イベント・舞台挨拶

『幸せのイタリアーノ』公開記念トークイベント

©2020 WILDSIDE-VISION DISTRIBUTION

 登壇者:中嶋涼子(車いすインフルエンサー)

 イタリア映画祭2023でも注目を集めた話題作『幸せのイタリアーノ』(シネスイッチ銀座他にて全国順次公開中)。本作上映後、車いすインフルエンサーの中嶋涼子さんが登場し、作品を観終わったばかりの観客の温かい拍手に迎えられトークショーが始まった。
 小学校3年生9歳の時に突然足が原因不明で動かなくなり、以後車いす生活を送っている中嶋さんだが、映画とはとても深い縁があるという。自分のことが格好悪く、恥ずかしいという気持ちから、小学校3年生から引きこもってしまうようになったそうで、「そんな時に同級生が当時すごく流行っていた映画『タイタニック』を観に行こうと誘ってくれて、嫌々観に行ったんです。そこで私は主演のレオナルド・デカプリオに一目惚れをしてしまいました」と映画を好きになったきっかけを語った。結果的に『タイタニック』を計11回も観に行ったそうで、「11回も外出したのですから、私の引きこもりは改善されました。映画を観ることが生きがいとなり、将来的に映画の仕事に就きたいと考えるようになりました。18歳になった時にアメリカに渡り、8年ほど映画の勉強をしていました。日本に戻ってからは、“車いすインフルエンサー”という仕事をしてるのですが、今回、映画の舞台挨拶のお話を頂けてすごくうれしかったです」と、映画との深い絆を話してくれた。
 MCより“車椅子あるある”といった本作の場面について聞かれ、「ジャンニが車いすでいろんな物にぶつかるシーンは、すごく分かる。私も車いすに慣れていない頃、お店などに行けばいろいろな所に車いすをぶつけてしまい、謝っていました。ですので、ジャンニの家の中を見れば、車いす生活ではないんだなとすぐに分かります。キアラに気づかれたのもそういうところかなって、思いました」と、納得の解説。また印象的なシーンについても触れ、「キアラが車に乗って颯爽と出てくるシーン。車に乗ってると障がい者と解らないですよね。ジャンニは『あ、きれいな女性が来た』とすごい笑顔で見てるんですが、キアラが車いすに乗るのを見て『えっ』とがっかりするのが、“すごい分かる“と思いました。私が車いす生活になった当時、お母さんの助手席で車に乗っていると、外から見る人は私を障がい者と思っていないんだろうなと、緊張感は全くありません。しかし、車から乗り降りする際にはすごく嫌で、『あぁ、私は障がい者なんだ。これから私は障がい者として見られるんだな』と、すごく嫌でした」と当時を思い出したという。今は25年以上経ち、全く気にはならないというが、「キアラもきっと同じように乗り越えてきたんだろうなぁ」とキアラの気持ちについても触れ、同じ障がいを持っているキアラの気持ちがすごく分かり、出会ったシーンのジャンニの表情がおもしろかったと感想を述べた。車いすあるあるの最後に、車いすに乗るキアラの足の上にジャンニが乗るシーンに触れ、「あのシーンに憧れはあるのですが、私であればたぶん足が折れるわ!」って(笑)。障がい者の人は、足をまったく鍛えられないので、ものすごく弱いんですよね」と心配になりながら観ていたのだと会場の笑いを誘った。
 高校を卒業後アメリカに留学、南カリフォルニア大学映画学部を卒業した中嶋さん。帰国後は通訳・翻訳・映像編集の仕事を経て、現在は車いすインフルエンサーとして心のバリアフリーの発信活動をしている。
 アメリカの心のバリアフリーについてMCから聞かれ「アメリカのロサンゼルスに8年間ほど住んでいました。びっくりしたのは、アメリカでは道ですれ違う人たちが『ハーイ!』と気軽に笑顔で声をかけてくれるんです。目が合う度に『手伝おうか?』と、みんな笑顔で話してくれるんです」と、アメリカでの経験について触れ、「なぜ車いすなの?」と道端で聞いてくる人もいて、それもとても嬉しかったという。「日本では車いすで外出すると、車いすの人が珍しいのか、もしくは恥ずかしいのか、“手伝っていいのかな?” といった感じで。アメリカと違って消極的な方が多いなぁと思います。日本でもアメリカのように、気軽に声を掛け合える社会になったらいいなと思い、心のバリアフリーみたいなものを広めていけたらいいなと思い活動しています。アメリカでは車いすだけではなく、ほかの障がい者の方や、LGBTQの方、自分と違う人に対しての接し方がとても寛容で、日本との違いをすごく感じました。日本でもアメリカのようになればいいなと思います」と経験から感じた思いを語った。

 現在、講演会などでも、昔と今の違いや前向きになれたきっかけなどを多くの方に話しているという中嶋さん。「アメリカで感じたこと、車いすでどういったことができるかなど、いろいろな方に伝えていけたらなと思っています。日本もバリアフリーは大方整っていると感じます。駅ではエレベーターもあれば、スロープもある。しかし、もし例えそれがなかったとしても、本日、皆さんが優しく移動を手伝っていただいたり……と、そのことが“心のバリアフリー”なんだと私は思います。そこに行けないからやめようではなく、行くためにはどうしたらいいか考える。そういうことが心のバリアフリーであると私は思います」とメッセージを伝えた。
 最後には中嶋さんの恋愛事情にも触れる場面もあり、終始和やかで温かいトークイベントは幕を閉じた。

公開表記

 配給:オンリー・ハーツ
 シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順次公開中

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