マーティン・スコセッシ、ポン・ジュノ、グレタ・ガーウィグらが惚れ込んだ才能、アリーチェ・ロルヴァケル監督(『幸福なラザロ』)最新作『墓泥棒と失われた女神』が7月19日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中。
この度、主演ジョシュ・オコナーのインタビューが解禁された。
80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。忘れられない恋人の影を追う、考古学愛好家のアーサー。彼は紀元前に繁栄した古代エトルリア人の遺跡をなぜか発見できる特殊能力を持っている。墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。ある日、稀少な価値を持つ美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく……。
恋人の幻想を追う墓泥棒。彼が見つけ出すのはお宝か、愛か――? 本作はギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケ」の悲劇のラブ・ストーリーをモチーフにした、数奇な愛の物語だ。
監督は、フェリーニ、ヴィスコンティなどの豊かなイタリア映画史の遺伝子を確かに受け継ぎながら、革新的な作品を発表し続けているアリーチェ・ロルヴァケル。カンヌ国際映画祭において『夏をゆく人々』(15)でグランプリ、『幸福なラザロ』(19)では脚本賞を受賞。マーティン・スコセッシ、ポン・ジュノ、ソフィア・コッポラ、グレタ・ガーウィグ、アルフォンソ・キュアロンらがファンを公言したり、製作のバックアップに名乗りをあげるなど、世界中の映画人がその唯一無二の才能に惚れ込んでいる。
主演は、新世代の英国若手俳優を代表するひとりとしていま間違いなく名前が挙がるジョシュ・オコナー。『ゴッズ・オウン・カントリー』やチャールズ皇太子に扮したドラマ「ザ・クラウン」シリーズで高く評価され、『チャレンジャーズ』ではゼンデイヤ演じる主人公らと三角関係になるテニスプレイヤーを演じ話題沸騰。撮影中の『ナイブズ・アウト3』ほか、数々の公開待機作が控えている。
本作は今をときめく俳優ジョシュがロルヴァケル監督作品への出演を熱望したことが本作の主演を務めるきっかけに。そんなジョシュの、ロルヴァケル監督への愛が強すぎるインタビューを解禁。ジョシュとロルヴァケル監督の気が合いすぎるゆえに、撮影中まさかの理由で撮影スタッフから注意を受けた微笑ましいエピソードやその徹底ぶりに仰天する役作りの方法についても!
あなたはアリーチェ・ロルヴァケル監督のファンだったそうですが、本作への出演の経緯を教えてください。
ある日、弟から「『幸福なラザロ』という映画がとても良かったからぜひ観てほしい」と電話があったんです。その晩に映画を観に行って、彼女の過去作もすぐに観ました。まさに私のために映画を作っている監督を見つけたような気がしたんです。それですぐに「親愛なるアリーチェ、あなたの作品が大好きです。イタリア語が下手なイギリス人の役が必要なら僕がいます」と手紙を送ったんです。アーサー役はもともと私より年配の俳優を想定していたそうなのですが、アリーチェが脚本を書きかえてくれたんです。
よく気に入った作品の監督へオファーをしているんですか?
あまり頻繁にはやりません。でもアリーチェの映画を観たとき、私は彼女と一緒に仕事をする運命にあると心から感じました。劇中のアーサーとその恋人べニアミーナを繋ぐ「赤い糸」のように、私は現実世界でも運命というものを強く信じています。ある人生の目的のために、引き寄せられるように人と出会うのです。アリーチェがまさにその一人で、彼女は私の人生を変えました。これは誇張ではありません。
アリーチェ・ロルヴァケル監督とはどんな部分で意気投合したのですか?
私たちは心の底ではヒッピーの気質があると思います。二人とも自然やガーデニングが大好きだし。ある時、撮影の合間に私は葉っぱや木の年輪を真剣に見ていて、アリーチェは昆虫に興味津々の様子でした。すると私たちを探しにきた撮影スタッフに「私たちはここで映画を作ろうとしているんだよ!」と注意されてしまいました(笑)。
今では彼女は仲の良い友人であり姉のような存在。願わくば彼女ともっとたくさんの映画を一緒に作りたいです。
アリーチェ・ロルヴァケル監督の作風で惹かれた部分は何ですか?
子どもの頃に親が読んでくれたおとぎ話を聴いて、「もしそれが現実だったら?」と、何度も空想したものです。アリーチェの作品は「現代のおとぎ話」のようですが、それは、信仰、トラウマ、恐怖、失恋など、現実的な人間の感情に深く根ざしていて、そのリアリズムとファンタジーの狭間を描いているのに惹かれます。私は現在活躍している映画監督で、そのような作品をこれまでに見たことがありませんでした。
『ザ・クラウン』で演じたチャールズ皇太子と、汚れたリネンのスーツを着た墓泥棒は正反対の役柄ですね。
そうですね。本作のアーサーは「ザ・クラウン」 よりも断然私らしい役柄だと思います。彼の考古学への関心や目に見えないものを見ることができる能力に興味をそそられました。そして放浪者のようなアーサーの役柄にちなんで、一部撮影期間中、私はキャンピング・カーに住み、湖で体を洗っていました。毎晩、アリーチェや撮影スタッフらと焚火をしたり、料理を楽しんだり、歌を歌ったり。まさにサーカスのような生活で、それがとても大好きでした。
イギリス人のアーサーは、イタリアの片田舎の墓泥棒のグループのなかで少し浮いていますね。撮影中、何か苦労はありましたか?
私は3ヵ月、イタリア語の集中講座を受けて撮影に挑みました。イタリア語を勉強しながら撮影していたので、たしかによそ者のように感じる部分もありました。アーサーを演じるにあたってそれは重要なことだと思っていて、撮影中は自分を抑えてキャストのみんなとは少し距離を置きました。観客の皆さんも、アーサーが周囲の仲間たちとはだんだん異なる道をたどっていくのを感じるはずです。今では「墓泥棒の仲間たち」とも仲が良くて、よくメッセージのやり取りをしたりもします。
この映画は「失われた愛」についても描いています。アーサーにとって失踪した恋人ベニアミーナは、一体どんな存在なのでしょうか?
単なる「愛」以上のものです。映画全編を通して、ベニアミーナはアーサーを磁石のように惹きつけます。生と死、現実と空想の境目を描くこの物語を読み進めていくにつれて、アーサーが「生」よりも「死」の世界が心地良いと感じていることが分かると思います。とにかく彼は道に迷った少年のようで、快適で安全な場所を見つけようとしています。
燃えるような、そして生死をかけた愛を信じますか?
はい。紛れもなく、抗いがたいほど惹かれ、結ばれる人がいると信じています。そしてこれは決して切れることのない絆で結ばれているアーサーとベニアミーナの物語です。
公開表記
配給:ビターズ・エンド
7月19日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)