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『ルート29』公開記念『こちらあみ子』特別上映会トークイベント

© 2024「ルート29」製作委員会

 登壇者:大沢一菜、森井勇佑監督

 『リボルバー・リリー』で日本アカデミー賞主演女優賞に輝いた綾瀬はるかが主演を務めた森井勇佑監督最新作『ルート29』。この度、本作の公開を記念して、森井監督の前作であり、本作にも出演する大沢一菜が主演を務めた『こちらあみ子』の特別上映会が実施された。

 『こちらあみ子』で第27回新藤兼人賞金賞はじめ数多くの賞を受賞し、デビュー作にして多くの映画ファンを魅了した森井勇佑監督。詩人・中尾太一の「ルート29、解放」からインスピレーションを受け、映画の舞台ともなった姫路から鳥取を結ぶ一本道の国道29号線を約1ヵ月間旅をし、脚本を完成。その独創的なストーリーは、他者とコミュニケーションを取ることをあまりしない主人公トンボが、風変わりな女の子ハルを連れて旅に出た先でのさまざまな出会い、そこで次第に深まるハルとの絆によって、からっぽだった心に喜びや悲しみの感情が満ちていく時間を綴ったロード・ムービーだ。ハル役には『こちらあみ子』で強烈なデビューを飾り第36回高崎映画祭最優秀新人俳優賞を受賞した大沢一菜。幅広く活躍を続ける彼女はドラマ「姪のメイ」「季節のない街」と立て続けに出演。森井監督作品には2作品続けての登場となる。そのほか、市川実日子、高良健吾、原田琥之佑、河井青葉、渡辺美佐子など、演技と存在感に定評のある実力派キャストたちが集結した。

 第37回東京国際映画祭の【ガラ・セレクション】部門に正式招待が発表され、ますます期待が高まる中、今回実施が決まった『こちらあみ子』特別上映会。公開から1年経った後も多くのファンの心を惹きつける『こちらあみ子』が、新作『ルート29』にもたらしたものとは? また、『こちらあみ子』から引き続き出演する大沢一菜が話す森井監督の現場とは?など、存分に語った。

 観客の前に登壇した大沢と森井監督。これから上映になる『こちらあみ子』に関して、キャスティングの決め手を聞くと森井監督は「最初にオーディション会場に現れた時に、一番僕の話を聞く感じがなかったんですよね(笑)。オーディション始まる前の部屋にいたところに話しかけた時に、そっぽを向いて“うん”、“はい”って感じだったんですよね」と振り返ると、大沢はあまり意識していなかったようで、「ものすごく緊張していたのを覚えている!」と新事実を明かす。そこから、『こちらあみ子』の撮影を振り返ると、「スタッフもすごい優しくて、すぐ溶け込める雰囲気を監督が作ってくれたし、ほぼ遊んでました!」と無邪気な大沢に、「ほぼ遊んでたね」と監督も答え、仲良さげなふたり。「一菜だけではなくて、子どもたちは無茶苦茶になっているんですが、その時にしか撮れないものがあるということも分かっていたので、尾野さんも新さんもそれに参加してくれて。“ちゃんとしない”をやるっていう。先生はいない、大人は何も怒らない、という感じでしたね」と撮影の裏話を振り返った。そこで大沢の「生きていていちばん自由だったと思う」と堂々とした話しぶりに、会場は笑いに包まれた。

 初めての撮影現場での共演者の印象を尋ねられると、「テレビとかでは見たことあるけど、実際に見ると、すごいなと思いましたね。新さんもあみ子を無視している感じがすごかったです」と大先輩・尾野真千子と井浦 新の印象を話す大沢。そこから尾野の泣くシーンの話になると、「何もテストやリハーサルとかはしないで、尾野さんからもあのお墓を本当に初めて見たいとのことで、本当に初めての感覚でやりましたね」と裏話が監督から飛び出た。
 『こちらあみ子』での“あみ子”の役作りの話になると、「長いセリフがたくさんあったので、事前に10日間前に(大沢に)広島に入ってもらって、毎日リハーサルをやったんですね。歩き回ったり、ぶら下がったり、遊びながらセリフを反復してもらうというのをやって。感情をつくってセリフを言ってもらうのではなくて、その場で、どんな状況でもセリフが言えるように、という特訓をしました」と明かす監督。大沢も「『こちらあみ子』のときは何も言われていないですね。「一菜のままでいてくれ」としか言われてない」と振り返る。

 そこから『ルート29』の話に。『ルート29』では、ハルを大沢にあてがきした監督。「 『こちらあみ子』 を撮った後も会っていて、その時に(大沢が)“どこかかっこいいところがあるな”と思っていて、それをちゃんと映画で表現できるような役を見てみたいなというところがありました」と大沢にあてがきをしたいと思った経緯を話すも、大沢は「自分は『こちらあみ子』の時から変わっているのか分からないですね」とクールな返し。
 『こちらあみ子』の撮影後、森井監督が寂しさのあまりホテルで泣き暮らしていたというエピソードが紹介されると、「撮影後がすごいエモーショナルなお別れで、あみこのパンフレットに詳細を書いているんですが、一菜がその当時『東京リベンジャーズ』がすごい好きで、最終日に突然、挨拶し出して、“総長”をやり始めて(笑)。“〇〇部の〇〇はよくやった!”と皆に言って、皆で号泣していたんですね。そこで、最後長い階段を降りていって去っていたので、とても劇的だったんです」と印象的なエピソードを細かに語る森井監督だったが、大沢は覚えていない様子で、驚く森井監督。「ホテルに帰って泣いたのは覚えている。“一番楽しかったけど、終わっちゃったな”という感情でした」と大沢自身の思い出も振り返った。

 『ルート29』での綾瀬との共演についての話になると、「その時だけ、監督、“神”だと思ったし、現場で(綾瀬に)会ってみて、笑顔で優しい人なのかと思ったら本当にそのままで、もっと好きになって、好きになりすぎて話しかけられなかったし、見られなかったから、近寄れなくて恥ずかしかったです。でも、だんだん打ち解けてきて、虫を一緒に捕まえたり、監督が来た時に、爆弾投げて監督を倒すというアクションごっこしたりしましたね」と面白いエピソードに会場も笑いに包まれる。
 『こちらあみ子』と『ルート29』では二人の現場でのやり取りも異なったようで、「ちゃんと芝居をするひとりの人間になっているな、意識が芽生えているなと思いました。演技をするということを意識しているなという感覚ですね」と大沢の印象を語る森井監督。「綾瀬はるかさんと大沢一菜さんのふたりの話なので、ふたりを対等にしたいと思っていたので、綾瀬さんと接するように、一菜にも接したいと思っていました」と意識した点を森井監督が話すと、「一番大切なシーンの時、“ひとりぼっちで宇宙にいるような感覚でいて”と言われて、『こちらあみ子』の時とは、ちょっと違うなと思いましたね。最初は何言っているんだろうなと思ったけど、よくよく一人の部屋で考えていたら、“ハルはこういう気持ちなんだな”というのを実感して、そのままハルの気持ちを出せばいいのかなと思いました」と大沢。「一菜のそういう感じなのが面白かったですね。芝居が奥深いなと思いました」と大沢を絶賛する森井監督。仲の良さをMCが指摘すると、「親友?」と森井監督を見る大沢に、「たまに言ってくれるんですよね」と嬉しそうな監督だった。

 大沢に今後の展望を尋ねると「(演技を)続けて行きたいし、撮影現場に行くと、学校で嫌なことがあっても忘れられるのがすごく好きだから、これからもやっていきたい!」と今後も楽しみになるような返答が。そんな大沢の魅力を、「もう『ルート29』を観ていただいたら分かると思いますが、言葉では形容し難いですが、ハンパないと思います。撮っていてすごく面白いんですよね。底力がおありなんです」と力強く語る森井監督。和やかな雰囲気のまま、イベントは幕を閉じた。

公開表記

 配給:東京テアトル リトルモア
 11月8日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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