イベント・舞台挨拶

『箱男』ジャパンプレミア

© 2024 The Box Man Film Partners

 登壇者:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、石井岳龍監督

 映画『箱男』のジャパンプレミアが都内で行なわれ、主演の永瀬正敏、共演の浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市とメガホンを取った石井岳龍が出席して作品の完成を喜び、クロストークを行った。2月の独ベルリン国際映画祭で上映され「今年一番クレイジーな映画」と言われた話題作。

 本作は、生誕100年を迎える安部公房の小説を映画化。1997年、一度はドイツとの合作が決まり、ハンブルグで撮影されることになっていたのだが、クランクイン前日に製作が中止になってしまっていた。それから27年の月日を経て映画化され、上映されることとなった。
 本作は、ダンボールを頭からすっぽりとかぶり、一方的に世界を覗き見する“箱男”に魅せられたカメラマン“わたし”の物語。箱男が数々の試練と危険に襲われるさまが描かれる。

 27年の月日を経て映画化され、日本初の上映に、石井監督は「あまりに嬉しくて、夢を見ているようです。2日前から知恵熱が出ています(笑)」と語り、感激もひとしおの様子。石井監督は、「製作しないという選択肢は一度もなかった」ときっぱり。
 生前の安部氏と会ったことがあるという石井監督、「印象は頭のいい方。ナポレオンのようにいろんなことをマシンガンのように話されました」と振り返り、安部氏からは「娯楽にしてくれ」とのリクエストを受けたことを明かす。「エッ!? 娯楽に?と思ったのですが、50年前の原作ですが、今の世の中を予見しているような映画になっています。映画館でしか体験できない映画を作りたかった。今作は皆さんに箱男になってもらい、箱男の中の迷宮にいざなう冒険を体験する映画。いろいろなものが詰め込まれています。途中、分からないところがあるかもしれませんが素敵な俳優たちが導いてくれるので身を委ねて、体験してください。とにかく楽しんでください」と観客に呼びかけた。

 27年前にも主人公の「わたし」を演じる予定だった永瀬は、「上映までに27年もかかってしまった。あまり経験したくないこが起きた。明日からクランインというときに中止が知られた。監督がプロデューサーに呼ばれて、外に出ていった時の後ろ姿は一生忘れません……」と振りかえった。

 同じく27年前も「軍医」役で出演するのが決っていた佐藤は、作品について「脚本の読後感などは変わっているけれど、深淵をのぞく者は深淵からのぞかれるという、当時受けた印象は変わっていない」と話す。
 佐藤は、箱男を完全犯罪に利用しようとたくらむ軍医役で出演。「27年前、37歳のときに最初のオファーを受けました。以前と今の自分では少し形は違っているけれど、監督が観客に近づけてくれた」と石井監督を称賛。

 今作で箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者役で起用されることになった浅野は、「この人たちだったら、必ずやってくれるという安心感がありました。「台本を読んで、面白かった。読んでいくうちにこの箱男の世界に没頭できる自分がいました。大好きな作品です」と話し、参加に大喜び。浅野は『ELECTRIC DRAGON 80000V』などで石井監督とすでにコラボしている。

 オーディションで“わたし”を誘惑する謎の女・葉子役を手にした白本は、役を得たときは「絵に描いたようなガッツポーズと雄叫びをあげました。しびれるような嬉しさがこみ上げてきました」と喜びを爆発させる。「監督と手をつないで私なりの葉子を作らせていただきました。共演の皆さんは違う刺激をいつも与えてくださいました。皆さんに私では想像しえなかった葉子を引き出していただきました」と感謝することしきりだった。

 石井監督は、「葉子への解釈に説得力があり、かつ堂々としていた。リアルな女性として期待以上の存在を示してくれた。素晴らしい演技だった」とベタ褒め。

 再度の出演オファーに驚いた永瀬だが、箱男の役作りについて「(箱男の)役をちょっとでも感じたいと思って、ホテル部屋のドアを開けた状態で、トイレとお風呂以外はずっと箱の中に入って生活していました」と話す。今回小さな相棒”猫”が一緒に箱に入っていたことも明かし、会場を和ませる。

 永瀬は、27年前を振り返り、「撮影が中止になり、ドイツのスタッフの方たちが集いの場を設けてくれたんですが、浩市さんに『デートしよう』と声を掛けられてパーティを抜けたんです。浩市さんが「『俺の気分は棺桶に釘を打つ寸前だ。お前はどうなんだ?』って。僕は『釘を打たれてもぶち破って出ていきたいですと答えました」。そんな永瀬に佐藤は「『俺はこの役を棺桶に入れて埋めるよ』というニュアンスで話したのですが、永瀬さんの『埋めきれない』という話を聞いて、嬉しくもあり、切なくもあり……』としみじみ。永瀬は「あんなに緊張した“デート”はあとにも先にもありません(笑)」と佐藤と交わした当時の会話を述懐していた。

 最後に監督とキャストが「楽しんで観て欲しい。特に若い人に観て欲しい」とメッセージを送った。観たいろいろな感想はSNSで!

 (取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:ハピネットファントム・スタジオ
 2024年8月23日(金) 全国公開

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