登壇者:綾瀬はるか、大沢一菜、市川実日子、森井勇佑監督
『リボルバー・リリー』で日本アカデミー賞主演女優賞に輝いた綾瀬はるかが主演を務めた森井勇佑監督最新作『ルート29』。ついに11月8日に公開をむかえ、11月9日(土)に公開記念舞台挨拶を行った!
本編上映後、ステージに登壇した綾瀬は会場に向かって「皆さん観終わった後ということで……不思議な映画だったでしょうか(笑)?」と問いかけると、会場は一気に笑顔に。早速MCより今回の作品で「印象に残ったことは?」と質問された綾瀬は、「1ヵ月半くらいかけて鳥取から順番に、国道29号線を旅するように歩いて撮っていったので。その時は暑くて大変でしたが、大きな家族みたいになって。ヌーの移動みたいな感じだったのも思い出深いですし(笑)、この作品で(東京国際映画祭の)レッドカーペットを歩けたのもうれしかったです」とユーモラスな表現で振り返った。
一方、市川と親交が深い綾瀬だが、本作の役づくりにあたって市川に相談したこともあったという。そのことについて「元がキラキラしているので、のり子はとにかくキラキラを消したほうがいい、ということは言いました」と市川が振り返ると、綾瀬も「撮影の初日だったのでそういう話もしたし。あとはタバコを吸うシーンがあって。台本にはパンッとくわえると書いてあったんですが、わたしはタバコを吸ったことがなくて。だから(市川が)うちに来て、歩きタバコのやり方を一緒に練習しました。そこで『それ不自然じゃない?』といった感じで指導してもらいました」と明かすと、「(綾瀬の)タバコを持つ手が不自然なので笑っちゃって。練習にならなかった。そんなはじまりでした」と市川。さらに綾瀬が「これまでは、たとえばアクションなら稽古を積んで、監督が細かく厳しく、立ち位置も決めたりして積み上げていくということが多かったんですが、森井監督はとにかく、わたしのこれまでの20何年の経験をそぎ落とすという作業をしていく、という感じがあって。無にならないといけないんだなと思いました」とコメントすると、「むきたまごになったような感じです」と独特な表現で付け加えて、会場をドッと沸かせた。
さらに「初日の夜も役について一生懸命話したりして、プロデューサーさんみたいな感じなんです(笑)。お芝居だけでなく、芸能のお仕事についてまでも幅広く話をしたりしました」と市川に対して絶大なる信頼感を寄せている様子の綾瀬。のり子という役を演じるにあたっての、市川からのアドバイスは「誰もいない部屋にひとりでいる感じじゃない?」ということだったという。それには綾瀬も「わたしがいつもひとりで部屋にいる時って、のり子みたいな感じだよなと思った」と深く共鳴したようで、森井監督も「それを翌日(の撮影の時に)に言ってもらったんですよ。それはすごくいいなと思った」としみじみ語った。
そんな本作をあらためて鑑賞し、「以前から役をまとっていないような、この方(綾瀬)の素材そのものというか。部屋にひとりでいるような役を観てみたいなと思っていたので、今回、脚本を読んで、すごい楽しみだなと思っていました」という市川。
綾瀬も「試写会の後で実日子ちゃんが、すごくいいこと言ってくれたんです。自分で言うのもあれだけど……」と言いよどむと、「何言ったんだろう?」と思い出せない様子の市川。その様子に「もう大丈夫です」と話題を遮ろうとする綾瀬だが、森井監督をはじめ、会場はみんな市川の感想を「聞きたいですね」と興味津々。そこで意を決した様子の綾瀬がゴニョゴニョと市川の耳元でささやくと、あらためて市川が「綾瀬さんの心がきれいな人なんだな、ということが分かるような映画だと言ったそうです」と明かし、観客の笑いを誘った。
一方、そんなふたりの仲良しぶりを目撃したという大沢は「はじめて市川さんと会ったときはモデルみたいなだなと思ったんですが、トンボさん(綾瀬)とふたりで投げキッスをしながら遊んでいた時は、かわいいふたりだなと思いました」と明かして会場は大笑い。
「投げキッスなんかしてたっけ?」と思案顔の市川だったが、「初日から1ヵ月くらい開いてて、久しぶりだったから投げキッスをしたんだ(笑)」と納得した様子。そんな大沢との共演は「『こちらあみ子』という映画を観て、なんて魅力の塊の方なんだろうと思っていたんですけど、実際にお会いすると背が伸びていて大きくなられて。カッコいい方なんだなと思いました」としみじみ。その言葉に大沢も「20センチくらい伸びました」と照れくさそうに返答。綾瀬と市川も驚いた様子だった。
昨年、猛暑が続く中での撮影から始まり、ここ数ヵ月のプロモーションを経て。トンボ(綾瀬)とハル(大沢)の旅路もここでひと区切りとなる。そこで綾瀬と大沢の撮影風景をコラージュした特別メイキング映像「二人の夏休み」(1分40秒)をスクリーンで上映。優しい時間の流れの中で、徐々に距離を近づけていくふたりの姿を描いた映像を観た綾瀬は「最初に映像を観た時に涙が出ました。いろいろと思い出して、本当にトンボとハルがいたのかなという感じがあって。年も違うのに、そういう違いをそんなに感じさせないような不思議なふたりだなと思って見ていました」としみじみ語ると、大沢も「最初に観たときはすごく感動したから、1日に5回くらい観てます!」とお気に入りの映像であることを明かした。
そこで大沢に向けたサプライズが! 撮影から今日まで一緒に旅を続けてきた綾瀬が、大沢のためにフォトアルバムを作成。フォトアルバムを受け取った大沢は「宝物にします」と笑顔。綾瀬が「どういうのが好きなのかなと考えながらつくりました。ただもうちょっと絵を描き加えたいので、後で引きとらせていただいていいですか?」と付け加えて、会場を沸かせた。
そんな和気あいあいとした舞台挨拶もいよいよ終盤となり、最後のメッセージを求められた登壇者たち。まずは市川が「この映画は2回観ましたが、1回目はこの世界観に馴染む時間で、もう一回観た時に、人と人が出会い、人がもともと持っている本当のやさしさを感じて。そして人と人が出会うと必ず別れがあって、でもそれは決して悲しいことではなく、人はそれぞれの世界を持って生きているんだなと思ったんです。だからもう一回観ていただけたら、また違った風景が広がる映画なんじゃないかなと思います」と語ると、大沢が「わたしは昨日、公開日に映画を観てきたんですが、映画館で観ると、音楽や音にすごく魅了されたり、演技で(魅了されて)画面に入っていくのが好きなので、皆さんももう一回観てください」と語る。
さらに綾瀬が「生きてるのか、死んでるのか分からないような不思議な人も出てきて、でも個々がそれぞれの意志を持っていて、みんながそれぞれに生きています。あまり死の世界も、現実の世界も、意外に区切りがないんじゃないかなと感じたり、あとは(大沢)一菜ちゃんが演じるハルがいつも自由で、いろんな変な人が出てきても否定せずにスッと受け入れてくれる。シンプルな言葉の中にやさしさがあって、わたしもハルみたいになりたいなと思う映画でした。また良かったら観に来てください」とメッセージ。
最後に森井監督が「この映画には、共鳴できる力があると思っていて、今回、トンボとハルというふたりが共鳴し合うことを描きたいと思ってつくりました。このふたりが過ごした特別な時間を、皆さんと共有できたらいいなと思ってつくりましたので、ぜひどこかでまた観ていただければ」と呼びかけた。
公開表記
配給:東京テアトル リトルモア
公開中!
(オフィシャル素材提供)