佐藤そのみ監督による2本の中編映画『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』。12月7日(土)からの劇場公開を目前にして、このたび本予告を解禁! さらに本作に届いた著名人の方々からのコメントが到着した。
もし、今年公開される映画のうち一本しか10年後に持っていけないとしたら、『春をかさねて』を選びます。 ――三宅 唱監督
『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』は、1996年生まれ、宮城県石巻市出身の映画作家・佐藤そのみが、自身の故郷を舞台に撮った中編映画。『春をかさねて』は震災で妹を亡くした14歳の祐未を主人公に、二人の女子中学生の繊細な心の揺れを瑞々しく描き出すフィクション。『あなたの瞳に話せたら』は、津波で甚大な被害を受けた石巻市立大川小学校で友人や家族を亡くした当時の子どもたちによる、書簡形式のドキュメンタリーだ。佐藤監督が大学在学中の2019年に撮られた両作品は、当初は配給・公開の予定はなかったものの、2021年より全国各地の団体・自治体や学校機関からの要望に応える形で自主上映会を実施、30ヵ所以上で上映され評判を呼び、ついに今回が初の劇場公開となる。
このたび解禁となる本予告では、『春をかさねて』の大震災から間もない被災地で暮らす女子中学生たちの会話、ドキュメンタリーのなかの手紙の一節を切り取りながら、映像作家の小森はるかによる「進んでいく時間、止まったままの時間。震災によって重ならなくなった過去と現在を抱えながら、歳を重ね、大人になっていくあの時の子どもたち。彼らには“もうみんな十分苦しんだ”と、そのための物語が必要だったと、誰か気づいていただろうか」というコメントを引用。また現在は震災遺構として立入禁止となっている大川小学校の校舎内での貴重なシーンも垣間見ることができる。
被災者である佐藤監督が、「津波によって失ってしまったものへの悼み、愛情、震災によって生まれた人間関係の亀裂、ときに苛立ちや違和感、自身への嫌悪感やあきらめ……これらに、一度正面から向き合わなければ、きっと次の作品は作れないのだろう」という覚悟で撮った映画に対し、せんだいメディアテーク館長の鷲田清一は「ちぎれ、もつれ、散らばってしまった心はいつか元に戻せるのだろうか? 時がやがてそれを平らにしてくれるのかもしれないが、もっと大事なのはそれを他人と持ちあえるかどうかだと、この二つの映画に教えられた」、いとうせいこうは「死者に向かっても生者に対しても、鎮魂でないカットはひとつもない映像だ」と想いを寄せた。また、映画監督の三宅 唱は、「もし、今年公開される映画のうち一本しか10年後に持っていけないとしたら、『春をかさねて』を選びます。題材ゆえというよりも、映画としての具体的な探求ぶりに、その真剣な実践に、同じ時代の作り手として、一人の人間として、深く驚き、反省し、刺激を受けました」、文筆家・映像作家・俳優の小川紗良は「同い年の彼女のまなざしに心から敬意を抱いた」と、映画の作り手としての在り方を賞賛する声も届いている。
なお、シアター・イメージフォーラムでは初日12月7日(土)は佐藤そのみ監督による舞台挨拶とQ&A、12月10日(火)には小森はるかさん(映像作家)を迎えたトークが決定! 公開期間中には、佐藤監督の大学時代からの友人・山中瑶子監督など縁の深いゲストとのトークも予定している。詳細は追って劇場サイトおよび映画の公式サイトにて発表される。
コメント全文
いとうせいこう(作家・クリエーター)
死者に向かっても生者に対しても、鎮魂でないカットはひとつもない映像だ。再構成であれ、ドキュメンタリーであれ。あのとき大川小学校の子どもたちに何があったかを、何度も語り直すこと、記録すること、伝えること。それがそこで生きる人の日々の営みなのだと頭を垂れる。
今村純子(美学・表象文化論/立教大学特任教授)
たとえ震災のような大変な経験がなくとも、 人が生きてゆくというそのことだけでも大変で、 そのなかで自分の感受性を正確につかむことは難しく、その感受性が表現に結実していることに驚きました。ただただ「花が花の本性をそのまま開花させる」という、 素朴であるのにもっとも難しい表現に触れたと感じました。
小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)
切り取られてきたものを、自らの手で「撮り戻す」。その覚悟があまりに強く押し寄せて、私はただ、見つめることしかできなかった。自分の無力さを知り、同い年の彼女のまなざしに心から敬意を抱いた。
永井玲衣(哲学者・作家)
この作品は、ひとつひとつの言葉がとぎすまされている。たっぷりとした時間と、ていねいな葛藤が、言葉をはりつめさせるのだろう。作品を受け取ったわたしたちにできることは、今も、これからも、もがきながら向きあうひとたちをひとりにしないことなのだろう。
三浦哲哉(青山学院大学教授、映画研究・評論)
他人に撮られてしまうことの違和感は、自分自身が撮ることで消えただろうか。
おそらくそうではないだろう。
しかし、違和感からけして目を背けず、違和感を抱きかかえながら撮り切ることで、この真摯で勇敢な制作者は、確実に大きな一歩を踏み出し、これまで誰もスクリーンで見たことのない光景を現出させた。
三宅 唱(映画監督)
心打たれました。つい何度も涙がこぼれ落ちそうになりながら、それを押しとどめられるような凄みがありました(といっても2回目は、冒頭とタイトルとバスと合唱と他いろいろと、ぜんぜん我慢できませんでしたが)。もし、今年公開される映画のうち一本しか10年後に持っていけないとしたら、『春をかさねて』を選びます。題材ゆえというよりも、映画としての具体的な探求ぶりに、その真剣な実践に、同じ時代の作り手として、一人の人間として、深く驚き、反省し、刺激を受けました。
鷲田清一(せんだいメディアテーク館長)
ちぎれ、もつれ、散らばってしまった心はいつか元に戻せるのだろうか? 時がやがてそれを平らにしてくれるのかもしれないが、もっと大事なのはそれを他人と持ちあえるかどうかだと、この二つの映画に教えられた。
『春をかさねて』
「妹さんの安否を知ったときのこと、教えていただけますか」
14歳の祐未は、被災地を訪れるたくさんのマスコミからの取材に気丈に応じている。一方で、同じく妹を亡くした幼馴染・れいは、東京からやってきたボランティアの大学生へ恋心を抱き、メイクを始めた。ある放課後、祐未はそんな彼女への嫌悪感を吐露してしまう。
二人の女子中学生の繊細な心の揺れを瑞々しく描き出すフィクション。震災遺構として現在は立入禁止となっている大川小学校などで撮影された。
(2019年、日本、上映時間:45分)
キャスト&スタッフ
製作・監督・脚本・編集:佐藤そのみ
撮影:織田知樹、李秋 実
録音:養田 司、中津 愛、工藤忠三
出演:齋藤小枝、齋藤桂花、齋藤由佳里、芝原 弘、秋山大地、安田弥央、幹miki、鈴木典行
ギャラリー
『あなたの瞳に話せたら』
東日本大震災による津波で児童74名・教職員10名が犠牲になった石巻市立大川小学校。大川小で友人や家族を亡くした当時の子どもたちは、あれから何を感じ、どのように生きてきたのか。それぞれが故人に宛てた手紙を織り交ぜながら、自身も遺族である「私」がカメラを持って向き合う。震災から8年半、時間が変えたものと変わらないもの。書簡形式のナレーションで素朴に語られる言葉に宿る、やわらかな感性に胸を打たれる。
◆日本大学芸術学部映画学科 2019年度卒業制作
◆東京ドキュメンタリー映画祭2020 短編部門「準グランプリ」「観客賞」受賞作
◆イメージフォーラム・フェスティバル2020「ヤング・パースペクティヴ2020」入選作
(2019年、日本、上映時間:29分)
キャスト&スタッフ
監督・撮影・録音・編集:佐藤そのみ
ギャラリー
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公式X:@aruharufilm #春あなた
公開表記
配給:半円フィルムズ
12/7(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
(オフィシャル素材提供)