今年で7回目を迎える東京ドキュメンタリー映画祭2024(11月30日k[土]〜12月13日[金]まで、新宿K’s cinemaにて開催中)の授賞式が、折り返しの12月6日に開催された。受賞作品などコンペティション入選作品は、12月7日(土)より2回目の上映がある。
授賞式
日時:12月6日(金) 19:30〜20:30頃
会場:新宿K’s cinema
受賞者発表: 小林 茂、安岡卓治、松崎まこと、竹藤佳世、北村皆雄
受賞作品一覧
■長編コンペティション部門
グランプリ:
『OKAは手ぶらでやってくる』監督=牧田敬祐
準グランプリ:
『わたしを演じる私たち』監督=飯田基晴
観客賞:
『北鵜島』監督=ジョン・ウィリアムズ、岩崎 祐
■短編コンペティション部門
グランプリ:
『あなたが私のパパですか?』監督=太田あきの
準グランプリ:
『23通のありふれたラブレター』監督=仲村 淳
観客賞:
『浮草』監督=モハネド・ガネム
■人類学・民俗映像部門
グランプリ(宮本馨太郎賞):
『ターニャの夏と冬』監督=アレクサンドル・アヴィロフ
準グランプリ:
『シカ・スバール』監督=ディオゴ・ペソア・デ・アンドラーデ
奨励賞:
『音、鳴りやまぬ。』監督=長岡 参
観客賞:
『グナワとの遭遇』監督=栗村 実
本年の審査員は、長編コンペティションは小林 茂(映画監督)、安岡卓治(映画プロデューサー)、短編コンペティションは松崎まこと(映画活動家/放送作家)、竹藤佳世(映像作家)、人類学・民俗映像は北村皆雄(映画監督)、髙柳俊男(法政大学国際文化学部教授)。髙柳は欠席となったが、それぞれが受賞者と授賞理由を発表した。
■長編コンペティション部門
グランプリを受賞した『OKAは手ぶらでやってくる』の授賞理由について、審査員の安岡卓治は、「この作品を作るために費やされた努力の質量、登場人物の多さ、さまざまな場所で撮影をされている。幼少期の苦悩から亡くなる直前のご本人の映像まで実に丹念に織り込んできた」と挙げ、小林 茂は「OKAさんが貧しい人たちを援助する中で、『彼らを助ければいいっていうわけではない』という実感がこもった言葉が映画に詰まっていた」と話した。
牧田敬祐監督は、「ドキュメンタリーの映画祭はあまりないので、こういう形でやっていただけていることをありがたく思っています。こういう素晴らしい映画祭でこうした賞をいただけまして、感謝申し上げます」と感謝を述べた。
準グランプリの『わたしを演じる私たち』について、小林は「精神疾患と言われている人たちが何十人も出るんだけれど、私自身の苦しみや不安とリンクするところがあった」と普遍性を挙げ、安岡は「演劇という一つのタイムテーブルの中で、幾つもの難問が彼らを襲うけれど、乗り越えるごとに少しずつ表情が変化して行くのがドキュメンタリーならでは」と評した。
飯田基晴監督は、「キャリアも長くなってきたんですけれど、賞には縁がなかったので、このような形で作品を評価していただいて、本当にありがたく思っています」と受賞の喜びを語った。
観客賞の『北鵜島』については、安岡は、「本作の季節感と画の美しさはこの土地ならではの個性を捉えていたし、そこに暮らす人々がとてもしなやかでおおらか。厳しい自然の中にあるにもかかわらず、たくましさみたいなものを感じた。監督がウェールズご出身で、ナレーションがポエティックで、英語の詩を詠っているかのよう」と評した。
ジョン・ウィリアムズ監督は、「北鵜島に住んでいる出演した友達のための賞だと思うので、早く受賞を伝えたいです」と話し、岩崎 祐監督は、「ジョンさんに北鵜島に連れて行ってもらう形で、このプロジェクトに参加して、このような賞をいただけて嬉しいです」と話した。
■短編コンペティション部門
グランプリの『あなたが私のパパですか?』の授賞理由について、審査員の竹藤佳世は「“お父さん探し”はある意味定番だけれど、『ああよかった、パパ〜』ではなく、一生に一回しかない感動の瞬間に『絶対カメラを離さない』『絶対切り取ってみせる』という根性を感じた」と評価。
太田あきの監督は、沖縄からのビデオメッセージで、「この映画は、家族と向き合うこと、自己受容がテーマ。観てくれた人が自分ごととして何か受け取ってもらえたら、本当にありがたいです」と話した。
審査員の松崎まことは、準グランプリの『23通のありふれたラブレター』について、「戦争のシーンがあるわけじゃないのだけれど、写真の構成、手紙の朗読、遺族の証言だけで、『日常が壊れて行くというのはこういうこと』という反戦のちゃんとしたドキュメンタリーができるんだ、プロの技量だと感じた」と授賞理由を説明した。
仲村 淳監督は、「いただけると全く思っていなくて、腰が抜けそうです」と素直に喜びを語った。
観客賞は『浮草』が受賞。モハネド・ガネム監督は、「日本で撮った作品なので、日本で賞が獲れて嬉しいです」と日本語で語った。
■人類学・民俗映像部門
人類学・民俗映像部門の審査員の北村皆雄は、一緒に審査をした髙柳俊男がまとめた授賞理由を代読した。
グランプリ(宮本馨太郎賞)を受賞した『ターニャの夏と冬』(監督=アレクサンドル・アヴィロフ)は、「人間にとって生きるとは、家族の絆とは、近代文明とは何かを改めて考えさせる作品」と評された。
準グランプリの『シカ・スバール』は、「闘鶏という切り口を通じて新興国家・東ティモールが経てきた歴史と独立後の現在の課題を描き出そうとする意欲作」との評価を得、ディオゴ・ペソア・デ・アンドラーデ監督は、急遽ポルトガルより動画で「この映画が闘鶏や伝統文化について、さまざまな社会と人々の間に対話をもたらすことを望んでいます。皆様が映画を観終わった後に豊かになり、東ティモールについて知識を得ていただけるとうれしいです」とコメントを寄せた。
審査員の二人は、「海外・日本含めて238本応募がありましたが、その内日本の作品は20本位で、『日本の作家たち頑張れ』という激励の意味を込めて奨励賞というものを今回特別にお願いして作ってもらいました」と奨励賞について説明し、奨励賞を受賞した『音、鳴りやまぬ。』について、「コロナ禍で演じることができない辛さや内面の葛藤、継承の営みなどを丹念に追っていて、見応えがありました」と授賞理由を語った。
長岡 参監督は、「徳島から来た甲斐がありました」と急遽贈呈された奨励賞の受賞を喜んだ。
観客賞を受賞した『グナワとの遭遇』の栗村 実監督は、「大画面で上映していただく機会があっただけでも嬉しかったんですが、観客賞までいただいて、楽しんでいただけてよかったです」と喜びを隠しきれない様子だった。
最後に、プログラマーの佐藤寛朗が「撮ることは簡単になってきたけれど、向き合うことはすごく難しいですよね。それに対して僕らができることは一本一本に向き合うこと。その中で『これはいい』と思ったものを皆さんに共有することで、皆様にも向き合っていただきたい」と観客にメッセージを送った。
東京ドキュメンタリー映画祭2024
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<会場>
新宿ケイズシネマ
【料金】
一般 1600円 大・高1400円 シニア1200円
※ ご鑑賞の3日前0:00より上映時間の30分前まで劇場サイトよりチケットがご購入いただけます。
●各回定員入れ替え制、全席指定
●上映開始後のご入場は、お断りさせて頂く場合がございます。
●満席の場合は入場をお断りさせていただく場合がございます。
●作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合がございます。あらかじめご了承下さい。
12月13日(金)まで新宿K’s cinemaにて開催中
(オフィシャル素材提供)