登壇者:山本奈衣瑠、生越千晴、中山雄斗、こささりょうま監督
MC:折田侑駿
都会の喧騒に佇むゲストハウス“ココ”を舞台に、住み込みバイトの詩子と“ココ”に集う人々の交流と愛おしい日々を綴った映画『ココでのはなし』の公開記念舞台挨拶が東京・シネスイッチ銀座で行われ、主演の山本奈衣瑠、キャストの生越千晴、中山雄斗、こささりょうま監督が登壇した。
冒頭、主演の山本奈衣瑠が登壇位置を間違えるハプニングがあると、会場は劇中と同じような温かな笑いに包まれた。10以上の海外映画祭で上映され、撮影から3年の期間を経て公開となった本作。主演の山本は「海外での映画祭を監督がまわってくれて、この映画を必要としてくれる人たちに届けることができた。その時間を経たうえで、日本の皆さんに観ていただける。そういう特別な道のりを歩んでこれた作品だと思っています」と思いを語った。
また、海外映画祭での反応について監督は「すごくよかったですね。その土地の、その人ならではの悩みを各キャラクターに結び付けてくれた」と述懐。また、ゲストハウスを舞台にしたことについて、自身がバックパッカーをしていたことにも触れ「自分のパーソナルな話ができる空間っていうのが、なんだかすごく素敵な繋がりだな、そういった感覚は世界の人たちにも繋がるんじゃないかなと思った」と明かした。
さらに、主演の山本の起用理由を「自分の中で、今の日本の代表のように感じている。海外の人から見ても、日本人から見ても、素直に日本人として素晴らしい、と思える人なんじゃないかな、と思っていて。そういうところは彼女にお願いしたかった理由ですね」と説明。本作が撮影順としては『猫は逃げた』に次いで2作目の現場となった山本は「なんで監督はこんなに信頼してくれてるんだろうっていう不思議な気持ちもあった」というが、「映画をひとつつくるって本当に簡単なことじゃないけれど、それをちゃんと実現できる人という信頼があったので、一緒にやりたいと思った」と監督への想いを明かした。
また、本作では若手実力派キャストの演技も見逃せない。中山は、共演シーンの多かった生越について「もともと生越さんが所属する劇団モダンスイマーズの舞台もみていたので知っていて。僕がめちゃめちゃに演じても何をしても、ちゃんと返してくれて安心感があった」と振り返ると、生越も中山について「ここにいる空気を大切にして、一緒にできる人だと感じていたので、(本作での)役柄を一緒に演じることができてすごく嬉しかったし安心して望めた」と応える一面も。
さらにそんな若手キャストを役同様現場で温かく見守っていた吉行和子の存在について問われると、監督は「自分が好きでみてきた山田洋次監督作品をはじめ、そこに出演する吉行和子さんの存在には何度も助けられてきた。そんな吉行さんに出演していただけたことは奇跡みたいなことだった」と振り返り、「実は事前に一度顔合わせをする機会があったのですが、その時にひとつだけちょっと直してほしいことがある、と言われて。泉さんの年齢設定を、元々72歳だったものを82歳にしてほしい、と。理由が気になっていたらその後の会話で、泉さんが劇中で話す台詞を言うのに、私は80年かかったからとおっしゃったんです!(真摯に向き合ってくださって)嬉しかったです」と秘話を明かした。
そして、登壇が叶わなかった共演の吉行和子よりサプライズで手紙が到着! 司会者が代読すると、監督は目に涙を浮かべながら「撮影現場で吉行さんと“どこの劇場で上映したい?”と訊かれた時に、シネスイッチ銀座”を挙げていたんです。そしたら吉行さんも“私も好きな劇場よ”と話してくれて。今日はそんな劇場で、手紙ではありますが一緒に初日を感じることができてよかったです」と喜びを語った。
さらに11月12日に誕生日を迎える山本奈衣瑠と、イベント当日11月9日が誕生日となる生越千晴のお誕生日をサプライズでお祝い! お祝いの花束を受け取った山本は「ちょっと吉行和子さんのお手紙には言葉が出ないです。ちょっと涙がでてしまいました。逆に言葉にせずに、自分の中に入れておきます」と感涙し、生越も「忘れられない嬉しい日になりました」と感激。
最後に、山本から「さまざまな感想があるとは思うんですけど。でもこの映画では、ちょっと休憩することとか、無理しないこと。でも、ちゃんと美味しいあったかいご飯を食べること。そういうことを皆さん思っていただけたら1番嬉しいかなって私は思ってます」、監督からは「この映画を作る時に自分の中でキーワードになっていた言葉が”何もしてないは何もできていないわけではない”でした。この言葉に自分自身救われたし、その要素をこの映画が持っているんじゃないかと自分でつくりながら思っていて。この映画を皆さんに観ていただいたことで、一つのキャラバンにのったような気持ちです。応援していただけたら嬉しいなって思っています」と本作への想いを語ると客席からは温かい拍手が送られ、劇中のような和やかな雰囲気の中、舞台挨拶が終了した。
吉行和子からの直筆の手紙 全文
こささりょうま監督、そして皆様
『ココでのはなし』初日おめでとうございます。
楽しかった撮影を思い出しています。
今日は伺えませんが、映画の上映を心からお祝いします。
多くの方々に、年齢に関係なく観てくださることを願っています。
そして、またお祝い。
山本奈衣瑠さん、生越千晴さん、お誕生日おめでとうございます!
ステキな未来を……♡
公開表記
配給:イーチタイム
11月8日(金)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)