インタビュー

マーティン・スコセッシ製作総指揮『Shirley シャーリイ』本編特別映像&監督インタビュー解禁

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 世界各国の映画祭で高く評価された『Madeline’s Madeline(原題)』(2018)やA24とApple TV+が共同制作した『空はどこにでも』(2022)などで知られ、いま最も注目を集めている奇才ジョセフィン・デッカー。彼女の初長編『Butter on the Latch』(2013)に惚れ込んだという巨匠マーティン・スコセッシが製作総指揮に名乗りをあげ、2020年のサンダンス映画祭でUSドラマ部門審査員特別賞を受賞した長編第4作『Shirley シャーリイ』<7/5(金)公開>。

 破壊されることで自身の再構築、出発へ向かう2人の女性の<はじまりの瞬間>を、シャーリイ・ジャクスンの小説の中に入り込んだような映像美で捉えた本編特別映像、およびジョセフィン・デッカー監督が本作への挑戦を語ったインタビュー・テキストが解禁された。

 1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編「くじ」が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイ(エリザベス・モス)はスランプから抜け出せずにいた。着想の元になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女が突如として消息を絶った未解決の失踪事件。部屋に引きこもってばかりいるシャーリイの状況を変えようと、大学教授である夫のスタンリー(マイケル・スタールバーグ)は、助手のフレッド(ローガン・ラーマン)と妻のローズ(オデッサ・ヤング)を居候として呼び寄せる。初めは気難しいシャーリイの態度に挫けそうになるローズだったが、交流を続けるうちに二人の間には奇妙な絆が芽生えていき……。

 ともに暮らすようになったものの、気難しいシャーリイとの距離感を測りかねていたローズ。だがある日、彼女の書斎を訪問、不器用ながらも自身の出産について気遣いを見せる彼女に戸惑いを感じつつも、少しずつ警戒心は解けていく。そんな中、実はシャーリイも、ローズと対峙することで執筆のインスピレーションが刺激される感覚に襲われていた――。全く違う境遇の2人が出会い、対話することで徐々に影響を与え合う。自身が破壊されることで、再構築、出発へ向かう2人の<はじまりの瞬間>をまるでシャーリイ・ジャクスンの小説の中に入り込んだような幻想的な映像美と共に映し出されたものとなっている。

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 「<シャーリイ・ジャクスンの小説>のように感じさせたかった」――本作での<挑戦>を振り返るジョセフィン・デッカー監督。「シャーリイの心の中の世界は外の世界と分かちがたいように作られているんです。つまり、いくつもの層が折り重なっている。ナプキンが落ちて、スプーンがフォークになったり、それが幽霊になったり」。そのため「全てを現実的にするのではなく、謎の部分は謎のまま残した」「映画が、シャーリイの心の中と同じくらいミステリアスなものになるよう、今まで得てきた映画の知識を超えた未体験の領域で映画を作ってきた」と述懐する。

 脚本を手がけたサラ・ガビンズについても「さまざまな世界が同居するすばらしい脚本を書いてくれた。シャーリイの家の世界は外の世界とまるで違う」と、絶賛を送る。特に、シャーリイとその夫スタンリー、ユニークな関係性の描写について「劇中の2人にはウィットや相互依存、“人を操って喜ぶ”という特徴があって、それが私たちの物語を醸成させていった。現実世界の<シャーリイとスタンリー>はとても開かれた関係でありながら心をむしばみ合う関係でもあったんです。だからある意味、脚本のサラが書いた物語は虐待の過程を描いたもので、いかに自己破壊が<成功>を装っているのかを示した物語でもある」と言及。そして、シャーリイとローズ、自分の心身をケアできないほど自身の仕事に没入し過ぎてしまう2人の姿をあげて「これは成長途中の小説家(シャーリイ)に、成長途中の主婦(ローズ)に当てはまる。引っ越してきたローズとシャーリイは影響を与え合い、破壊し合い、再構築し合い、創造し合い、脱却し合う。2人は互いの強迫観念を糧にしている。どのように崩壊していき、その崩壊を本当の自分への足がかりにするのか?」――観る人への問いを投げかける。

 本作は、スティーヴン・キングも影響も受けたと言われるゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記に、現代的で斬新な解釈を加えて練り上げられた、想像力とダイナミズムに満ちた心理サスペンス。彼女の小説だけでなく、配偶者で文芸評論家でもあったスタンリーとの数百通の手紙をもとに制作されている。また、作家自身のキャラクターを描きながら、まるでジャクスンの小説世界に迷い込んだかのような、幻惑的な映像を作り上げた。デッカー監督は、シャーリイ・ジャクスンについて「ある批評家か伝記作家が<シャーリイは政治的な作家ではない>と指摘していたが、しかしシャーリイは私的なレベルにとどまりつつ政治を意識していたと思っている」と語る。そして「だからこそ彼女の作品は今でも響き続けるのだ。彼女の作品は非常に人間的だから時代を超えて読まれている。シャーリイは非日常的な設定、心理描写、あるいは潜在意識に訴える巧みなリズムを使って人種差別、階級差別、性差別と闘っていたのだ」とその魅力についてコメント。

 脚本を手がけたサラ・ガビンズは長年、文学とかけ離れたホラー作家として扱われてきたシャーリイ・ジャクスンについて異議を唱える。「彼女は数多くの短編や長編を残したが、ホラー作品によくある吸血鬼やゾンビや幽霊や神話上の怪物は登場しない。その代わり日常のありふれた風景の中に恐怖を見出すのがシャーリイの小説の特徴でもある。<人間こそ恐ろしい怪物であり、私たち自身の精神が血に飢えた悪魔的な妖怪であり、私たちの社会はのどかなパーティーを楽しみつつ石打ちの刑にも加われる気まぐれな人々の集まりである>」と述べている。

 シャーリイを演じたのは『透明人間』『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』などで知られるエリザベス・モス。ほか、『シェイプ・オブ・ウォーター』『君の名前で僕を呼んで』などに出演、名バイブレーヤーとしても評価の高いマイケル・スタールバーグ、オデッサ・ヤング(『グッバイ!リチャード』)、ローガン・ラーマン(『ウォールフラワー』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』)ら、一流キャストが集結! 「美しい傑作」(AwardsWatch)、「心を掴んで離さない」(The Playlist)、「甘美で官能的」(The Hollywood Reporter)「夢の世界へ誘う。エリザベス・モスの驚異的な演技」(/Film)など、すでに海外では絶賛が相次ぐ本作を作り上げた。

シャーリイ・ジャクスン(Shirley Hardie Jackson, 1916年 – 1965年)

 カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。33年、ニューヨーク州ロチェスターへ移住。ロチェスター大学に入学するが中途退学。37年、親元を離れてシラキュース大学に編入学し、後に夫となるスタンリー・エドガー・ハイマンと出会う。在学中、ハイマンらと同大学の文芸誌の刊行に携わり、創作意欲を高めていった。40年、卒業と同時にニューヨークに移り、ハイマンと結婚。42年には第一子が誕生し、のちに三人の子をもうける。ハイマンがベニントン大学の教授陣に加わった45年より一家はバーモント州ノースベニントンに定住した。
 48年、ジャクスンは20年代にカリフォルニア州バーリンゲームで育った子ども時代を半自伝的に描いたデビュー長編『壁の向こうへ続く道』を出版。ジャクスンの最も有名な短編である「くじ」は、同年6月に『ニューヨーカー』誌に発表されて一大センセーションを巻き起こし、彼女の名声を確立した。51年に発表された長編第2作『絞首人(処刑人)』には、46年に実際に起こったベニントン大学に通う18歳の少女ポーラ・ジーン・ウェルデンの失踪事件の影響が見られる。現在も未解決のこの事件は、ジャクスンと家族が住んでいたベニントン近郊のグラステンベリー山の森の荒野で起こっている。50年代を通じて文芸誌や雑誌に数多くの短編小説を発表し続け、その一部は53年の回顧録『野蛮人たちとの生活』にまとめられている。59年、ゴーストストーリーの古典ともされる超自然的なホラー小説『丘の上の屋敷』を出版。スティーブン・キングが激賞したことでも知られ、『シャイニング』に影響を与えたと言われる。62年、最後の長編小説となる『ずっとお城で暮らしてる』を出版。ジャクスンを代表する最高傑作と評されるゴシック・ミステリーとなった。
 1960年代になると、健康状態を損ねたジャクスンは闘病生活を送るようになり、48歳の若さで心不全により死去。25年という比較的短い執筆期間で、6つの長編、100を超える短編、家族の日常を描いた2冊のエッセイ、4作の児童書を刊行した。また、多くの長編は映画化もされ、ロバート・ワイズ監督による『たたり』(1963)はホラー映画の古典的名作としても知られる。2008年、彼女の功績を称え、心理サスペンス、ホラー、ダーク・ファンタジーのジャンルにおいて最も優れた小説に贈られる賞としてシャーリイ・ジャクスン賞が創設された。日本では小川洋子、鈴木光司が受賞している。

キャスト&スタッフ

 監督:ジョセフィン・デッカー
 脚本:サラ・ガビンズ
 原作:スーザン・スカーフ・メレル(『Shirley』未邦訳)
 撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン
 美術:スー・チャン
 編集:デヴィッド・バーカー
 衣装:アメラ・バクシッチ
 音楽:タマール=カリ
音楽監督:ブルース・ギルバート、ローレン・マリー・ミカス
 キャスティング:ケリー・バーデン、ポール・シュニー
 出演:エリザベス・モス、マイケル・スタールバーグ、ローガン・ラーマン、オデッサ・ヤング

 (原題:Shirley、2019年、アメリカ、上映時間:107分)

オフィシャル・サイト(外部サイト)

映画『Shirley シャーリイ』公式サイト
映画『Shirley シャーリイ』7.5 fri Roadshow

 公式X:https://twitter.com/shirleymovie_jp(外部サイト)

公開表記

 配給:サンリスフィルム
 7月5日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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