イントロダクション
母からのプレッシャーに心を壊したエリート社員。オリンピック出場を断念した元フィギュア・スケーター。勉強が苦手で故郷を飛び出した料理人。挫折をひた隠し、閉塞感の中で縮こまる3人が、中国と北朝鮮の国境の街、延吉に流れ着いた。磁石のように引き寄せられ、数日間を気ままに過ごす彼ら。深入りせずに、この瞬間をひたすら楽しむ、それが暗黙のルールだ。過去も未来も忘れ、極寒の延吉をクルーズするうちに、凍りついていた孤独がほどけていった。
主演はデビュー作『サンザシの樹の下で』(11)で“13億人の妹”と注目され、21年に日本でもスマッシュ・ヒットした『少年の君』(19)でも知られるチョウ・ドンユイ。アンソニー・チェン監督と2度目のタッグとなる本作では、脚本のない段階で監督からオファーされ快諾。人生に迷った自分の経験を重ねながら、ノーメイクでナナの孤独を表現している。極寒の街に足止めされるハオフォンには、大人気シリーズ『唐人街探偵』(15~)で天才探偵を演じたリウ・ハオラン。増量と髭を伸ばす役作りで、心をどこかに置き忘れたエリートを静かに演じた。ナナに片思いするムード・メーカーのシャオには、Netflix映画『流転の地球』(19)、『あなたがここにいてほしい』(21)のチュー・チューシアオ。
急激な経済発展の中で経済格差は広がり、終わりのない競争社会に疲れた中国の若者たちが、将来を悲観し閉塞感に身を沈めている。行き場のない彼らを異国人の目で見つめるのは、フィリピン人のメイドと小学生の心の交流を繊細に描いた『イロイロ ぬくもりの記憶』(13)で、第66回カンヌ国際映画祭 カメラドールを受賞したシンガポール出身のアンソニー・チェン監督だ。本作では脚本もない状態で、物語の舞台は冬、未知の地で撮影する、そして撮影期間を先に決めるという異例の映画制作に挑戦したという。
ストーリー
中国と北朝鮮との国境の都市、延吉。ハオフォン(リウ・ハオラン)は知人の結婚式に出席するため、冬の延吉を訪れた。披露宴が終われば、翌朝のフライトまで予定はない。暇つぶしに観光ツアーに参加してみたが、不運にもスマートフォンを紛失してしまう。そこでバス・ガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)はお詫びにとハオフォンを夜の延吉に連れ出す。男友達のシャオ(チュー・チューシアオ)も合流しての飲み会は盛り上がり。ナナの部屋になだれ込んで朝方まで飲み明かすのだった。翌朝、寝過ごしたハオフォンは上海に戻るフライトを逃し、途方に暮れる。ぽっかり空いた週末。シャオの提案で3人はバイクに乗り込み、国境クルージングに出掛ける。数日間、目的もなく一緒に過ごしただけ。それでも、心から笑い、冒険した思い出が、迷える若者たちの未来を変えていく。
(原題:燃冬|英題:The Breaking Ice、2023年、中国・シンガポール、上映時間:100分、PG12)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:アンソニー・チェン
出演:チョウ・ドンユイ、リウ・ハオラン、チュー・チューシアオ
ギャラリー
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公式X:@kokkyounight
公開表記
配給:アルバトロス・フィルム
10月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
(オフィシャル素材提供)