イベント・舞台挨拶映画祭・特別上映

『ロスト・イン・トランスレーション』 『ヴァージン・スーサイズ』アニヴァーサリー(35mmフィルム)スペシャル上映記念スペシャルトークイベント

 登壇者:大島依提亜(グラフィックデザイナー)、立田敦子(映画ジャーナリスト) 

 昨年、東急歌舞伎町タワー内に開業した、全シアターにハイスペックな映写、音響設備を備えているのが特徴で、日本初となる全席プレミアムシートを導入していることで話題の映画館「109シネマズプレミアム新宿」と、BS放送と配信サービスを手掛ける「BS10 スターチャンネル」(株式会社スター・チャンネル:東京都中央区)が贈る連動企画として、いまだ絶大な人気を誇るソフィア・コッポラ監督の代表作2作品が、それぞれ今年2024年に周年を迎えることに合わせて、「『ロスト・イン・トランスレーション』『ヴァージン・スーサイズ』アニヴァーサリー(35mmフィルム)スペシャル上映」を6月21日(金)より【1週間限定】で上映中。この度、本作の公開を記念して、数々の映画の印象的なポスターデザインを手がけている大島依提亜氏(グラフィックデザイナー)と、立田敦子氏(映画ジャーナリスト)によるスペシャルトークイベントが109シネマズプレミアム新宿(新宿区)にて開催された。

 今回の企画で上映される2作品は、『ロスト・イン・トランスレーション』が日本公開20周年、『ヴァージン・スーサイズ』が製作25周年と、今年それぞれ周年記念の年だが、SNSでも折に触れて話題になるなど、いまだにソフィア・コッポラ作品のなかでも人気が高く、また熱狂的なファンがいる“忘れがたい作品”としても知られていて、4月にはソフィア・コッポラ監督の最新作『プリシラ』(配給:GAGA)が公開され、あらためて盛り上がりをみせている絶好のタイミングでのスペシャル上映企画となっている。

 ソフィア・コッポラ作品の魅力について、A24作品を始めさまざまなポスターデザインに関わっている大島だが、「『ヴァージン・スーサイズ』を観てかなり好きだなと思い、その後『ロスト・イン・トランスレーション』を観て、正直初見ではピンと来なかったんです。ただ今回の機会でまた観返したら、自分の年齢がミッドライフ・クライシスに入ったこともありかなり刺さった。観る年齢で感想が変わってくる作品だと思います」と語り、大島はビル・マーレイではなく、公開当時からソフィア・コッポラに感情移入しているという。さらになんと公開当時に本作のセット・ビジットに参加しているという立田は、「あれから20年経つのがショックなんですが(笑)。ただ20年以上経っても色あせなくて、新宿の街は変わっている姿もあり新たな発見もある。ソフィアがこの作品を撮ったのは、ご自身の体験を反映させていると聞いています。フランシス・フォード・コッポラ監督の長女であるソフィア・コッポラは0歳として女優デビューしていて、さらに『ゴッドファーザー』ではウィノナ・ライダーの代役をしたというのもすごく叩かれていた。彼女が将来何をしようか悩んだ時に、行き着いたのが写真。10代の頃に写真を撮って、それを最初に大きな特集で取り上げたのがこの映画でチャーリー役で出ていて当時「DUNE」という雑誌で編集長をしていた林 文浩さん。そういうこともあり、彼女は映像の世界に入っていった。父の仕事を継ぐということも抵抗はあったが、それを乗り越えて『ヴァージン・スーサイズ』の製作に繋げた。ただ当時はアメリカの批評家からの反応がとても鈍かった。親の七光りという色眼鏡をかけられていて、何も賞を取っていない。その後に彼女がインディーズで撮ったのが『ロスト・イン・トランスレーション』。今考えてもスーパー低予算で撮っていると思います」と語り、大島は「全体的な完成度が高い分、フィルム撮影ではカラーを調整するのは限界があるが、今の映画が見失ったものがかろうじてまだ残っている」と言及。

 立田は「当時のソフィアってガーリー・ムーブメントの旗手と言われていて、ブランドのMILKFED.でクリエイティブ・デザイナーをやっていたり、その時もやはり写真とキャスティングの部分で一番評価されていた」と語り、キャスティングについては大島「キルスティン・ダンスト、スカーレット・ヨハンソン、エル・ファニングと初期3作続けて本当に素晴らしい。その3作の女優たちはその後にステップアップしていきましたよね」と語り、続けて立田は「MILKFED.のスタイルが脚光を浴び、今ではY2Kのビジュアルの象徴としても今でも残っているし、最近ではNewJeansへも継いでいる」と現代までにわたるソフィアの審美眼の影響力を語る。

 さらに『ロスト・イン・トランスレーション』の秘話について、立田は「彼女の私小説的なお話。当時スパイク・ジョーンズと結婚していたソフィアが感じていた孤独感が描かれている」、「エンド・クレジットにも名前が載っていますが、ウェス・アンダーソン、ノア・バームバックや、ソフィアの兄のロマン・コッポラも含めた、すごく大きな新しい潮流というのが生まれた。彼らはスタッフやキャストを共有するという特性もあって、ビル・マーレイなどは彼らの作品によく出ている」さらに裏話として、立田は「フランシス・フォード・コッポラは昔サントリーのCMに黒澤 明と一緒に出演していた。本作を配給している東北新社がその繋がりでサントリーの響が出ていたりとか、今考えると日本でこれをやって大丈夫なのかな?という心配も当時あったんですけど(笑)。当時のパークハイアットはとてもヒップな場所だったので、あんなスーツを着たサラリーマンがいたり、カリカチュアにコミカルに描いている」とその表現について語り、大島は「僕も最初ピンと来ていなかったのは日本の広告業界がカリカチュアライズされすぎていて、だいぶベタだなとは思ったんです。ただそれをふまえて『ヴァージン・スーサイズ』をまた観返しても結構ベタな表現はされているんですよね」と共感。続けて立田は、「ソフィアは少女漫画からの影響も大きいんです。当時はコメディが馬鹿にされては来ていたんですが、この世代からガラッと変わった。アジアだとポン・ジュノも日本の漫画家が好きだったりしますが、ソフィアもお嬢様の強さでそういう周りの目を全然気にしなかった」とソフィアの少女漫画からの影響も明かす。

 さらに立田が『ロスト・イン・トランスレーション』のセット・ビジット時の山手通りにある成願寺のセット・ビジットにいる時にびっくりしたのは、ソフィア監督がどこにいるんだろう?と思ってたら、私の隣で小さな声で「カット!」とかわいらしく言っていて。ジーンズに汚れたキャップのような監督然とした恰好ではなく、A.P.C.やマークジェイコブスにGUCCIのバッグを持って、とてもカジュアルなスタイルだった」とソフィアの監督としてのスタイルの新しさも語る。さらにその後『マリー・アントワネット』を経たソフィアについて、立田は「この作品は規模が大きすぎて、『これは私のサイズの映画じゃない』とはっきり言っていた」と裏話を明かし、大島は「そのあとに『SOMEWHERE』を撮っていますもんね。大作を撮った後に小さな規模の作品を撮り、傑作が出来るという流れだったと思います」と語ると、続けて大島は「僕も全作好きですが、『SOMEWHERE』は大好き。ソフィア・コッポラが大好きなので、配給会社さんにすごいお願いをしてBlu-layのデザインだけやらせていただいた(笑)」とその思い入れを明かす。立田は「『ロスト・イン・トランスレーション』の中で面白いと思ったのは、ソフィアの好きな東京が詰まっているところ。当時代官山にあって彼女が本当に通っていた寿司屋だったり、あとはヒステリックグラマーの北村(信彦)さんとか、HIROMIXとか、彼女が親しんできた方々が出演している。当時アメリカのガールズ・ムーブメントの旗手がソフィアだとすると、日本ではHIROMIXだった」と語り、今まさに来日中のソフィアの日本の友好関係についても明かす。

 さらに本作の音楽について、立田は「今観ると『あっ』と思うのが、Phoenixの『too young』を使っていること。フロントマンのトーマス・マーズが今のソフィアの旦那さんなんですが、そこから今になるまでソフィアの作品の音楽に携わっているので、ソフィアの歴史を感じますね」と明かすと、続けて大島は「当時のソフィアのパートナーだったスパイク・ジョーンズがその後『her/世界でひとつの彼女』でAIの声にスカーレット・ヨハンソンを使っているのなんかも繋がりを感じますね」と語る。最後に立田から「フランシス・フォード・コッポラが『コッポラの胡蝶の夢』という作品を撮った時のフランシス・フォード・コッポラの話で印象的なのが、“僕はソフィアの『ロスト・イン・トランスレーション』や『SOMEWHERE』を観て影響を受けた。自分はパーソナルな作品に返るべきだ”と語って『胡蝶の夢』を撮ったそうなんです」とソフィアが父へも影響を与えた秘話を明かし、20年以上のキャリアを経て、国や世代を問わず、映画界で影響力をさらに拡大し続けているソフィアの魅力について語った。

上映(放送・配信)作品紹介

特集タイトル:「109シネマズプレミアム新宿連動企画 ソフィア・コッポラ監督作品アニヴァーサリースペシャル」

送&配信作品:『ロスト・イン・トランスレーション』『ヴァージン・スーサイズ』

 ・7月より「BS10 スターチャンネル」で特集放送開始!
 ・動画配信サービス Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX」にて配信中!

『ヴァージン・スーサイズ』

©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 (1999年/アメリカ/98分)

 1970年代のアメリカ中西部の町。リズボン家の5人姉妹は、17歳から13歳まで、全員年子の美人姉妹だった。ヘビトンボが飛ぶ6月、そんな5人姉妹の末妹セシリアが、浴室で自殺未遂騒動を引き起こす。数日後、精神科医のアドバイスで一家は近所の子どもたちを招いてホームパーティを開くが、彼女はその場で投身自殺を遂げてしまう……。

 出演:キルスティン・ダンスト、キャスリーン・ターナー、ジェームズ・ウッズ、ジョシュ・ハートネット、ハンナ・ホール
 ★ソフィア・コッポラ監督デビュー作
 ★製作25周年作品

©1999 by Paramount Classics, a division of Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ロスト・イン・トランスレーション』

©2003 LOST IN TRANSLATION INC.

 (2003年/アメリカ=日本/103分)

 ウイスキーのコマーシャル撮影のため来日したスター、ボブ・ハリス。彼は滞在先の高級ホテルでスタッフから手厚い待遇を受けながらも、異国にいる戸惑いや居心地の悪さを感じていた。さらに自宅にいる妻との電話で、気分はますます滅入るばかり。一方、同じホテルにはカメラマンの夫の仕事に同行してきた新妻シャーロットが滞在中。
 彼女は多忙な夫にかまってもらえず、部屋で孤独を持て余していた。そんな2人が偶然出会い……。

 出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ジョヴァンニ・リビシ、アンナ・ファリス、マシュー南
 ★第76回(2004年)アカデミー脚本賞受賞作品 
 ★日本公開20周年作品

©2003 LOST IN TRANSLATION INC.
©2003 LOST IN TRANSLATION INC.

109シネマズプレミアム新宿 とは

https://109cinemas.net/premiumshinjuku/(外部サイト)

 東京都新宿区に2023年4月14日(金)に開業した「東急歌舞伎町タワー」9F・10Fに位置する“109シネマズ”の新ブランドです。全席が一般的なシネコンの最大約2.3倍の大きさのプレミアム・シートで、全シアターに坂本龍一氏が監修した極限までリアルな音を追求した音響システム「SAION-SR EDITION-」が搭載されています。また、上映1時間前からチケットを購入した方のみが入れるラウンジが利用できるほか、ポップコーンとドリンクが鑑賞前おかわり自由の「WELCOME CONCESSION」、ジャパニーズ・ウイスキーやこだわりのフードを揃えた「THE BAR」もお楽しみいただけます。ここにしかない上質な鑑賞環境とおもてなしを提供し、これまでの常識を覆す“感性を開く映画館”として、非日常世界への没入体験をお届けします。

スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-とは

https://www.amazon.co.jp/channels/starch(外部サイト)

 Amazon Prime Video チャンネル上で、スターチャンネルが国内で独占最速放送を行っている最 新注目の海外ドラマや独占良作映画が観られるスターチャンネルの配信サービス。
 ※ AmazonおよびAmazon Prime VideoはAmazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

BS10 スターチャンネルとは

https://www.star-ch.jp(外部サイト)

 映画とドラマを愛する全ての人のためのプレミアム映画専門チャンネル。最新ハリウッド大作から不朽の名作、激レア吹替版・貴重作、海外ドラマ、さらに独占プレミア作品や独占コンテンツで極上の映画体験をお届け!

(オフィシャル素材提供)

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました