登壇者:磯村勇斗、岸井ゆきの、福山翔大、霧島れいか、染谷将太、滝藤賢一、豊原功補、内山拓也監督
映画『若き見知らぬ者たち』完成披露上映舞台挨拶が都内で行われ、主演の磯村勇斗、共演の岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、霧島れいか、滝藤賢一、豊原功補とメガホンを取った内山拓也監督が出席して、作品についてクロストークを行った。
本作は、1920年に『佐々木、イン、マイマイン』で同年の新人賞を総なめした、内山監督の商業長編デビュー作。実際の事件からインスパイアされた物語で内山監督が原作、脚本も担当している。亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働く風間彩人(磯村)が主人公。1人の青年が、自分の中にある“最後の砦”と向き合う生きさまが苛烈に描かれる。
磯村は「自分の置かれている環境を考えると、家庭もそうですけど、呼吸するだけで精いっぱいの役でした」と苦労した役作りを振り返った。また、磯村はオファーを受けた理由について「内山監督の作家性に惹かました。監督の内側には何か叫びたいものがあるんだろうなと感じたんです。僕はその声を彩人というフィルターを通して表現したいと思い、参加をすることを決めました」と話した。
彩人の弟で亡き父の背を追って総合格闘技の選手となった壮平役を演じた福山は「クランクインの1年ほど前から、今までの生活リズムをすべて変えて総合格闘技の鍛錬を積みながら減量もしていました。総合格闘技の選手としての説得力を積み上げられるように、壮平という役と向き合ってきました。内山監督の本気度、その思いを具現化できるように精一杯頑張りました」と役作りについてコメントした。
彩人の恋人・日向役を演じた岸井は「監督から全体を通して『こぼれそうな思いをこぼれないように、我慢して欲しい。どんなに辛くても心がひたひたになってしまっても我慢してください』と、ずっと言われていました」と内山監督の演出について話す。
岸井の役は、彩人を献身的に支えながらも彩人の、心中を思うばかりにあまり話しかけたりはしないという役どころで、役作りのために磯村とはほとんど私語をしていなかったという岸井は、撮影の最終日にヒゲを剃って現れた磯村を見た瞬間「誰!?」と気づかなくてびっくりしたことを明かし、会場に笑いを誘った。岸井は役をまんま生きてくれていた磯村を称賛した。
彩人の親友・大和役を演じた染谷は磯村とは初共演となる。染谷は「初めての気がしなくて――。『あれ? 知ってたの?』みたいな気分にしてもらえて、自然にお芝居に入れました」と撮影を振り返った。
一方、磯村は「僕はずっと染谷さんのことが好きで、自分がデビューする前から映画とかで観ていて、すてきな役者さんがいるなと思っていました」と笑顔で話した。
彩人の母・麻美を演じた霧島は「撮影に入る前が苦しい時間でした。悩み、考えさせられ、怖い思いもありました。長い時間、内山監督とコミュニケーションを取っていたので、監督を信頼して芝居に集中することができました」と熱い思いを吐露した。
そんな霧島に磯村は「霧島さん演じる母の姿を見たときに、僕は言葉が出なかった。そこに母として存在してくださった。それだけで彩人になれる。本当に助けていただきました」と心からの感謝を伝えた。
ある事件に関わる警察官・傲慢な松浦役を演じた滝藤は、役作りについて「内山監督の注文に応えたい一心でした。また新しい滝藤賢一が見せられると思ってチャレンジしました」と話した。
彩人の亡き父・亮介役を演じた豊原は「現場で磯村さんたちのまとう空気が、脚本を読んだときに感じた記憶の端々を突いてくる感覚に近い迫力があった。幸せな現場に参加させてもらったなという思いでした。監督の魂、俳優たちの熱い魂を少しでも支えたかった」と撮影を振り返った。
『佐々木、イン、マイマイン』では、入念なリハーサルを重ねた上で撮影に臨んでいた内山監督だが、今作ではリハーサルなしの本番というスタイルに挑戦。「俳優の方々の感情やその奥にあるものを(リハーサルで)消費させたくなかった」と説明した。
最後に磯村は「本当に周りの人に感謝をして、敬意を払って、そういうことを口にして僕らに伝えてくれる、とても素敵な監督でした。そんな内山監督と僕らが信頼し合って作り上げた作品です。辛い、重いシーンの先にあるものは何かというところを皆さんと一緒に考えていけたら……。ただ暗い映画ではありません。楽しんで観てください」とメッセージを送った。
(取材・文・写真:福住佐知子)
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配給:クロックワークス
10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
(オフィシャル素材提供)