登壇者:野水伊織(映画感想屋声優)、梶野竜太郎(映画アナライザー)
タイの伝説的ホラー映画『人肉ラーメン』の公開記念トークショーが12月1日(日)映画の日に開催された。“映画感想屋声優”の野水伊織が登壇し、“映画アナライザー”の梶野竜太郎とともに、本作の魅力を語りつくした。
野水は本作について「まず観たときに泣いてしまって。こんなに叙情的で、泣けて、ちょっと昭和の香りがするホラーがあるんだって感動したんですよね」と熱を込めてコメント。MCの梶野も「ただ単に残酷な人をダシにした映画を撮りました、じゃなくて悲しさがすごいある」とそれぞれが率直な感想を熱く語った。
本作を元々大好きだった二人。野水はホラー漫画家に勧められたことで15年前に発売されたDVDで鑑賞し、人間食べ食べカエルさんなど周りのホラー好きに普及してきた作品だったという。タイ本国ではラーメン屋からのクレームなどもありカットされている部分も多く、「今回R18+ではありますが、まさかアンカット版で上映されると思わなくて驚いたんですよ」と語る。「よかったですね、日本は怒られなくて。(日本のラーメン屋さんと)コラボとかしないですかね?」といたずらな笑顔を見せた。加えて野水は「デジタルリマスター版で映像がキレイで、さらに全編字幕の翻訳も見直されて意味がとりやすくなっていました。“贖罪(ラーメンの食材)になれば罪も消える“は後世に残る名台詞だと思うんです」と太鼓判を押していた。
過去と未来をそれぞれ表すためにモノクロとカラーのシーンを行き来する本作。この演出に少々難解さと深みを感じたという梶野。その中でも「モノクロであることで悲しさとか、少女時代のいたたまれなさとか“トラウマ”みたいなものが出ていると思う」と恐怖感が増す演出を高評価。「『人肉ラーメン』というタイトルで、なんであんなに哀愁を語るんだっていうね」と野水と会場と共感しあっていた。「恐怖と哀愁がちゃんとあって、あとは皆で語ってくださいっていう、答えを持ってるけど言わないっていうのがこの映画の深さかな」と梶野。「余韻がちゃんとありますよね」と野水も頷いていた。
本作の主人公・バスの描かれ方について、女性的な観点からの意見を聞かれた野水は「彼女がギリギリの精神状態の中でもお母さんであろうとして、幻想の娘を人形と一緒に見ていたんじゃないか」と考察。「死体も捨てられないし埋められないのは、娘が生きていると思いたいからで、だから水瓶の中に残し続けていたんじゃないかなと。シングル・マザーの悲しみがすごくあった」と引き付けられた描写について語った。「人をバラしているところに驚いている場合じゃなく、なんて悲痛な映画なんだと感じた」と重ねて強調。梶野は「こういう話を日本が撮った場合、もう少し明るくなってるし、エグイシーンも無くなってくると思う。タイは痛々しいところも何もかも、ちゃんとやる」とタイ映画ならではの描かれた方ではないかと考察した。
この作品に限らず、全般的にホラー映画が好きという野水。ポイントとして「ゴアがすごい好きなので、腸が出てくると、とても嬉しい。“腸出してくれてありがとうポイント”が入る」と独特な好みを告白した。そして、ホラー映画全体の魅力は“ストーリーの良さ”にあるという野水。「いろいろなものと相性がいいと思う。エロとかコメディとか、こういった叙情的なファンタジーっぽい設定とも合う」とストーリーへの組み込みやすさに注目していることを明かす。これを聞いた梶野も「撮る側とすると、ありえない映像を作りたいからホラーに行っちゃうっていうのはあると思う」と同意した。
イベントの最後には、本作の今後の展開として『人肉ラーメン2』があったとしたら、を妄想する二人。「“人肉チャーハン”にしますか」「“人肉美少女映画”作りましょう!」とひとしきり盛り上がった後に、「150cmの女キラーが人肉チャーハン作る話はどうですか?」と野水自らも出演をアピール。「私はいつか殺人鬼をやりたいんですよね」とまさかの暴露も飛び出し、盛り上がった勢いのままイベントを締めくくった。
『人肉ラーメン』作品情報
キャスト&スタッフ
監督・脚本・撮影・編集:ティワ・モエーサイソン
出演:マイ・チャルーンプラ、アヌウェイ・ニワートウォン、ウィラディット・スリマライ、ラッタナバラン・トッサワット、ドゥアンタ・トゥンカマニー、ピムチャノック・ルーウィサードパイブン
(原題:Meat Grinder|Thai: เชือดก่อนชิม; RTGS: Chueat Kon Chim、2009年、タイ、上映時間:103分、R18+)
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公開表記
配給:ユナイテッドエンタテインメント
11月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中
(オフィシャル素材提供)