イベント・舞台挨拶

遠藤麻衣子監督短編映画作品『自在』初日トークイベント

© 3 EYES FILMS, JST ERATO 稲見自在化身体プロジェクト

 登壇者:遠藤麻衣子監督、樋口泰人(映画評論家・爆音映画祭ディレクター)

 遠藤麻衣子監督の新作短編『自在』を含む特集上映「人機の情動/MAN MACHINE EMOTION」が8月3日(土)に初日を迎えた。
 東京大学教授・稲見昌彦率いる100人の研究者集団「稲見自在化身体プロジェクト」の研究者たちとのコラボレーションによる映画『自在』。物理空間とバーチャル空間の双方で、人が自己主体感を保ったままロボットやAIと一体になるという。そんな“身体拡張”の可能性を探る研究プロジェクトは5年間行われ、人々の未来を変える可能性を秘めた萌芽的な研究成果が多数生み出された。プロジェクトの最終年に、「ふだん科学に関心のない人たちにも、こうした研究に目を向けてほしい」との意図のもと作品のオファーを受けた遠藤監督が、若手研究者たちと対話を重ねながら創り上げたのが本作『自在』である。
 ロボットと一体化した少年は、能力の限界を広げるために新たな体の一部を作っている。彼は三つ目のメガネやロボットを通じ、同時に他のふたりの子どもと、現実世界の時空を超えて身体の体験や感覚の交感を重ねるというストーリーだ。

 初日には映画評論家・爆音映画祭ディレクターの樋口泰人をゲストに招き、遠藤監督とのトークが繰り広げられた。遠藤監督は「研究成果を人々に届けるという意味では、普通にドキュメンタリーを作る選択肢もあったと思うが、せっかく自分にこういう話がきたんだから、いつも通りの自分のやり方で作品を撮りたいと考えた。実際の機材を使いつつ、自分の想像の世界も入れた作品になった。私は分かりやすい説明をしないのでいわゆる科学映像には向いていない人間だけれど、稲見(昌彦)先生は制作中に口出しをせず、100%のクリエイティブの自由をくれました」と制作過程を振り返った。劇中に登場する実機の多くは、研究での使用を目的に、研究者たちが独自にデザインして生み出したもの。ただ主人公の一人である少年が装着している「三つ目のメガネ」は、この映画のためにデザイナーで東京大学特別教授の山中俊治先生が考案した。山中先生は科学者と共同でロボットビークルやアスリート用義足など先進的なデザインのプロトタイプを開発してきたデザインエンジニアであり、三つ目メガネのデザインでは想像上の機能性も話し合ったという。現在、そのメガネなど、映画内で紹介した実機の一部が21_21 DESIGN SIGHTの企画展「未来のかけら:科学とデザインの実験室」に展示されている。樋口は機械によって身体機能を拡張していく子どもたちの姿を見て、「身体は訓練や習慣によっていくらでも変わることができるという、妙な希望のようなものを受け取った」と言いつつ、一方で「俺自身は不自由な身体への愛おしさも感じている。この作品には最新のテクノロジーでもうまくいかない人間の身体の不自由さ、身動きのとれなさへのアプローチも描かれていて、そのもどかしい感じが永遠に続くだろうという時間の果てしなさも感じて、それが面白いと思った」と感想を述べた。これを受け遠藤監督は、「自在化身体プロジェクトは身体の話。研究がもたらすその身体の“感覚”を伝えられる映画を作りたいと思っていた」と語った。

特別企画「人機の情動/MAN MACHINE EMOTION」併映作品

『ハックト・サーキット』

© Courtesy of Deborah Stratman and LUX, London

 (原題:HACKED CIRCUIT、2014年、アメリカ、15分)

 監督:デボラ・ストラットマン

 フランシス・フォード・コッポラ監督、ジーン・ハックマン主演による映画『カンバセーション…盗聴…』(1974)の編集で、スタッフが映像に音を加えている。それを記録した短編で、映画制作のメカニズムを伝えると同時に、リアルとは何かを問いかけ、監視社会への問題をも提起。

『アーティフィシャル・ユーモア』

© Artificial Humors

 (原題:OS HUMORES ARTIFICIAIS、2016年、ポルトガル・ブラジル・スペイン、29分)

 監督:ガブリエル・アブランテス

 ブラジル先住民族の少女が恋する相手はキュートなAIロボット。やがて、都会でロボットはスタンダップコメディの人気者になってゆく。恋の行方は? ドキュメンタリー的アプローチから、マット・グロッソ州のヤワラピティ族やカマユラ族の村でも撮影された短編フィクション。

© Artificial Humors

『ネプチューン・フロスト』

© NEPTUNE FROST

 (原題:NEPTUNE FROST、2021年、ルワンダ・アメリカ、105分)

 監督:ソウル・ウィリアムズ、アニシア・ユゼイマン
 音楽:ソウル・ウィリアムズ

 アフリカ・ブルンジ共和国の電子廃棄物キャンプでは、独裁者が奴隷労働を強いていた。宇宙の力を通じて脱出したインターセックスの主人公が、鉱山労働者や反独裁ハッカー集団とともに特殊な回路を……。共同監督のS・ウィリアムズが作曲も手がけたアフロフューチャリスティックなSFパンク・ミュージカル。

© NEPTUNE FROST

イベントスケジュール

公開表記

 配給:3 EYES FILMS
 8月3日(土)~16(金) シアター・イメージフォーラムにて2週間限定上映!

(オフィシャル素材提供)

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