インタビュー映画祭・特別上映

“勇気をくれる伝説の人間記録”河邑厚徳監督 オフィシャル・インタビュー

©2012年 天のしずく製作委員会 ©ピクチャーズネットワーク株式会社

 長寿の伝説の偉人たちを撮り続けてきた河邑厚徳監督の、料理研究家・辰巳芳子(現在99歳)を追った『天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ』(12)、日本初の女性報道写真家・笹本恒子(享年:107歳)とジャーナリスト・むのたけじ(享年:101歳)を追った『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』(17)、俳人・金子兜太(享年:98歳)を追った『天地悠々 兜太・俳句の一本道』(19)の3作のドキュメンタリー映画が一度に観られる特集上映“勇気をくれる伝説の人間記録”は、9月10日(火)〜9月23日(月・祝)に東京都写真美術館ホールにて上映される。《※9/17(火)を除く》

 『天のしずく』は、9月14日(土)13:20の回上映後に、料理研究家の対馬千賀子氏&大豆100粒運動を支える会理事の種子島幸氏、9月15日(日)10:30の回上映後に、患者さんや医療従者のために辰巳芳子のスープを作っている“いのちのスープ”の実践者であり、映画にも登場する緩和ケア医の田村祐樹氏、9月16日(月・祝)13:20の回上映後に、辰巳が監修した絵本「まほうのおまめ だいずのたび」の作者である松本雪野氏(絵本作家・イラストレーター)と担当編集者である渡辺彰子氏及び藤田淑子氏のゲスト登壇が決定している。

 この度、3作を監督した河邑厚徳監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

3作のドキュメンタリー映画が、一度に観られる特集上映“勇気をくれる伝説の人間記録”が開催されますが、この3作の特集上映になった理由を教えてください。

 長寿時代をどう生きるかというのは、今皆のテーマになっています。子どもの時は、伝記などで、自分がどんな社会人になりたいかというモデルとなる本があったけれど、年を取ると、そういうものはあまりないです。この4人は、それぞれが100歳まで自分の命を精一杯活かして生き抜いた人たちなので、これから老後をどう生きるか生き方について大きなヒントになり、モデルになると思います。

3作の被写体の4人は、長寿以外に共通点がありますか?

 皆日本の戦争を体験してきた方たちです。この4人は、インテリジェンスがあり、個別のことだけでなくて、戦争の本質的なことまで見てきた方たちで、貴重です。戦争を知っている者の社会的責任を感じていたというか、「ちゃんと語っていかないと、再びこの国は戦争をする国になるんではないか」と、語れることはあらゆるチャンスに語っていきたいと思い続けてきた方々です。

『天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ』で特に注目してほしい点を教えてください。

 注目してほしいのは、辰巳さんの言葉です。実に美しい日本語です。品のある豊かな言葉を持っている方です。SNSで品のない貧しい言葉が溢れている中、辰巳さんの言葉を聞くと、「日本語はこんなに美しいんだ。いろんなことが表現できるんだ」と分かってくると思います。

岡山県長島のハンセン病患者の宮﨑かづゑさんが「テレビで見た辰巳さんのスープを癌闘病中の親友に作ってあげたことは、死期が迫る方に唯一してあげることができたことだ」という素晴らしいエピソードが紹介されていますが、辰巳さんと宮﨑さんのお二人が初めて会うところを撮影するにあたって、どのようなことを心がけましたか?

 宮﨑さんが綺麗な場所でお会いしたいとのことで、瀬戸内海で長島が見える場所を提案してくださいました。初めて会う瞬間というのは1回しかなく、リハーサルもできないので、すぐに二人には会わないでいただいて、カメラでどう撮影するか決めてから辰巳さんに宮﨑さんに会いに来ていただきました。

『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』で特に注目してほしい点を教えてください。

 笹本さんはカメラの前でもあれだけ笑顔が美しい。それはどこから来るのかに注目してほしいです。むのさんについて言うと、僕は骨董品みたいな感じがしたんです。使い古して古びて見えるけれど、古びているから新たな良さが出てくる骨董品です。

むのさんが2016年に「憲法集会」で車椅子で名演説を行ったシーンは、見どころですが、撮影していて、どう感じていましたか?

 自分が言いたいことを命懸けでしゃべっている感じがして、感動しました。どんなに年を取っても、年齢を超える「伝えたい」という気持ちがあんなに出てくるんだなと、人が持っている力を感じました。

むのさんが晩年、意識不明になって意識が戻った際に、それでもまだ人間の命の重さと軽さと責任能力を問い続けていた姿も映像に収まっていますが、最期まで追ったことで感じたことなどはありますか?

 死の瞬間を撮ったわけではないですが、入院されてからもずっと撮影に通いました。むのさんは、ご家族のご意向もあって、自宅に帰ったんです。どこで自分が最期を迎えるのかが大事というのは、最後自宅に帰ったところまで撮らないと分からなかったと思います。

俳人・金子兜太さんについての『天地悠々 兜太・俳句の一本道』で特に注目してほしい点を教えてください。

 巨木のような生き方、こういう骨太の日本人もいるんだというのには励まされます。ご本人の強い意志があるからこそ、あのお年で、背中が曲がらないで堂々と胸を張って歩いているんだなと思いました。

最近はTBS系の「プレバト!!」などで、俳句がさらに身近なものになっていますが、金子兜太さんが他の俳人と違った点はどこにありますか?

 金子さんの俳句は、主流の、四季や花を詠ったりする花鳥諷詠でなく、社会的なテーマを詠っていました。戦争体験もあって、社会や組織というものも俳句の題材にしたところが、金子さんが特別なところだと思います。

『天のしずく』の朗読は、生誕九十年記念映画『九十歳。何がめでたい』が公開となった草笛光子さん、『天のしずく』と『笑う101歳×2』の語りは、俳優・司会で活躍するほか、私生活では妻、6人の子ども、父、義母の大家族の夕食担当として料理の腕をふるっているという谷原章介さん、『天地悠々』の朗読は書家でもある俳優の本田博太郎さん、語りはアナウンサーの山根基世さんが担当していますが、それぞれにお願いした理由を教えてください。

 『天のしずく』は、辰巳さんの日本語が美しいので、ある程度の年で、表現力がある方に、手紙を読むような感じで朗読して欲しかったんです。手紙は相手に伝わっていくので、草笛光子さんには、そういうイメージで頼みました。
 谷原章介さんは、なんでもできる方で、普通のナレーターや俳優とは違う、親しみもあるけれど、深みもあるし、優しさもある。いろんなものを持っていて、いいなと思いました。
 『天地悠々』は、金子兜太さんの骨太の俳句をどう読むかが問われました。本田博太郎さんに朗読をお願いした理由は、あの声の質だとか、俳優としての力量です。本田さんはあの俳句を読むことをとても喜んでいました。
 今ナレーターとしては、山根基世さんのナレーションは一つのモデルになっていて、ほとんどの女性のナレーションが、山根さんのイメージで読んでいると思います。ナレーションの神です。

読者にメッセージをお願いします。

 これから生きていく上の、なんらかのヒントがあります。被写体の4人はそれぞれが違うジャンルで仕事をしているので、お時間があったら、3本観ていただけると、考えることがあると思います。

『天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ』

©2012年 天のしずく製作委員会

 (2012年、日本、上映時間:113分)

 監督・脚本:河邑厚徳
 出演:辰巳芳子
 朗読:草笛光子
 語り:谷原章介

食べものを用意することは、いのちへの祝福

 嚥下障がいでとろみのあるスープのみ喉を通った父に作っていたスープを、父の死の直後からは訪問看護のボランティアで隣人に配り、そしてスープ教室で伝授してきた料理研究家・辰巳芳子。1口2口がなくなると、数日で天国に逝かれる患者を目の当たりにしてきた医師は、病院の緩和ケア病棟でスープを配り、「辰巳さんのスープは素材を感じるので、引き出しが開いて思い出が出てくる」と1口の大切さを実感。ある日、辰巳の元に、親友が癌になり、「何かしてあげられることはないか」とスープを作ったというハンセン病の女性から手紙が届き……。

 公式X:https://X.com/tennoshizuku(外部サイト)
 公式Facebook:https://www.facebook.com/tennoshizuku(外部サイト)

特集上映“勇気をくれる伝説の人間記録”

 9月10日(火)〜9月23日(月・祝) 東京都写真美術館ホールにて公開

 主催:ルミエール・プラス
 協力:環境テレビトラスト、ピクチャーズネットワーク

 公式X:https://x.com/lumiere_plus(外部サイト)
 公式Facebook:https://www.facebook.com/lumiere.plus.jpn(外部サイト)

 当日券(税込):一般 1,800円、大・専門・高校生1,500円、中学生以下(3歳〜)、シニア(60歳以上)、障害者手帳をお持ちの方(介護者2名まで) 1,200円
 リピーター割:本特集上映いずれかの座席指定券半券のご提示で、本特集上映の他の作品を1,000円でご覧いただけます。

(オフィシャル素材提供)

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