記者会見

『尖閣1945』映画化プロジェクト発表会見

 【登壇者】石垣市長:中山義隆、監督:五十嵐匠(ストームピクチャーズ㈱)、原作:門田隆将、プロデューサー:菊池淳夫、配給:足立喜之(㈱彩プロ)
 【司会】髙清水有子

 『尖閣 1945』映画化プロジェクト発表会見が11月18日(月)、都内で行われ、石垣市長の中山義隆氏、映画監督の五十嵐匠氏、原作者の門田隆将氏、プロデューサーの菊池淳夫氏、配給の足立喜之氏(彩プロ)が出席した。

 敗戦直前に石垣市尖閣諸島に漂着した日本人のノンフィクション『尖閣 1945』(産経新聞出版)の映画化プロジェクトがついにスタート。「この本1冊でいかに尖閣が日本固有の領土であるか、そしてこの島には日本人の遺骨だけでなく、先人の魂がこもっていることを知ってほしい」という願いを込めて執筆した原作者の門田氏のもと、中山石垣市長から映画化の相談がありスタートした企画を、五十嵐監督が「戦後80年を迎える2025年。風化しつつある戦争と戦争がもたらしたものを100年遺る映画としてこれからを生きる若者たちに届けたく、どんな逆境でも信念と矜持を失わなかった石垣に生きる人々の不屈の精神を映画化したい」という想いを込めて撮影に挑む。

 『尖閣 1945』を読み、映像化すべきだと強く思ったという中山市長は「太平洋戦争末期、多くの女性や子どもを乗せた2隻の船が石垣島から台湾に疎開を目指しましたが、途中で米軍の攻撃を受けまして、1隻は沈没、もう1隻は魚釣島に漂着した『尖閣列島戦時連難事件』、そして魚釣島には明治時代から最盛期には248人が住んでいて、鰹節工場など営々とした日本人の生活がありましたが、1940年に鰹節工場が閉鎖され、無人島になっていたことから、食料等がなく餓死者が出る事態となってしまいました。そこで生き残った人たちが船を作り、8人の決死隊を結成し、石垣島に助けを求め、多くの命が救われました」と歴史を説明し、「魚釣島には今でも日本人の遺骨が埋まったままの状態になっております。このような事実を多くの皆様にお伝えすることができればということで、映画化に取り組みたいと考えております」と映画化プロジェクトを持ちかけた理由を明かした。

 加えて、中山市長は11月18日より受付を開始したクラウドファンディング、および企業版ふるさと納税を活用し、その資金をもとに映画化する考えを明かし「今回取り組みますガバメントクラウドファンディングですが、寄付金の使い方を具体的にプロジェクト化したふるさと納税の一種で、そのプロジェクトに共感した方々からの寄付を募る仕組みになっております。一般的なふるさと納税と同様に、税金の控除もありますし、一定の条件を満たせばワンストップ特例制度もご利用いただけます。今回は5万円以上ご寄付をいただきました皆様方の名前を、映画のエンドロールでご紹介させていただきたいと考えております」と紹介し、「企業版ふるさと納税ですが、国が認定した地方創生の取り組みに対して企業が寄付を行った場合に、寄付額を最大90%の法人関係税が軽減される制度となっております」と説明。「現在、全世界で注目されております尖閣諸島を舞台としましたノンフィクション作品を映画化することは、構成に歴史的な史実を伝えていくという意味でも大変大きな意義があるものと考えております。尖閣諸島で起きた史実を1人でも多くの方々に知っていただくために、ガバメントクラウドファンディング、および企業版ふるさと納税に多くの皆様のご理解とご協力をいただけますようお願い申し上げます」と訴えた。

 また、原作者の門田氏は「『尖閣 1945』を出版することは長い間の悲願でした。あそこには日本人の遺骨がたくさん埋まっていて、尖閣諸島には先人の魂や想いが集まっているんですけど、そのことを日本人があまりにも知らなさすぎるということで、ノンフィクション作家として掘り起こしたいということで、長い期間をかけて調べていきました」と言葉に力を込め、「取材の過程で中山市長にもご協力いただきまして、去年の11月にこの本を出版することができたわけですが、これを読んでくれた中山市長から『感激した。映像すべきものだと思う』とご連絡を頂戴しまして、一緒にやらせていただくことになりました」とコメント。「本日からクラウドファンディングが始まったということで、武者震いみたいな高ぶる気持ちが抑えられない感じですが、目標額を低く3億円と設定しているんですけど、3億円では大作はできないということは記者の皆さんもご存知だと思いますので、8億、10億と、皆さんの記事によって、広く日本全国に伝わって、制作資金が貯まっていくといいなと思っております」と報道陣にアピールした。

 メガホンをとる五十嵐監督は「前作が『島守の塔』という沖縄戦を描いたものなんですけど、その沖縄戦を描きながら、石垣を思って調べたことがあります。そこで、石垣でもマラリアがあったり、門田さんの本で知った『尖閣列島戦時連難事件』。僕は驚いたわけですね。『島守の塔』でも戦争を描くつもりはなく、戦争が人間に何をもたらしたのかというものを描こうと思ったわけですが、今回も政治的信条はまったくないです。だけど『尖閣列島戦時連難事件』に関していうと、非常に驚いたのですが、石垣市が中心となってこの映画を作る。映画というのは100年残りますから、今後も文化的にも歴史的にも1つ残すことに意味があるのではないかと思いました」と吐露し、「門田さんの本をよく読むとヒューマン・ストーリーで、一般の方々にも共感できる物語だし、こういうことがあったことをまったく知らない方がほとんどだと思うので、それを映画化する。地方発信の映画はたくさんありますが、地元で終わっている映画が多い。でも、今回の映画は制作費も含めて全国規模の映画になる可能性があると思うので、たくさんの方に観ていただきたいという思いがあります」と目を輝かせた。

 そして、制作スケジュールについて、菊池プロデューサーは「スケジュールに関しまして、1つ大きなポイントがございまして、世界的な異常気象によって台風が頻発していて、つい先日も石垣市に大変な台風が来たと伺っておりまして、私も現地に行こうと思ったのですが、11月頭には珍しい台風ということで、行くことができませんでした。この映画も来年2025年の台風を避けた時期、通常ですと9月以降は比較的台風が少ないということなんですけど、制作的なスタッフリング、キャスティングも含めて、台風を避けた時期である2025年後の秋以降を予定しています」と打ち明けた。

 その後の質疑応答で、門田氏の原作が映画化された『Fukushima 50』のように、劇映画になるのかと質問された五十嵐監督は「役者さんがお芝居をする劇映画になります。原作がヒューマン・ストーリーなので、そこを中心とした感想作になればいいかなと思っております」と答え、役者のキャスティングについては「中途半端に頼めないので、こちら側の基盤ができた段階でオファーをしようと思っています。今回、非常に難しいのは痩せないといけないということですね。飢餓でどんどん痩せていくわけですけど、順番に撮らないと役者は厳しいので、その役者さんが覚悟を持って今回の映画に取り組んでもらわないといけないので、スケジュールがガチガチの役者さんは厳しいかもしれませんね」と語った。

 また、集まった製作費が目標の3億円を超えた場合と、下回った場合に、石垣市としての考えを聞かれた中山市長は「上回った場合は、CGであったり映像的な効果を高めていって、観ている方々に感動していただけるような作品になればと思っていますので、上回った場合は全額映画の制作や配給の広報等に使わせていただきたいなと思っております」といい、「下回った場合は、石垣市ではふるさと納税の枠の中で、尖閣諸島の支援枠を設定させていただいております。これは私どもが毎年、尖閣諸島に調査に行ったり、石垣島で尖閣諸島の情報を発信するセンターを運営していますが、その枠である程度基金が積み上がっていますので、場合によってはそれも活用させていただきたいなと考えております」と明かした。

 さらに、日本固有の領土である尖閣諸島だが、中国が領有権を主張している中、本作を映画化するにあたり、中国への配慮はするのか、また中国からの圧力はあるか尋ねられると、門田氏は「この本を作るのも、映画を作るのも日本の主権があるので、きちんとしたドラマがでてくることは、中国にとっては嫌なことかもしれないけど、日本人のれっきとした歴史でございます。今のところ、中国からの横槍などはまったくございませんし、私たちがきちんとやりますので、何もないと思います」と答えた。

 一方、五十嵐監督に勧められ『尖閣 1945』を読んだという菊池プロデューサーは「あまりにも刺激的すぎないかと思ってびっくりしました。特に中国か関係も含めて注目が集まりすぎているところで、これを映画にできるのかなというのが最初に思った印象でした」と当時の心境を回顧し、「昨年まで東映にいましたが、いま日本の映画界でこういった題材を映画にできるところはどこにもないなと思ったんですね。東映時代も何本か戦争映画をやったんですが、まだ知られていない悲劇や人間ドラマが山ほどあるんですね。それを語れる方がどんどん少なくなっていて、監督や門田先生や中山市長のお話を聞きましたら、戦争を忘れないため、戦争を起こらないために広く映画にすべきだと思いました。スタッフ・キャスト全員、戦争を起こさないために、誇りを持ってやることが必要で、その覚悟を持ってもらえるスタッフをまず大切にして選んで、一緒に仕事をしていきたいなと思っております」と熱く語った。

 続けて、中山市長は「尖閣諸島は我が国の固有の領土で、歴史的事実もたくさんあります。今回の『尖閣 1945』に関しましては、歴史的な史実に基づいての映画化になりますけど、他国からのいろんな問題はないと思っています」といい、「私自身も尖閣を扱う立場にいますけど、『尖閣 1945』で描かれている内容は、島の人間でも知らなかったものがたくさんございますので、この内容をできるだけ多くの皆さんに知っていただいて、尖閣諸島で起こった歴史的事実を国民の皆さん、そして多くの皆さんに共通認識として持っていただきたいと思っていますので、ぜひ頑張っていきたいなと思います」とコメントした。

 そんな本作を配給する立場の足立氏は「私も門田先生の本を読ませていただきまして、史実に基づいた人間ドラマだなと思いました。私もある映画会社で映画興行を42年間やってきました。やはりシネコンに入っているのはアニメであったり、アイドル系が出ているものが多いので、こういう社会性の強い作品は覚悟が必要だと思いますけど、古い映画でも残っている映画はこういう作品だと思うので、こういう映画を配給して、多くの皆さんに観ていただきたいと思っています」と思いを語り、菊池プロデューサーは「今のシネコンはアニメ化やドラマの劇場版がほとんどです。社会的な問題、ましてや戦争に関することを真正面から描いた映画はほとんどありません。これは日本版の『オッペンハイマー』だと思います。私もそれくらいの気持ちでこの映画を作っていきたいと思います」と力を込めた。

キャスト&スタッフ

 監督:五十嵐 匠
 原作:門田 隆将「尖閣1945」(産経新聞出版)
 プロデューサー:菊池 淳夫

 (2025年、日本)

公開表記

 配給:彩プロ
 2026年夏、石垣市先行/全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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