登壇者:池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、妻夫木聡、田中裕子、石井裕也監督
日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督(『月』、『舟を編む』)の最新作『本心』が11月8日(金)に全国公開。原作は、「ある男」で知られる平野啓一郎の傑作長編小説「本心」。キャストには、池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中 泯、綾野 剛、妻夫木聡、田中裕子らが集結。本作は、“リアル”と“リアルではないもの”の境界が今よりもさらに曖昧になった世界を舞台に、亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫る革新的なヒューマン・ミステリー。
この度、11月9日(土)に公開記念舞台挨拶が実施され、主演の池松壮亮、そして三吉彩花、水上恒司、田中裕子、石井裕也監督が登壇した。
池松が平野啓一郎氏による原作小説に出合って4年、無事公開を迎えたことに池松は、「感無量、言葉がありません」と感慨を口にする。さらに、「当時は先の話だと思って取り組んできましたが、昨年は世界的にAI元年と言われるように、映画が時代と追いかけっこのようになっています。そんな中で、映画として同時代の観客の皆さんと共有できるのが嬉しいです」と想いが溢れ、言葉を紡いでいく。
石井監督は、「4年前に池松君から原作本を勧められたことを昨日のように覚えています。しかしその話をした場所の記憶がバーとタクシーとでお互いに違っていて、そういう意味でも、記憶って曖昧だと思う。記憶を搭載する我々の存在も曖昧であり、“本心”って何だろうと感じます。でも本作を作るにあたり、最初のエピソードがそんな曖昧なスタートで良かったと思う」と宿命的なものを感じていたという。
劇中では、幸せそうに見えた母(田中裕子)がなぜ自ら死を望んだのか……母の本心を探るため、朔也は不安を抱えながらも、AIに生前の母の情報を集約させ人格を形成するVF(ヴァーチャル・フィギュア)を利用し、仮想空間上に母を蘇らせる選択をする。朔也とVFの母が再会を果たすシーンについて、池松は「母を作り上げたことに対する戸惑いと、亡くした最愛の人に会えた喜び。そんな複雑さが混ざり合って、心が震えるような感覚が残っています」と回想。
ヴァーチャル・フィギュアの開発者・野崎役の妻夫木は、「お二人が演じている場面を観た時に、命を吹き込まれたと感じました。これだったらVFを信じてしまうだろうと感動してしまう自分もいた」と熱演に感動。
当該シーンでの田中の口笛は、石井監督から「ここで何かしてほしい」というリクエストに応えたアドリブだそうで、田中は「それもあって余計に緊張の極みでした」と会場を笑いに包んだ。
生前の秋子の親友・三好彩花(三吉彩花)と出会い、互いに支え合いながら穏やかな日常を取り戻そうとする朔也。過去のトラウマから人に触れられない三好と少しずつ心を通わせていく。そんな二人によるレストランでのダンス・シーンも心を震わせるシーンのひとつ。三吉は、「触れられないということが、どれだけ意味をもたらすのか。あのシーンは二人の小さな幸せを表す場面になったと思う」と述べると、池松も「触れ合ってのダンス・シーンだったら全然違う意味のシーンになっていたはず。ダンス・シーンは原作にはないので、石井監督作品と原作が出会ったという感覚があって、幸福なシーンで泣きそうになった」と自信を覗かせた。
続いて、朔也の幼なじみで、朔也に自身と同じリアル・アバターの仕事を紹介する岸谷役の水上。池松とのとある“アクション・シーン”を振り返り、「楽しかったけれど、石井監督が体を小刻みに上下させて『何かないかなあ』と言ってきて……。それに対して緊張していました(笑)。石井監督を満足させられるのだろうかと……。でもその小刻みがなくなると満足してくれたのかなと思って安心しました(笑)」と笑いを交えつつも手応えを語る。
これに池松は「水上さんは一貫して素晴らしく、破滅と紙一重にある時代に追い込まれた若者像を真っすぐに演じていて、見ていて気持ちが良かった」と絶賛した。
池松と妻夫木は『本心』以前にも石井監督とは何度もタッグを組んできた旧知の仲。過去と今での石井監督の変化を聞かれた池松は、「変化はあまりないです。出会った時から今に至るまで自分にとってずっと偉大な方。一緒に映画をやって今年で10年ですが、またこうして石井さんが新たな一歩を踏み出してくれたことを誇りに思っています」と改めてリスペクトを明かしつつ、「変わったことと言えば、お酒が弱くなったところかな」とニヤリ。そして妻夫木は、石井監督と池松について、「ただの仕事仲間というよりも親族に近いものを感じる。だからこそ信じられて、だからこそ賭けてみたいという思いがある」と熱弁。池松も妻夫木に対し、「妻さんと共演ができるたびに特別な安心感と喜びがある。妻さんも中身は全然変わりません」と熱く応えた。
石井監督も、池松と妻夫木に対し「お二人は僕にとっても特別で、仕事仲間でもあるし、人生を共に並走している感覚。これから10年、20年空くかもしれないけれど、また会う時は特別なストーリーを持った映画を一緒に作れるはず。大切な人たちです」と熱い信頼を寄せていた。
物語の始まりは2025年。映画で描かれる時代が、あとわずかで到来しようとしている。そこで2024年を振り返り、石井監督は「本厄だった」と苦笑い。妻夫木は2025年に向け、「健康第一!」と力強く宣言した。水上も「今年は非常に良い年でした。自分の理想を8割がた達成できた気がするので、来年もますます頑張りたい」、三好は「今年は国内外飛び回った充実した1年でした。来年は20代最後の年になるので、30歳くらいから人生の新章がスタートする感覚があって楽しみにしています。いろいろな表現で充実した1年を送りたいです」と抱負。そして池松は、「今年は良いことも悪いこともありましたが、変わらず何事もなく1年を終われて幸せです。映画の中で朔也が最後に未来の世界に自らの手を伸ばしたように、僕も来年は自分の体と心で世界に触れていくことをしていきたい」と抱負を述べていた。
最後に池松は、「この『本心』という映画が、作ったみんなの心と観客の皆さんの心に残って育っていくことを願います。時代と映画を共有しながら、これからの未来を分かち合っていければ嬉しいです。石井さん、キャストの皆さん、そして映画に関わってくれた皆さんに感謝して、その思いと一緒に観客の皆さんには映画を持ち帰っていただきたいです」と呼び掛けていた。
AIや仮想空間、日々著しく進化するテクノロジーが世界中を席巻し、生活様式が目まぐるしく変貌している今。時代に翻弄され彷徨う人間の【心】と【本質】を描いた革新的なヒューマン・ミステリー『本心』をぜひ“今”劇場で見届けてほしい。
公開表記
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
全国大ヒット公開中
(オフィシャル素材提供)