登壇者:宮岡太郎(映画監督)、野水伊織(声優)
MC:杉山すぴ豊
『M3GAN/ミーガン』『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』など、ホラー映画を中心に次々と斬新な作品を生み出している、敏腕プロデューサーのジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プロダクションズと、『ソウ』『ハンガー・ゲーム』シリーズなどを手掛けるライオンズゲートがタッグを組んだ映画『イマジナリー』。可愛らしいテディベアと友情をはぐくむ少女と家族の周囲で巻き起こる、不可解な現象と想像を絶する恐怖を描き全米を震撼させた話題作が、11月8日(金)より日本公開される。
10月29日(火)、公開に先駆け、映画『恐怖人形』(19)や現在放送中のドラマ「ヒロシの心霊キャンプ」などのホラー作品の監督を務める宮岡太郎と、ホラー映画感想屋として数々のホラー作品を語ってきた声優・野水伊織が登壇し、トークイベントを実施! “ホラー作品”に精通した2人から、『イマジナリー』の魅力を大胆に考察しつつ、本試写会だからこその“こわいはなし”も披露され、ホラー好きなファンにとって大盛り上がりのイベントとなった。
本編を鑑賞したばかりの観客の前に、拍手で迎えられながら宮岡太郎と野水伊織が登壇。まず本作を観た感想について、宮岡は「誰しも子どもの頃には空想の友達がいたと思います。こうだったらいいな……という理想を追い求める自分がいて、そういう理想がどんどん肥大化したりねじ曲がっていったりするとこういう怖い目にあうことがあるんだな、という意味で普遍的な作品として拝見しました」、野水は「私はおもちゃが好きなので、チョンシーと遊べるならずっとあそこにいたいなと思ってしまいました(笑)。また、今回はブラムハウスのホラー作品の中でも大人向けだと思いました。ジェシカという主人公がステップ・ママとして、子どもに受け入れられていくために成長する話や、そこで娘とのシスターフッド的な関係性を築くなど、女性にとってより共感できるポイントがあると思いました。親との確執などが刺さったり、ドラマ性が豊かな作品だと思いました」とそれぞれ作品の魅力を熱く語った。
続いて、最近のブラムハウス作品の共通テーマでもある「家族×ホラー」について、宮岡は「最近のブラムハウス作品の十八番という印象があります。雑誌で拝見したのですが、ブラムハウスには6つの掟があり、その中で「人間ドラマを重視している」という掟があるようです。まさに『セッション』などの人間ドラマがある一方で、ドメスティックな家庭の中で起こる恐怖と人間ドラマを描いた『インシディアス』という鉄板のシリーズもあります。またブラムハウスでも一番怖いくらいおぞましい映画の『フッテージ』もしっかりと家族の絆が描かれた作品です。そういったブラムハウスがやり続けてきたことのひとつを新たな形を見せてもらった作品だと思います。空想の中に入り込むというシチュエーションがこの作品ならではで、想像の世界の中に入り込み、不確かな世界の恐怖や楽しさというのを味わいながら展開されていく部分が面白いと思いました」とブラムハウスの各作品を例に出しながら、本作ならではの良さを紐解いた。野水は「社会派なテーマもありつつ、そうじゃなくて殺してくれ!みたいなホラーを観たい方もいると思いますが(笑)、そういう観点の切り込みはこの今の時代ならではと思います。この作品はホラー入門として金曜の夜にポップコーンを食べながら観るのにもいい作品ですし、大人が得るものがある作品だと思います」と自身の体験を交えつつ、ホラー入門としても最適であることを強調した。宮岡も続けて「ホラー初心者の方にもおすすめですし、ホラーの上級者の方にとっても面白い映画だと思います。精神世界は不確かなもので、映画で登場する階段や無限に広がる廊下など、ある意味では想像力の恐ろしさというのは無限大だと思います。殺人鬼が襲ってくる映画より、人によっては恐ろしい何かを感じられるところも懐が広いと思いました」と本作で描かれる空想世界による恐怖についても語った。
本作で可愛らしいテディベアを怖いものにするというモチーフについて、野水は「ホラー映画好きからしたら、チョンシーは家にいてほしいと思いますよね(笑)」とチョンシーへのラブ・コールを送るが、宮岡は「目のビー玉感が恐ろしかったです(笑)」とチョンシーの恐ろしい面についても振り返っていた。さらにブラムハウスのお気に入りのキャラクターについて野水は「マイケル・マイヤーズに家に来てほしいです。結婚したい殺人鬼ナンバーワンだってずっと言っています(笑)」、と推しキャラについてコメント。宮岡は「チョンシーも素晴らしいのですが、個人的には『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』もすごくユニークで面白かったです」とそれぞれ回答。さらにMCからブラムハウスが「いい企画であればウェルカム」だと言っていたことを明かすと、映画監督でもある宮岡は「『恐怖人形』をさらにパワーアップさせる企画をぜひ考えます!」と意気込みを見せていた。
ここで、「こわいはなし付き試写会」という名目にちなんで、それぞれの身の回りで起きた怖い話についての話題に。宮岡は、「幼少期を振り返ってイマジナリー・フレンドがいたかと記憶をたどってみました。子どもの頃にすごく好きな人形があって、ハンド・パペットで遊んでいたことを思い出して、先日実家に帰った時に、部屋のぬいぐるみ置き場を探したんですが、他の人形はある中でその人形だけがみつからなかったんです。どこへいったのかと思って実家の母親に尋ねると、「あんたがそんな人形で遊んでいた記憶がない」……と言われたんです。一体、僕は誰と遊んでいたんだろう……?ということが最近ありました。自分の存在が不確かになる恐怖を感じましたね」とまさかの“イマジナリー”体験を披露し、会場をざわつかせていた。
続けて野水は「もしかしたら死んでいたかもしれないということがありました。幼い頃群馬の桐生で生まれて、おばあちゃんと母と住んでいて、週末にデパートへ行った時にブロックなどがある遊び場によくいたのですが、おばあちゃんが自販機に飲み物を買いに行った隙に、男の人が私を誘拐しようと手をのばしてきたんです。『あんた何やってるの!』とおばあちゃんが助けてくれて事なきを得たんです。実はその時に、群馬と栃木で小さい女の子がさらわれて殺されるという“北関東連続幼女誘拐殺人事件”という未解決の事件が起きていて、もしおばあちゃんが助けてくれなかったらと思うととても怖かったです」と幼少期のリアルな恐怖体験を回顧し、宮岡たちも驚いた様子を見せていた。
イベントの最後に、映画を楽しみにされている方に向けて、野水は「ぜひお子さんと一緒に家族で観てほしいと思っています。私自身が『怖いは楽しい』で生きている人間で、元々は苦手だったけれど見始めてから怖いジャンルが楽しいと思えるようになったので、そういうきっかけにもなると思いますし、かわいいくまちゃんもでてくるので、ぜひみんなで観ていただきたいです」、宮岡は「空想上の家族、友達、恋人を妄想したことがある全ての方に刺さる作品になっていると思います。スリルとエンターテインメントを突き詰めたブラムハウスの良さ、ジャンプ・スケアとどんでん返しと人間ドラマ、全部欲張ったホラー映画になっているので、ぜひいろんな方に観ていただきたいです」と本作の魅力をそれぞれアピールした。話題が盛りだくさんのイベントは、終始笑いと時々悲鳴が起きながら、大盛り上がりで幕を閉じた。
公開表記
配給:東宝東和
11月8日(金)より全国公開