登壇者:成田 凌、中村映里子、森田 剛、竹中直人
『さがす』「ガンニバル」の片山慎三監督がつげ義春のシュルレアリスム作品「雨の中の慾情」を原作に独創性豊かに映画化した最新作『雨の中の慾情』(あめのなかのよくじょう)が、11月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国上映中。
アジア映画で史上初めて米アカデミー賞®作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督の助監督として研鑽を積み、長編映画デビュー作『岬の兄妹』(18)で日本映画界に衝撃を与えた片山慎三監督。予測不能の展開が話題を呼んだ『さがす』(22)や、国内はおろかアジア圏で高く評価された「ガンニバル」(23)など、センセーショナルな作品を次々と世に送り出してきた彼がこのたび挑むのは、今年デビュー70周年を迎える「ねじ式」「無能の人」等で知られる伝説の漫画家・つげ義春による短編「雨の中の慾情」の映画化だ。メインキャストは成田 凌、中村映里子、森田 剛。二人の男と一人の女の切なくも激しい性愛と情愛が入り交じる、数奇なラブ・ストーリーが誕生した。
11月30日(土)、本作の公開を記念して公開記念舞台挨拶が実施された!
舞台挨拶には、主演を務める成田 凌に加え、共演の中村映里子、森田 剛、竹中直人が駆けつけ、ついに公開を迎えた心境や台湾での撮影エピソード、片山監督との撮影秘話などを交えながら和気あいあいと当時の思い出を語り明かしたほか、さらに、誰にも見せたことがない自身の一面、もしくは、台湾での長期ロケ撮影で目撃した共演者の思いがけない素の瞬間などを披露している。
上映が終わり、客席からは温かい拍手がわき起こる中登場したキャスト陣。映画を観終えたばかりの観客に向け、成田は「朝から観る映画じゃないかもしれませんが……(苦笑)。お疲れさまでした!」と挨拶し、前日についに映画の公開を迎えた心境について「熱いオファーをいただいて、この日を数年、心待ちにしていましたけど、これで映画が皆様のものになると思うと、不思議と寂しい気持ちになっています」と複雑な心境を吐露。
撮影で印象的だったシーンや苦労したことを尋ねられると、成田は「(森田さんが演じた)伊守に『いい顔するねぇ、義男くんは』と言われるんですけど、台本を初めて読んだ時から『いい顔しなきゃ……』ってすごく考えましたね。リハーサルして、テストして、本番、本番、本番……と全部迷って、全部違う顔をしていたと思います」と当時を述懐。森田は成田が見せる表情について「何とも言えない顔をするんですよね。毎回違いましたし、すごく楽しかったです」と振り返っていた。
中村は印象的なシーンとして、福子のラスト・シーンを挙げ「本当に何十回も、ものすごく回数を重ねて撮って、片山監督もなかなかOKを出せず、悩んでしまって……。私にとっても、あのシーンは福子として一番心がグワングワンと動いていたシーンだったので、やればやるほど分かんなくなっていきました」と苦労を明かしたが、成田は同シーンについて「あれを観に行くだけで、映画館に行く価値があると思います!」と称え、中村はその言葉に「義男さんを目一杯感じてやったシーンなので、すごく大事なシーンになっています」と嬉しそうに微笑んでいた。
森田は、印象的なシーンとして戦場での1カット撮影に触れ「長回しで、スタートが掛かったら、最後まで何があっても続けなきゃいけなくて、実際に倒れたり、ぶつかったりがあったけど、とにかく最後まで行くという気合いだけでやったシーンでした」と明かし、成田さ「1カットを1日かけて撮るって、贅沢過ぎるシーンだなと思いました」と充実した表情を見せていた。
一方、竹中は「中村映里子さんと成田 凌さんと私だけだったんですけど、宿から3時間半くらいの場所で、山の頂上の真っ暗な場所で、撮影するシーンがあって。夜になると鹿の声がしたりもして……」と思い出を振り返り、現場に行くまでの道も「舗装されてない、ガードレールのない道の崖っぷちを走ったり……」と明かし、台湾撮影ならではの秘話を披露。
さらに、竹中は現場で初共演の森田を怒らせてしまったというエピソードも告白。「僕はよく現場で口笛を吹いちゃうんですけど、剛は心の中で『ピーピーうるせぇな』って思ってたらしくて(笑)、さりげなく僕に教えてくださって『いけないな』と反省しました」と苦笑交じりに明かしていた。それに対し森田は「(口笛が)台湾の風景ともマッチして……。本当にずっと吹いてらっしゃるんで、『うっせーな』って(笑)。『みんな、思ってないのかな?』って思ったんですけど(笑)、台湾の風景とずっと残っています。感謝してます(笑)」と明かし、竹中はこの言葉に「剛とは初めてだったので、何とか芝居を邪魔してやろうという意識もちょっとあって(笑)。年上の俳優として口笛で威嚇を……。全部嘘です! 本気にしないでください(笑)」と竹中ならではの冗談を飛ばし、客席は笑いに包まれていた。
台湾での撮影では、実際に現場に行ってみないと分からないこと、現場で即興的に生まれるものも多かったそう。バスタブが登場する印象的なシーンに関しても、成田は「(台本では)本当はベッドの上でゆっくり話すっていうシーンだったけど、現場に行ったらバスタブがあって(笑)、『え? ここ……?』って。毎日、現場に行かないとどういうロケーションか分からなかったです」と明かす。
中村も、福子が突然、鶏を持った男性にプロポーズされるシーンについて「その場に行ったら『鶏がいるな』ということで、その場で監督が『この鶏は卵をいっぱい産むから僕と結婚して』みたいなセリフを役者さんにつけていました(笑)」と語り、成田は「それで笑っちゃって、3回くらいNGを出しました(笑)」と型破りの片山監督の演出を明かしてくれた。
森田も「朝行って、(何をするか)知るという緊張感があって、何回もテイクを重ねて、だんだんなじんでいって、何をやってるか分かんなくなってきて……そこからにじみ出るものを抽出する――『撮ってくれるんだ』という信頼関係の下でやらせてもらいました」と楽しそうに振り返った。
竹中はつげ義春の作品の大ファンで、自らの初監督作品で『無能の人』を映画化したこともあるほど。本作を手掛けた片山監督について、「片山監督は、僕の監督作品で助監督もやってくださって、その時から印象に残っていた個性的な人。今回、自分を呼んでくれてとても嬉しかったです。僕は、二十歳の頃につげさんを深く知ったんですが、『隣りの女』とか『池袋百点会』とか『夏の思いで』とか好きだった作品が(この映画に)全て詰め込まれていて、『ここを使ってるんだ!』という発見がいくつもありました。二十歳の頃、まだ髪の毛が風になびくくらいいっぱいあった自分がページをめくっていた頃を思い出す、とても素敵な映画でした」と最大限の賛辞を送っていた。
さらに、映画にちなんで、この映画を通じて知った共演陣の“誰も知らない素顔”について尋ねられると、成田は「いま思い出したんですが、現場でミント・タブレット食べてたら、竹中さんが近寄ってきて。『食べますか?』って。(そのタブレットを食べた)竹中さんが『気持ちいいね』っておっしゃったんです。メッチャ良い表現だな!と思いました。以前、共演した時も竹中さんがチョコをくれた時に『チョコは魔法だからね』って言ってくださったのをすごく覚えていて。食べるたびに竹中さんを思い出しています」と竹中にしかだせない唯一無二の魅力を熱弁!
一方、中村は「森田さんは本当に現場で静かにいられる方で……『楽しいのかな……?』と何となく思ってたんですけど(笑)、ある日、台湾のスタッフの方が鶏肉を丸ごと煮込んだ料理をもってきてくださったんです。ニワトリさんの顔を俳優の松浦祐也さんが『俺、食べてみる』って言ったんですけど、あの時の森田さんが、とっても楽しそうで。『森田さん、こんな大きな声で笑うんだ!?』って思いました(笑)」と現場で森田が見せた意外な一面を明かしていた。
これについて森田は「ずっと楽しくなかったんですけど、その時は本当に楽しくて(笑)」とドストレートに明かし、会場は大爆笑! 成田は「毎日楽しくなかったんだ、そっかー(苦笑)」と複雑な表情を浮かべながらも楽しそうな様子で当時を思い出しており、そんな森田は成田について「病室でのシーンで、横になって、頭を打ちつけるシーンがあって。成田さんは実際に床にガンガン打っていたんです。『もういいだろ。そんな打ちつけなくても……』って思うくらい。ギリギリのところを行く人で、刺激的でした。感動したのを覚えてます」と役者魂に感嘆していた。
竹中は、よほど森田を口笛で怒らせたことが心に残っているようで「(うるさいと思っていたことを)のちに聞かされたので、いまだに深くズシンと……」と語り、会場は再び笑いに包まれていた。
舞台挨拶の最後に成田はキャスト陣を代表して「ピュアでクレバーでクレイジーな片山監督が作り出した、本当に唯一無二の愛の物語だと思います。観ていただいてすごく嬉しいなと思っていますし、よかったら、皆さんの大切な人に言葉で伝えていただけたらと思います」と呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。映画『雨の中の慾情』はTOHOシネマズ 日比谷ほか大ヒット上映中。
公開表記
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
TOHOシネマズ日比谷ほか全国上映中