イベント・舞台挨拶

『ほなまた明日』初日舞台挨拶

© ENBU ゼミナール

 登壇者:田中真琴、松田崚汰、重松りさ、秋田卓郎、道本咲希監督

 写真家を目指し、不器用ながらも自分を信じて歩き続ける芸大生の草馬ナオ。その圧倒的な情熱に嫉妬や焦燥を抱えつつも、どこか救われていく同級生の友人たち――。同じ道を歩んでいるはずの彼らが、才能や境遇に折り合いをつけながらそれぞれの歩幅で進んでいく切なくも愛おしい日々が綴られる。

 本作『ほなまた明日』は、『カメラを止めるな!』を生み出したENBUゼミナールのシネマプロジェクト第11弾作品。登場人物たちの心のゆらぎをすくい取ったのは、19歳の切実な悩みを自ら主演して完成させた短編映画「19歳」が、PFFアワード2018審査員特別賞を受賞。その後、ndjc2021にて制作された『なっちゃんの家族』が業界にて注目された道本咲希。
 SNSで見ず知らずの「いいね」の数に感情が左右されるようになった現代。他人の反応に流され、自分自身を信じ続けることが一段と難しくなった時代とも言える、そんな世の中の空気に危機感を覚えた道本監督が、自らの進む道を信じて歩き続ける女性を主人公に本作を完成させた。いままさに叶えたい夢をもつ人、そして、かつて夢があったすべての人の背中を押し、“愛と痛み”を内包した青春映画で、堂々の長編映画デビューを果たした。

 公開初日の9月28日、満員御礼となった新宿K’s cinemaで行われた初日舞台挨拶に、主演の田中真琴(草馬ナオ 役)、松田崚汰(山田 役)、重松りさ(小夜 役)、秋田卓郎(多田 役)、そして、道本咲希監督が登壇した。

 本作のキャスティングは、ワークショップ+オーディションを融合させた形で行われたのことで、その意図を道本監督は次のように語った。「ワークショップで俳優さんと有意義な時間を共にして、お芝居のことを一緒に考えることも大切で、それを通してのオーディションとしました。そして、メインとなったこの4人とは、追加のワークショップもたっぷりとやりました」。

 さらに、道本監督はリハーサルをたっぷりと行うことの意義も話した。「私の組はリハーサルをとにかくたくさんします。今回も4日間、みっちりと行って、キャスト同士の仲を深くしたり、写真の話もたっぷりとしました。そういう時間をかけたからこその作品に仕上がったという感覚が私の中にあります」。

 そして、道本監督のパーソナルな部分も反映されているという本作の物語の組み立て方については「女の子が、SNSで簡単にいいねを押してもらえて、なかなか頑張りきれないのは現代の問題だと捉えていて、認められなくても頑張っていける女の子を描きたいと思った」と明かす。

 同じ芸大に通って写真を勉強している4人の学生を演じたキャストたち。それぞれの役作りについて聞かれると、田中真琴は「ナオは写真にすごく真っ直ぐな女の子。オーディションの段階から、出かけるときは、フィルム式の一眼レフをカメラを持って、撮影を楽しむようにしました。なぜならカメラを使う精神性というか、1枚を撮る責任感が自分には足りないっていうことに気づいたからです。街を一人で歩いて写真を撮ることを続けていくうちに、撮影が始まったらきっと私はナオでいれるなっていう自覚が出てきました」、続けて、「私はリハーサル終わりに秋田さんと一緒に街に出て、ナオのように道行く人に声をかけて写真を撮らせていただいて、実際にそういう行動をすると、世の中からどう見られるのかをリアルで肌で感じることもできた」と、役作りの取り組みについて語った。

 役が決まって写真の勉強をすることがプレッシャーだったという重松りさは「台本を読んで、夢に向かって頑張っている人たちのお話なんだと掴んだときに、自分と重なる部分があって、そういう段階だからこそ出せる感情は、私の経験にもあるし、演じる前からすごくワクワクしました」と、気持ちの変化があったことを話し、プレッシャーだという写真撮影スキルについては、「私の演じる役は、人物を撮ることにとても惹かれてる女の子なので、(本作の)スチールの染谷かおりさんの撮り方を見学して、人物の魅力が引き出すカメラマンの雰囲気づくりを考えながら取り組みました。この役を通して、写真に対してのコンプレックスは、なくなったと思います」と自信を持った笑顔で語った。

 そして、4人の中で最年長、唯一の昭和生まれだという秋田卓郎は、大学生に見えるか?という不安があったそう。「親戚に現役大学生がいまして、彼に今悩んでいること、考えてることを聞きながら、昔のことを思い出す、呼び起こす作業をしました」と語った。
 写真について秋田は、「普段はあまり写真を撮らないんですが、今回の写真を撮る機会を得て、普段見過ごしていたものに目が行くようになりました。いつも通っている道なのに、こんなとこに花が咲いているとか、あの人見たことあるなみたいな。普段見てるようで見てなかったんだなっていうことが気づかされました」と、自身の気づきについてしみじみと話した。

 更に4人の写真を学ぶ学生それぞれの写真の個性として、参考になる写真家の提示が監督からあったことも明かされた。山田役を演じた松田崚汰は、写真家・熊谷聖司氏だったそうで、実際に本人と会い、話もできたことを明かした。「事前に熊谷さんの制作集を拝見して、彼の写真展にも足を運びました。そこで御本人から『そこにいるだけだよ』という金言を得られたので、僕は本当にただその場にいさせてもらうだけでした」。

 以上のキャストたちの取り組みに加えて、道本監督は、それぞれに自身が撮った写真をファイリングし、作品集の形にすることも求めたという。「皆さんが撮りためたものを、一人ずつファイリングして、作品集みたいなものを作ってもらって、撮ることの怖さとか、作品を作るって一体なんだ?、写真とは何だ?みたいなところを一緒に考えました」。

 そういったキャストたち自身が撮った写真は、本作のパンフレットにも収められていて、道本監督は「皆さん、それぞれが演じた役が撮りそうな写真を撮ってくださっていて、それが本当に見事に4人全然違うんです。それがとても面白い」と、客席に向かってお奨めしていた。

 それを受けて田中が「秋田さんがクランクイン前に撮った写真がパンフレットに載ってるので、特に見てほしいです! 私、笑っちゃったもん。こんなに肩の力が抜けた写真は、私は提出できない(笑)。でもこういうのもいいなって」と楽しそうに話すと、当の秋田は照れ笑いを浮かべていた。

 最後に、これから本作を観る方へのメッセージが送られ、舞台挨拶は幕を閉じた。
 「ちょっと他ではなかなか観られない、リアルな作風で、登場人物全員のバックボーンがしっかり見える作品になっていますので、皆さんそれぞれが何か面白いなって思うところを見つけていただければ嬉しいです」(田中真琴)、「この4人の芝居がとても良くて、ちょっとした“間”にもそれぞれの人生が垣間見えたりするところもありますし、観る人が、それぞれの推しのキャラクターを見つけるのもこの作品の楽しみ方のひとつだと思います」(道本咲希監督)。

 (文:三平准太郎)

ストーリー

 ⼤阪。⼤学卒業を控えたある年の夏。
 写真家を⽬指す芸⼤⽣の草⾺ナオ(⽥中真琴)は、写真中⼼の⽣活を送っていた。
 同じ写真学科の⼩夜(重松りさ)、⼭⽥(松⽥崚汰)、多⽥(秋⽥卓郎)は、写真に夢中になるあまり、⼈としてはどこか不器⽤なナオに振り回されつつ、その才能を認め彼⼥を応援していた。
 ⼈⽣の岐路を前に、写真の本質に近づこうとするナオの情熱は、否応なしに3⼈の⼼をざわざわと揺らし、嫉妬や焦燥を⽣み、それぞれに“選択”を迫っていく。
 卒業後、写真家となったナオは、⼩松、多⽥と久々の再会。そこで⼭⽥が失踪していることを知る。

 (2024年、日本、上映時間:99分)

キャスト&スタッフ

 監督:道本咲希
 脚本:郷⽥流⽣、道本咲希
 出演:⽥中真琴、松⽥崚汰、重松りさ、秋⽥卓郎
    ⼤古知遣、ついひじ杏奈、越⼭深喜、ゆかわたかし、加茂井彩⾳、福地千⾹⼦、⻄野凪沙
 撮影︓関 瑠惟
 プロデューサー:市橋浩治
 特別協賛:真琴の愉快な仲間たち、ラディアスセブン
 制作:Ippo

オフィシャル・サイト(外部サイト)

映画『ほなまた明日』

公開表記

 製作・配給:ENBU ゼミナール
 8月9日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

(オフィシャル素材提供)

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