インタビュー

『台北アフタースクール』ラン・ジェンロン監督 インタビュー

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 2024年7月26日(金)公開の台湾映画『台北アフタースクール』は、人気俳優でもある監督のラン・ジェンロンが、自らの恩師であり友人のミッキー・チェンをモデルに描いた瑞々しい青春回顧録。青春時代の恋愛、家族、友情のみならず、ジェンダーや多様性といった現在にも通じるテーマがこめられた本作を作り上げた監督に話を聞いた。

瑞々しい青春映画かと思って観ていたら、友情や愛のみならず、ジェンダーやセクシュアリティーにかかわるテーマも絡み合い、心にさまざまな問いかけをしてくれる作品でした。チャン・ジェンハンは監督ご自身のモデルにしていると思いますが、他の3人もそれぞれモデルがいるのですか? いる場合には、本作を観てどのような感想をおっしゃっていましたか?

 1994年、それは私が成長した時期です。
 チャン・ジェンハンは私自身をモデルにしました。チェン・シャンも私の実際の親友を基にしたキャラクターです。実際、私とその親友は本当にとてもいい関係だったのです。そのため、当時のガールフレンドから「あなたは彼と付き合いなさい」と言われたほどです。だから、このような脚本になったのです。
 和尚というキャラクターも、実は私の友人の一人を基にしています。話を聞いたときに、ぜひ『台北アフタースクール』に取り入れたいと思いました。3人の少年が、それぞれ異なるジェンダー・アイデンティティを持っているという設定です。思春期という時期において、ジェンダー・アイデンティティを探求することは非常に価値があると思います。

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 チェン・スーでモデルにしたのは、当時塾でとても人気があった“クラスのマドンナ”です。
 映画を観終わったあと、友人たち皆が俊志先生(ミッキー・チェン監督)を懐かしみ、あの美しくて生命力に満ちた1994年を思い出しました。

最も思い入れのあるシーン、こだわったシーンを教えてください。

 私にとってはどれも非常に印象深く、別れが惜しいものです。撮影が終わるたびに、何かを失ったような気がして、『台北アフタースクール』の思い出が少しずつ遠ざかっていくように感じてしまいました。本当に名残惜しいです。

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台湾はダイバーシティを実現している先進国だと常日頃感じていますが、劇中の「太陽の下を歩くため、自分の力で変えるんだ」というミッキー先生の言葉が表していたように、そこに至るまでにはさまざまな葛藤や闘いがあったのだと伝わってきました。台湾では2019年に同性婚が合法化されましたが、日本では残念ながら、同性婚どころか夫婦別姓でさえも法制化には程遠い段階にあります。台湾の人々は何故これほど、誰もが生きやすい社会を築くための柔軟で自由な思考を獲得できていると思いますか?

 90年代の台湾は、多くのショックと抑圧でいっぱいだったと思います。文化的アイデンティティを形成するには、多くの時間と、多くの人々の努力が必要です。対立や衝突が必要だとは思いませんが、最初はどうしてもそうなりがちです。台湾はもともと文化的に多様で開放的であり、それは歴史的背景とも深く関係しているのだと思います。

生きる上で、また映画人として、恩師であるミッキー・チェン監督から学んだ一番大きなことは? 何度か繰り返されるミッキー先生の葉書の言葉は、実際に先生の言葉だったのですか?

 俊志先生……、ミッキーは私が人生で初めて出会った“お兄さん”です。私たちは12歳差で、私が14~15歳の時に、彼は26~27歳でした。このような大人が、どうして私たちのような少年と友達になってくれるのだろうと感じていました。
 成長するにつれ、彼が誰に対しても敬意を払っていることや、どんなことにも情熱と興味を持っているということが分かりました。そして彼から、自分自身に素直に生きること、また、認められるために発言することの大切さを学びました。

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 手紙の中で繰り返し出てくる言葉は、先生の実際の言葉ではありませんが、意味はほぼ同じです。観客の皆さんに伝えるために、このような脚本にしました。

 既視感と懐かしさに満ちた台湾の風景に、吉川晃司の「モニカ」をレスリー・チャンがリメイクした曲が流れ、昭和に青春時代を送った者は全く違和感のない郷愁に引き戻されることだろう。これは、ちょっと間抜けで情けなく、そして瑞々しくひたむきな、私たちの青春物語でもある。その私たちの記憶にもミッキー先生がいたら、その後の人生に困難が待ち受けていても、勇気を持って立ち向かっていけるだろうにと羨望さえかきたてられる、監督自身が体験した稀有な出会いが綴られている。その背景に、現在はダイバーシティ先進国である台湾の苦難と格闘の歴史も映し出され、瑞々しく無邪気なだけの青春物語にとどまらないダイナミズムに心突き動かされずにはいられない。また忘れられない一作が、台湾から生まれた。

 (取材:Maori Matsuura、写真:オフィシャル素材提供)

公開表記

 配給:ライツキューブ
 5月24日(金) 新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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