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ついに来た、不快濃度99%の大怪作「奇想天外映画祭2024」開催決定!

 2019年より開催されて以来、この世の映画好事家を驚かせる作品を次々と上映してきた「奇想天外映画祭」の第6回目が新宿K’s cinemaにて2024年9月14日(土)~10月4日(金)の3週間、開催されることが決定した! 今回の目玉作品は、カルト・ヴァイオレンスの傑作『ワイルド・ボーイ』、そして欲望と糞尿にまみれたマルコ・フェレーリ監督の究極の作品『最後の晩餐』となる。特別上映としては「ジョセフ・フオン・スタンバーグ」生誕130年記念として、マレーネ・ディートリッヒ主演による『間諜X27』、『スペイン狂想曲』の2本を35mmフィルム上映する。その他、数々の珍作、奇作が例年にも増して届いた。

柳下毅一郎(映画評論家)

 奇想天外映画祭は映画史の行間からすべり落ちてしまった映画たちを拾いあげる。傑作と名作、ヒット作が映画史を作りあげていくとすれば、そこにおさまらなかった映画たちはなんなのだろう?
 名作として映画史に名を残すことができなかった映画は、すべて忘れ去られるべき駄作となってしまうのだろうか? 出来の良し悪しだけで判断するなら、いびつに歪んだ映画は間違いなく駄目なほうに判定されるのだろう。だが、規格からはずれ、評価軸からはずれた映画というのはそれだけでひとつの価値だと言える。万人向きからは程遠かろうと、たったひとつでも、並外れて特別なポイントがあれば、それは記憶されるに足るだろう。映画の正史に残ることはないかもしれないが、その奇妙さによって忘れられない存在となった映画。それはミッドナイト・ムービーと、あるいはカルト映画としてひそかに伝えられてゆくだけなのかもしれない。いわば映画の伏流、地下水脈としてひそやかに流れてゆく。それが突然噴出したのが奇想天外映画祭なのだと言えようか。
 たとえば『ワイルド・ボーイ』はこれ一本しか監督作品のないロバート・マーティン・キャロルによる砂漠シュルレアリスム暴力映画とでも言うべきワン・アンド・オンリーの怪作だ。ニューメキシコの田舎町を暴力で支配するボスの妻を女装したデヴィッド・キャラダインが演じる。キャラダインは女装者ではなく完全に女性として演じており、不思議な哀感は、彼の最高傑作とする声もあるほどだ。
 『デスゲーム/ジェシカの逆襲』は密猟者と若い女性との戦いを描くが、復讐物というジャンルにおさまりが悪いのは、密猟者たちが妙に狂騒的で、『マッドマックス』風味を感じさせてくれるからかもしれない。ハリウッドから遠く離れたオーストラリア大陸は、ハリウッド的映画文法にとらわれない奇想天外映画の宝庫であり、今回はピーター・ウイアーの『ザ・ラスト・ウェーヴ』が上映される。サスペンス・ミステリーを装いながら、現代人が捨てたつもりでいる霊性に復讐されるさまを描く。霊性の復活をホラーとして描くのが出色である。オーストラリア映画ではマイルス・デイヴィスが出演するジャズ・ドラマ『ディンゴ』も注目だ。
 マルコ・フェレーリの『最後の晩餐』は生きることに絶望した四人の男性が人間の欲望の限りを尽くして死んでいこうと示し合わせ、豪華極まりない「最後の晩餐」を催すという筋立てで、ブルジョワの醜さがこれでもかと執拗に追求される。ほどよい「皮肉」に止めず、徹底して掘り下げたがゆえにこれは名作ではなく怪作扱いされることになったのだが、それこそがフェレーリの素晴らしさである。
 他にも見るべき映画は数多い。奇想天外は玉石混交だ。何が出てくるかわからないから奇想天外なのであり、その中から「玉」を見つけるのはあなた自身の仕事なのだ。

「奇想天外映画祭2024」開催概要

 場所:新宿K’s cinema 新宿区新宿3丁目35−13 SHOWAKANビル3階
 日時:2024年9月14日(土)~10月4日(金)
 配給:アダンソニア
 宣伝・配給協力:ブライトホース・フィルム
 協力:メダリオンメディア、ブロードウェイ
 協力:仙元浩平
 デザイン:千葉健太郎

上映作品

『ワイルド・ボーイ』

ついにスクリーンに現れた究極の“ 奇想天外風大怪作” 劇場未公開作品

 (原題:Sonny Boy│1989│アメリカ=イタリア│113分│カラー│BD)

 監督:ロバート・マーテイン・キャロル
 出演:デヴィッド・キャラダイン、ポール・L・スミス、ブラッド・ドゥーリフ

 ニューメキシコ州の寂れた田舎町。この街は極悪非道なスルーに支配されていた。ある日赤ん坊が乗った車がもちこまれる。ソニーと名つけられた赤ん坊は女装したソニーの妻パールによって育てられていくが、スルーはソニーをシリアル・キラーにしようと異様な訓練、“舌を切り言葉を奪う”などを施していく中で悪行を実践させていくのだが……。サイコキラーに牛耳られた町はいかにして解放されていくのか。衝撃のラスト・シーンまで、アクの強い怪優たちの怪演で見せるカルト・ヴァイオレンス。

『最後の晩餐』

快楽地獄の果てにいきついた究極のScatrology Film

 (原題:La grande bouffe│1973│フランス=イタリア│130分│カラー│BD)

 監督:マルコ・フェレーリ
 出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ウーゴ・トニャッツイ、ミシェル・ピッコリ、フィリップ・ノワレ

 パリの古風な大邸宅に4人のエピキュリアンが集まった。俳優のミシェル、料理家のウーゴ、裁判官のフィリップそしてパイロットのマルチェロだ、彼らはこの日からある共通の目的を遂行するために邸宅に留まることを誓い合った仲間だった……。生き続けることに絶望した4人の中年男たちが“食欲”と”性欲”を極めた果てに死んでいくことを自らに課して豪邸で夜毎<最後の晩餐>を繰り広げながら一人ずつ念願を叶えていく……。
 退廃した現代文明への強烈な風刺が全編を貫く奇才マルコ・フェレーリの映画史上に輝く奇傑作。
 ※ カンヌ国際映画祭 1973年 国際映画批評家連盟賞

『デリンジャー』

 (原題:Dillinger│1973│アメリカ│107分│カラー│BD)

 監督・脚本:ジョン・ミリアス
 出演:ウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、ミシェル・フィリップス

 『ダーティハリー』『地獄の黙示録』などの作品の脚本家として評価を得ていたジョン・ミリアスの監督デビュー作。1930年代アメリカ中西部を荒らし回った伝説のギャング、ジョン・デリンジャーの半生と当時の風情を大胆にリアルに描いた。そのミリアスの演出は高く評価され、以降の『ビッグ・ウェンズデー』などに引き継がれていく。

『深紅の愛/ディープ・クリムゾン』

 (原題:Profundo carmesí│1996│メキシコ│114分│カラー│BD)

 監督:アルトゥーロ・リプスタイン
 出演:レヒナ・オロスコ、ダニエル・ヒメネス

 ブニュエル仕込みの”黒い魂”で描いた、ユーモアと、残酷と、優しさのメロドラマ。メキシコ映画界の巨人A・リプスタインが描いたメキシコ版もう一つの「ハネムーン・キラーズ」。
 ※ ヴェネチア国際映画祭 1996年 脚本、撮影、音楽賞受賞

『セコーカス・セブン』

 (原題:Return of the Secaucus Seven│1980│アメリカ│106分│カラー│35mm)

 監督・脚本・編集:ジョン・セイルズ
 出演:ブルース・マクドナルド、マギー・レンジ

 60年代に反戦デモの参加した7人が10年後のあるウィークエンドに再会した。
 撮影期間28日、制作費6万ドルで製作されたこのセイルズ・デビュー作は“60年代をテーマにした最初の傑出した作品”と評価された。

『デスゲーム/ジェシカの逆襲』

 (原題:Fair Game│1986│オーストラリア│83分│カラー│BD)

 監督:マリオ・アントレアッシオ
 出演:カサンドラ・デラニー

 舞台はオーストラリア。 広大な動物保護区に住むジェシカはある日3人の密猟者に襲われる。その後も彼らの執拗な嫌がらせを受けるジェシカだったが愛馬まで殺されたことで、彼女の怒りは頂点に達していく……。

1950~60年代ラテン・アメリカの嵐<ルイス・ブニュエル><グラウベル・ローシャ>

『スサーナ』

 (原題:Susana│1950│メキシコ│87分│モノクロ│BD)

 監督:ルイス・ブニュエル
 出演:ロジタ・クィンターナ

 少年院を脱走してとある裕福な農家に転がり込んだ“天性の悪女”スサーナが家族を崩壊させていくシュールなブニュエル流ノワール。

『バラベント』

 (原題:Barravento│1962│ブラジル│79分│モノクロ│BD)

 監督:グラウベル・ローシャ
 出演:アントニオ・ピタンガ

 ブラジル北東部バイーアの漁村に生きる土着の人々を描いたシネマ・ノヴォの旗手グラウベル・ローシャの長編デビュー作。

特別上映:「ジョセフ・フオン・スタンバーグ」生誕130年記念35mmフィルム上映 マレーネ・ディートリッヒとの7本のコンビ作品(『嘆きの天使』『モロッコ』上海特急』など)でハリウッド映画史にその名を刻んだスタンバーグの代表作2本の上映

『間諜X27』

 (原題:Dishonored│1931│アメリカ│91分│モノクロ)

 出演:マレーネ・ディートリッヒ、ビクター•マクラグレン

 第一次大戦中の1915年のオーストリア・ウイーン。“X27号”の名で暗躍したスパイをディートリッヒが演じきった秀作、その類いまれな美貌が全編に溢れる。

『スペイン狂想曲』

 (原題:The Devil Is a Woman│1934│アメリカ│83分│モノクロ)

 出演:マレーネ・ディートリッヒ、ライオネル・アトウィル

 カーニバルに沸くスペイン、アンダルシア。政治亡命者のアントニオが、タバコ工場の娘コンチャを見染めたことから巻き起こる官能ロマンス。

『ザ・ラスト・ウェーブ』

 (原題:The Last Wave│1977│オーストラリア│105分│カラー│BD)

 監督:ピーター・ウィアー
 出演:リチャード・チェンバレン

 オーストラリア出身のピーター・ウィアー監督が『ピクニックatハンギング・ロック』(75)に続いて撮った、先住民アボリジニの持つ神秘性をテーマに描く超常的伝奇ホラー・サスペンス。世界が破滅する未来を見ることになる弁護士役に『タワーリング・インフェルノ』(74)、『将軍 SHOGUN』(80)などの米国の名優リチャード・チェンバレン。

『チャタレイ夫人の恋人』

 (原題:Lady Chatterley│1993│アメリカ│115分│カラー│BD)
 監督:ケン・ラッセル
 出演:ジョエリー・リチャードソン

 戦争で下半身不随になり不能と化した夫(ジェームズ・ウィルビー)を持ち、満たされない日々を続けていたコニー(ミランダ・リチャードソン)は、やがて森番の男メラーズ(ショーン・ビーン)と関係を持ってしまう。文豪D・H・ロレンスの原作を奇才ケン・ラッセルが大胆な映像と独自の視点で描いた官能作。

『ディンゴ』

 (原題:DINGO│1991│オーストラリア│110分│カラー│BD)

 監督:ロルフ・デ・ヒーア
 出演:コリン・フリールズ、マイルス・デイヴィス

 伝説のミュージシャンに憧れ、夢を追いつづける青年の姿を描いたハート・ウォーミングなジャズ映画。91年に死去したジャズ・トランペットの帝王、マイルス・デイヴィスがその死の直前に出演した作品で、65年の生涯の中で唯一、本格的な演技を披露した1編。

「奇想天外映画祭2023」アンコール上映

『デコーダー』

© Klaus Maeck

 (原題:Decoder│1984│ドイツ│87分│カラー│DCP)

 監督:ムシャ
 出演:F・M・アインハイト、ビル・ライス、クリスティーヌ・F、W・バロウズ

 ドイツのアーテイスト、ムシャが、バロウズによるビートニク小説のカットアップ手法を踏襲し監督したSFジャーマン奇珍作。舞台始まりはハンバーガー・ショップ。主人公F・Mがカットアップして製作したテープをハンバーガー・ショップで再生し、来店客に聞かせているうちに、F・Mは決定的なノイズを入手し最終的なテープを完成させ無数のテープをばらまいていく。やがてノイズで神経に異変を起こした人々が暴徒化していき、事態は予期せぬ方向に突き進んでいく……。ノイズで人々を洗脳する青年FMをノイバウテンのFMアインハイトが演じるほか、バロウズも出演している。デイヴ・ホール、ジェネシス・P・オリッジ、マット・ジョンソン(ザ・ザ)など、80sを代表するアーテイスト/バンドが音楽を担当している。

(オフィシャル素材提供)

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