イベント・舞台挨拶

第96回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞ノミネート『エターナルメモリー』トーク付き試写会

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 登壇者:堀 潤(ジャーナリスト)

 今年の第96回アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、2023年サンダンス映画祭ワールド・ドキュメンタリー部門審査員大賞を受賞するなど高い評価を受け、観客たちに大きな感動を与えた“真実の愛の物語”、『エターナルメモリー』が、8月23日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開となる。このたび公開に先駆けて、8月19日(月)にジャーナリストの堀潤さんのトーク付き試写会が開催された。

観客が映画の余韻に浸る中、ジャーナリスト堀 潤さんがイベントに登場
ジャーナリストだったアウグストに想いを馳せる堀さん

 『エターナルメモリー』上映後、場内は温かい拍手に包まれた。余韻冷めやらぬ中、ジャーナリストの堀 潤さんのトークイベントが始まった。本作を見た堀さんは「取材者にとってこれまで積み上げた事実が消えてしまうことはどんな辛いことだろうか。ジャーナリストの仕事は単に目の前の事象を解き明かすだけでなく、歴史的な経過、事実や記録にもとづいて今を分析し将来に向けた一手を伝えていくもの。権力と闘い、メディアの中で何が起きていたのかを考え続けていた人にとって、記憶が消えていくことがどれだけ恐怖だったかと思う。同じ仕事をしている者として身につまされた」と、ジャーナリストだったアウグストに想いを馳せた。さらに「本人の記憶が消えていく中で、変わりゆくチリという国家のあり方もしっかりとドキュメンタリーの記録として残すという監督と妻のパウリナさんの思いが感じられた」と感想を述べた。

2025年には高齢者の約5人に1人が認知症
日本では映画とは対極のような状況に患者が置かれている

 堀さんは、自身がキャスターを務める報道情報番組「堀潤モーニングFLAG」でも、昨年11月に認知症患者の社会参加についてご紹介するなど、認知症に関する報道を積極的に行っており、「推計では2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると言われている。映画で描かれているような温かいケアではなくて、日本の格差社会の中で認知症患者や家族を隅っこに追いやってしまうような現状がある」と話す。
 堀さんが認知症患者への措置として問題だと強調するのが「医療保護入院制度」だ。これは、医療的な措置と保護が必要であるにもかかわらず、本人が状況を正しく把握できない場合は、本人の同意なしで精神病棟等に入院させるという制度。「今までは本人や家族の同意が必要だったが、今年の春に行われた規制緩和により本人や家族の同意も必要なくなった。というのも独居のお年寄りが増えてきて、彼らが認知症になったときに、自治体の権限で医療保護入院を実施できるようになった。仕方がないということも言えるが、国際社会から見るとこれは人権侵害と指摘されている。本来は社会や地域で患者や家族を支援していくべきだが、都市部では難しく、実際は認知症患者に対して、この映画とは対極のような措置がなされている」と問題提起した。また、「福祉に関する大型施設は区外・郊外に集中している。辛い言い方だが、現代の姥捨山といえる。快適な都市空間から認知症や精神疾患を煩う方々を排除するという構造がある。地域の秩序を乱す人々は排除してほしいという人たちがいる。私も含めて、将来認知症になったときに行き場がなくなる。2040年には高齢者の約46%が認知症になるという推計があり、ここ10〜20年の間に、近しい方々やご自分が当事者になる可能性がある。危機はすぐ目の前にある」と警鐘を鳴らした。

職場にアルツハイマーの夫を連れていく妻、それを受け入れる人々
そのような社会をつくるために必要なこととは?

 『エターナルメモリー』の中では妻パウリナが自分の職場である劇場にアルツハイマーである夫アウグストを連れていくシーンが出てくる。まわりの人びともそれを温かく受け入れている姿が印象的だ。近親者のみが介護をするのではなく社会全体が支え合うために必要なことを質問された堀さんは2016年に起きたやまゆり園事件を例に挙げながら、「一人ひとりはそんなつもりはなくても、社会構造として外に追いやってしまうことに気づいていながらも、偏見に同意してしまっている。分断は誰かが引き起こすのではなく、わたし自身が関わっているという視点を持つことが大切。でないと、翻って大切な人を傷つけてしまう社会になってしまう」と、当事者の立場に立つことの重要性を語った。さらに「なかなか議論することは難しい。社会を変えていくためにはメディアが媒介役になることが大切」と語り、新たな試みを始めていると明かした。「番組の中で、ある自治体とともに話し合いの場所づくりをおこなっていく予定。どこに解決策があるのか、何からできるのか? 伝えるだけではなく、みんなと話し合う場をつくっていく。どこかの誰かではなく、わたしたち自身の問題だから」と語った。最後にチリから届いたパウリナさんのメッセージ動画を見た堀さんは「アルツハイマーという辛い状況にはなったが、そのことで、生きた証を映画という形にして、世界中の多くの方々に伝播できたということに希望を感じる。大切な映画を制作してくださったので、皆さんにもご家族やご友人にシェアしてほしいと思う」と締め括って、イベントは終了した。

 上映後に行われたアンケートでは「夫婦の愛が素晴らしかった!」「観ていて愛おしい気持ちになりました」「愛に満ち溢れていて温かなドキュメンタリー」など絶賛の声があふれ、満足度は100%だった《※8/20(火)13:00集計時点》。
 『エターナルメモリー』は、いよいよ今週8月23日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開となる。

公開表記

 配給:シンカ
 今夏8/23(金)、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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