記者会見

『ぼくのお日さま』外国特派員協会 記者会見

© KAZUKO WAKAYAMA

 登壇者:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、奥山大史監督

 映画『ぼくのお日さま』の外国特派員協会記者会見が7月1日(月)、東京・公益社団法人 日本外国特派員協会(FCCJ)にて行われ、主演の越山敬達、共演の中西希亜良、池松壮亮と、奥山大史監督が登壇した。

 奥山大史監督の商業映画デビュー作となる『ぼくのお日さま』は、田舎街のスケートリンクを舞台に、吃音のあるホッケーが苦手な少年、選手の夢を諦めたスケートのコーチ、コーチに憧れるスケート少女の3つの心がひとつになっていく……雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない小さな恋たちの物語が描かれる。

 大学在学中に制作した長編初監督作『僕はイエス様が嫌い』(2019)が、第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞、今年5月に開催された第77回カンヌ国際映画祭では、日本作品で唯一オフィシャルセレクション部門に選出され、上映後は約8分間のスタンディングオーベーションで歓迎を受け、第26回台北映画祭で「審査員特別賞」「観客賞」「台湾監督協会賞」のトリプル受賞し、日本史上初となる快挙を成し、多くの注目を集めている奥山監督。
 主人公の少年・タクヤを本作が映画主演デビューとなる越山敬達、フュギュア・スケートを学ぶヒロインの少女・さくらを、100名以上が参加したオーディションを経てヒロインに大抜擢され、本作が演技デビューとなった中西希亜良、夢に敗れた元フィギュア・スケート選手のコーチ・荒川を池松壮亮が演じている。

 カンヌ国際映画祭帰国後、初のイベントとなったこの日、記者たちの拍手迎えられたキャストと監督が少し緊張の面持ちで登場。

 スケートをしながらの演技という、難しい撮影に挑んだ越山は「湖の撮影の時に、自然の氷なのですごくゴツゴツしていたんです。なので、たくさん転んでしまって。その時に右膝を3回もリンクに叩きつけて痛すぎて、泣いちゃいました」というエピソードを披露し照れ笑い。

 質問にすべて流暢な英語で答えた中西も「私も同じ撮影を思い出します。自然に氷が張った湖だったのですが、私も長くスケートをやっていますが、あそこまでデコボコしているとは、予想していなくてびっくりしました。でも、撮影を通じて非常に楽しい時間を過ごさせていただいたので、難しかったということをいつの間にか忘れていました」と笑顔を見せる。

 一方で、今作で初めてアイス・スケートに挑戦した池松は「このお2人はもうすでにとても上手だったので、2人の足を引っ張らないように頑張ったんですけど、 奥山さんも元々スケートをやられていて、カメラも自分で回していますから、カメラを担いで滑ってるわけです。なので、僕はみんなに置いていかれそうになりながら必死についていきました(笑)。湖のシーンでは特に音も必要なかったので、この4人でひたすら2日間滑りました。遊ぶように滑って撮影しました。この光景は、もう一生忘れないだろうなと。驚くべき瞬間だったなと思います」と、充実した時間を回顧した。

 池松が明かしたように、スケートを滑りながらカメラを担いでいた監督は「滑りながら撮っていたので、カメラマンとしてもすごく新鮮で楽しい時間でした」とし、「特に最後のほうのシーンで印象的なところがあって。中西さんが1人で滑っている場面では距離を取ってリンクの外から撮っていたんです。とても疲れていたと思うのですが、『もう1回挑戦したい』と言ってきて。この映画への熱量が始めのころよりも高まっているのを感じて嬉しかったですね」としみじみ。

 映画初出演となった中西は「最初はとても緊張していましたし、(演技を)どうやったら正しいのかも分かっていなかったのですが、ありがたいことに、やはり長年スケートをやってきた経験を活かすことができたので、演技には力足らずかもしれませんが、スケートの技術で補うことができたと思うことが多かったです。そもそもスケートをしていなかったら、この役を獲得することもできなかったので」と、自身の経験に胸を張り、「それでもまだまだいろいろ努力しなければならないところはあると思っています」とコメントした。

 池松の自然な演技を称える声も上がると、「とてもシンプルで余白の残った脚本を奥山さんが用意してくれた。みんなで撮影しながら物語の余白を埋めていきたいと強く望んでいて、俳優として役人生にとってのスペースをもらったような気がしました。撮影していく中でどんどん膨らましていったり、即興で作ったりしました。特に2人(越山と中西)には脚本を渡さず、その場でセリフを伝えて馴染ませていくような作業でしたので、そういう意味で珍しい撮影の進めかただったと思います」と、監督の演出力にも言及し、新しい体験に充実感を滲ませる。

 その場でセリフを伝えられた越山と中西。越山は「自然体で演じることができたのでやりやすかったです」とし、中西「演技が初めてだったので多くを語ることはできませんが、もちろん私とは別の誰かを演じているわけですが、キャラクターを演じているというよりも、自分自身の姿もそこにはありました。とてもやりやすかったです」と述べた。

 今回のキャスティングは「スケートができること」が一つの条件だったそうだが、「越山くんは運よく出会うことができましたが、“さくら”役を決めるのが難しかった。スケート協会の方に協力していただき、募集のポスターを張らせていただいて中西さんが応募してきてくれたんです。彼女に出会えたことは幸せだったと思います」と感慨深げ。

 これまでも10代の俳優との共演は経験している池松だが、今回の2人との撮影について問われると、「2人が役を演じる以上にそれぞれが辿ってきた人生をそのまま役に乗せていて。本当に2人とも非常に魅力的で、奥山さんがそういう2人を選んでくれたのですが、僕も2人に引っ張られながら2人をどうサポートできるのか、2人に物語の中に没頭してもらえるか、微力ながら本当に一生懸命コーチ役として物語を超えてサポートできたらと思って、必死に頑張りました」と答えた。

 奥山監督は「スケートは特に選手生命が短いんです。一度夢を諦めた人が、再びリンクに訪れると独特の艶やかさや色っぽさをもっているように感じます。それ(独特の艶やかさ)を池松さんにも感じました」と荒川というキャラクターが生まれたきっかけについて話し、荒川と五十嵐、吃音を持つタクヤ、東京から来たさくらが、どこか疎外感をもって生きているキャラクターたちが共鳴しあうような物語を作りたかったと明かした。
 映画『ぼくのお日さま』は、テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて9/6(金)〜9/8(日)の3日間先行公開がはじまり、9/13(金)より全国公開される。

公開表記

 配給:東京テアトル
 9⽉、テアトル新宿、TOHO シネマズシャンテ ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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