登壇者:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝、黒沢 清監督
第81回ヴェネチア国際映画祭、第49回トロント国際映画祭など各国の映画祭で上映され、第97回米国アカデミー賞®国際長編映画賞の日本代表作品にも選出された黒沢 清監督の最新作『Cloud クラウド』のジャパンプレミアが9月10日(火)、東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催。トロントから凱旋したばかりの黒沢監督をはじめ、菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝が舞台挨拶に登壇した。
ヴェネチア、トロントを巡ってきた黒沢監督は帰国したばかりの時差ボケの状態で登壇。さっそく、各国の映画祭での現地の観客の反応について尋ねると「皆さん、熱心に観ていただけたと思います。映画祭って結構、途中で出て行っちゃう人も多いんですが、ヴェネチアでもトロントでも、誰も出て行かなかったです。ヴェネチアでは皆さん、固唾を飲んで見守るような感じで、トロントでは、決して狙っておかしいものをつくったわけではないんですが、『ここで笑うか?』と思うところで笑いが起きていました」と上々の反応だったと明かす。
主演の菅田は監督の報告に「嬉しいですね」とホッとした表情を見せ「それを語っている監督が嬉しそうで嬉しいです」と笑顔を見せる。
ちなみに、本日登壇した俳優陣は、全員が黒沢組初参加。菅田は、黒沢組の現場の様子について「毎日、楽しかったです」と語り、さらに「スタッフさんがみんなイキイキされている印象で、助監督さんがエキストラの方の首の振り方を直しに行ったりして、黒沢監督は『どっちでもいいんだけどなぁ……』と言いつつ、スタッフさんが真剣に頑張っている現場というのは見たことがなかったし、楽しそうでした」と雰囲気の良さを明かす。
古川は「カメラワークと連動してお芝居をするシーンも多くて、キャストだけでなくスタッフさんとも息を合わせてつくっていく感じで、緊張感がありました」と述懐。
主要キャストの中で最年少の奥平は「正直、最初はバキバキに緊張していました(笑)。僕がクランクインして3日目くらいに最後のシーンの撮影があったんですけど、緊張し過ぎて、撮影が終わった後に録音部さんから『心臓バクバクだったね』と言われるくらいでした」とふり返った。ちなみに、奥平は、ある大事なシーンに関して「前日に、監督から『(奥平さんが演じる)佐野は、菅田さんを超えてほしい』と言われて『うわっ! ヤバいな……』と。メチャクチャ頑張ろうと思いました」と明かしたが、黒沢監督は「そんなこと言いましたっけ……?」と忘れてしまったよう。「鮮明に覚えてますよ!」という奥平の言葉に会場は笑いに包まれていた。
岡山は「最初に台本をいただいた時から興味深いお話で、メチャクチャ笑えてきちゃいそうな、メチャメチャ怖いような……両極端のはざまを行ったり来たりする印象で、いろんな作品で見ている俳優さんたちによって、現場でそれが再現されて立ち上がっていくのを見て、本当に面白い現場だなとワクワクする日々でした」と充実した表情を見せる。
荒川は「出来上がりを見たら、照明さんやカメラワーク、1個1個のこだわりがすごいなと感じました。鉄砲も出てくるんですけど、本物に見えるような映し方ですごいなと思いました」と感嘆。
窪田も「どこかに魔物が潜んでいるような感覚が、いつもお芝居していてありました」と独特の言葉で表現。集団でのあるシーンについて「ある共通認識だけで集まっている集団で、そこに結託はなくて、みんな、まとまってないけど、まとまっている――バラバラで自由だけど、ある一個の目的を持っているだけで行動に移すという。言葉で語られないんだけど、モゾモゾするような感覚がリアルで、なかなか貴重な体験でした」と楽しそうに語ってくれた。
黒沢監督は、素晴らしい演技を見せてくれたキャスト陣への感謝を口にしつつ「強烈に印象に残っていること」として「TVや映画では物静かな印象の窪田さんが、実はこんなに陽気で面白く、楽しい人なのかと(笑)。お芝居では悲惨で残酷だったりするんですけど、窪田さんがいるだけで、カットがかかった瞬間に楽しい現場になって、どの現場にも窪田さんがいてほしいなと思いました」と意外なエピソードを告白。この言葉には誰より窪田自身が驚いた様子で「明るかったですか? ホントですか?」と照れくさそうな表情を見せていた。
なお、本作はホラー作品の中でも心霊などではなく、人の所業が怖い――“ヒトコワ系”とされているが、菅田さんは本作にまつわる“ヒトコワ”エピソードを尋ねられると「この映画の(関係者向けの)試写会に荒川さんが筒状のものを持っていらっしゃって、それを人に配っていたので、僕も2つもらって、家に帰って開けてみたら、この映画にも出ている赤堀雅秋さんのカレンダーでした(笑)。めくれども、めくれども赤堀さんが出てくるというカレンダーで、メチャクチャ怖かったです」と語り、会場は再び笑いに包まれていた。
この日は、映画のキャッチコピー「気がつけば標的」にちなんで、「気がつけば○○」を登壇陣がフリップで発表! 黒沢監督は「最年長」と書かれたフリップを見せ「ハッと気づくと現場で一番年上になっていました。電車に乗っていても、シルバーシートが空いてて『誰か座らないのかな』と思ってハッと振り向くと、僕が一番年長だったり……」と明かす。
窪田は、先日、インスタグラムに投稿した、コリをとるためのハリ治療の写真がニュースで取り上げられたことに触れつつ「気がつけば“スピ認定”」と語り「ハリをいっぱい打った写真を上げただけで『あいつはスピリチュアルに行ってしまった』とか『オカルトのやべぇヤツ』認定されて、気づいたら標的になっていました。SNS怖いです」と苦笑する。
荒川は「一人」と書かれたフリップを手に「友達4人くらいでご飯に行って『もう一軒行こうか』と言っても、一人帰って、また一人減り……気づいたら『あれ? 一人?』となっていました」と明かし笑いを誘う。
岡山の回答は「気がつけば“迷子”」。ランニングが好きで地方に赴いた際も走ることがあるという岡山だが、夜中に走っているうちに「迷子になっちゃって……。走り続けたらコンビニがあって、店員さんに(道を)聞いて帰ったら、3時間くらい経っていて、足の爪が紫になっていて、めっちゃ痩せました(苦笑)。散歩に出たら迷子になってタクシーで帰ったり、ちょくちょくあります……」と苦難を明かした。
「耳かき」とフリップに書いた奥平は、耳かきが好きすぎて、気づいたら耳の掃除をしているとのこと。「やり過ぎるとダメって聞くんですけど、好きなものだからしょうがないかと……。映画やドラマを見ていて、気づいたら耳かきをしています」と意外な趣味(?)を明かす。
古川は「気づいたら“標的”」と本作のコピーそのままの回答を発表したが、古川さんを狙うのは、カワイイ愛猫! 「猫にドアで待ち伏せされて、首や背中に引っかき傷が……。高いところから肩に乗るのが好きで、いつどこから猫が降ってくるか分からないです」と愛らしいエピソードを明かしてくれた。
そして、大トリの菅田の答えは「緊張」。菅田は、本作の撮影に際して、自身も気づかないほど、緊張していたそうで「クランクインの前日にピーラーでサツマイモをむいていたら、指の肉ごとバーッといっちゃって……(苦笑)。『明日、インなのにどうしよう?』と思ってたら、今度は飯を食いながら奥歯が割れました……。すごい噛みしめていたんでしょうね。現場中に一度、ヒゲを半分、落してしまったり……。(撮影のためにひげの長さを調整する)アジャスターを着けて剃っていたはずが、ある日、それを着け忘れて剃ってしまい……。俺、こんなに緊張してたんだなと」とふり返った。
最後に登壇陣を代表して、菅田がこれから日本で初めて本作を鑑賞する観客に向けて「観る前にためになるのかならないのかよく分かりませんが(苦笑)、こうしてお会いできてよかったです。映画を楽しんでください!」と力強く呼びかけ、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
『Cloud クラウド』は9月27日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
公開表記
配給:東京テアトル 日活
9月27日(金)、TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)