彼女は呪物に頼り、やがて現世から幽離していく。追い詰められた彼女に残された出口とは……？
　鬼才・ウルリヒ・ザイドルの脚本家でもあるヴェロニカ・フランツの最新作。
　2024年ベルリン国際映画祭銀熊賞（芸術貢献賞）受賞作

　監督：ヴェロニカ・フランツ＋ゼヴリン・フィアラ
　製作：ウルリヒ・ザイドル
　撮影：マルティン・ゲシュラハト
　編集：ミヒャエル・パルム
　音楽：Soap & Skin（アーニャ・プラシュグ）
　出演：アーニャ・プラシュグ、ダーヴィド・シャイド、マリア・ホーフステッター
　配給：クロックワークス＊2025年公開予定

我来たり、我⾒たり、我勝利せり（仮題） Veni Vidi Vici

　（86分／オーストリア／2024年）

“破壊こそクリエイティブ！”資本主義の終末的世界を極度にシニカルなユーモアで描き、本年のサンダンス映画祭で話題を呼んだセンセーショナルな問題作。

　起業家として億万長者になり上がり、幸福な充実した人生を送るメイナード家。一家の長アモンは、趣味のハンティングに情熱を傾けている。アモンがハントするのは動物ではない。莫大な富を抱えた一家は何だって狩ることが許されるのだ……。
　「ユーモアは危険な時に最高に力を発揮する」という信念を持つ気鋭の監督デュオが、観る者に笑いと怒りを同時に発現させる。
　2024年サンダンス映画祭出品作品

　監督：ダニエル・フーズル＋ユリア・ニーマン
　製作：ウルリヒ・ザイドル
　撮影：ゲラルト・ケルクレッツ
　音楽：マヌエル・リーグラー
　出演：ローレンス・ルップ、ウルシナ・ラルディ、オリビア・ゴシュラー他
　配給：ツイン＊2025年公開予定

無⽤物 Matter Out of Place

　（105分／オーストリア／2022年）

集め、切り刻み、燃やし、埋める。膨大に生まれる廃棄物をコントロールしようとする、人類の終わりの見えないシジフォス的営みを巨大なスケールで捉えるニコラウス・ゲイハルターのドキュメンタリー最新作。

　大ヒット作品『いのちの食べかた』でお馴染みとなったタブロー的ショットの配置で、スイス・アルプスの山頂、ギリシャやアルバニアの海辺、オーストリアの巨大焼却炉、モルディブの海底やネヴァダの砂漠など、普段人の目の届かない場所で営まれている大量のゴミ処理の様子を、オブザベーショナル・ドキュメンタリーの巨匠ゲイハルターが記録していく。
　その環境学的・人類学的なアプローチが高い評価を得てロカルノ国際映画祭では“緑の豹”賞を受賞した。
　2023年ロカルノ国際映画祭“緑の豹”賞受賞作品

　監督・撮影：ニコラウス・ゲイハルター
　編集：サミラ・ガレマニ、ミヒャエル・パルム

ウィーン10区、ファヴォリーテン Favoriten

　（118分／オーストリア／2024年）

「移民のヨーロッパ」、その最前線の教育現場。生徒たち（と担任の先生）の日々の冒険、失敗、闘い、成功が、子供の目線で見事に活写された、子ども時代の讃歌とも言える心打つドキュメンタリー。

　伝統的な労働者の街として知られているウィーンのファヴォリーテン地区。そこは今や移民とアイデンティーの間で揺れる現代ヨーロッパの鏡とも言える状況となっている。ファヴォリーテン地区にある小学校の生徒のほぼ全員が移民の子であり、さまざまな民族的・文化的背景を持った子どもたちが同じクラスで学んでいる。公共教育の「危機的状況」が叫ばれるその最前線で実際に何が起きているのか。
　ベルリンを始め数々の映画祭で受賞経歴のあるドキュメンタリーの巨匠ルース・ベッカーマンが、そこに通う子どもたちを３年かけてその成長を追いかける。
　2024年ベルリン国際映画祭平和賞受賞作品

監督・脚本：ルート・ベッカーマン
　脚本：エリザベス・メナッス
　撮影：ヨハネス・ハンメル

ベアトリックス Beatrix

　（95分／オーストリア／2021年）

植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。時々鏡で自分のイメージを確認するベアトリクス。女性の身体とそのイメージ、映画のナラティブについての親密な考察。

　ある夏、とある家に一人で過ごすことになり暇をもてあますべアトリックスの日々が16ミリフィルムで端正に捉えられる。あらゆる期待から解放されたベアトリクスの姿をいかなるフレームにも閉じ込めようとしない監督たちのアプローチは、初期のシャンタル・アケルマンの作品にも通じる。植物に水やりをし、お風呂に入り、ボールで遊び、電話をし、友だちを呼ぶ。新鋭監督デュオによるデビュー作。
　2021年FID マルセイユ映画祭俳優賞受賞

　監督・編集：ミレーナ・チェルノフスキー、リリス・クラクスナー
　撮影：アントニア・デ・ラ・ルズ・カシック
　出演：エヴァ・ゾマー、カタリナ・ファールンレイトナー他