『PERFECT DAYS』最終舞台挨拶

　登壇者：役所広司、柳井康治（企画・プロデュース）、高崎卓馬（共同脚本・プロデュース）

　昨年12月22日に東京・TOHOシネマズシャンテで公開されて１年以上ロングラン上映され、今年12月26日に最終上映日を迎えた映画『PERFECT DAYS』の最終舞台挨拶が行なわれ、主演の役所広司と、柳井康治（企画・プロデュース）、高崎卓馬（共同脚本・プロデュース）が登壇して感謝の思いを伝えた。当日は、ヴィム・ヴェンダース監督のコメント動画も流された。

　本作は、東京・渋谷でトイレの清掃員として毎日働く平山（役所）を主人公に、男の日々の暮らしが描かれる。

　本作は、22年５月にヴィム・ヴェンダース監督がドイツから来日して製作が発表された。東京・渋谷区で20年から行われている、世界的に活躍する16人の建築家やクリエーターが、同区内17ヵ所の公共トイレを新たなデザインで改修するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」で作られたトイレを舞台に、ヴェンダース監督が脚本も書いて製作した。

　渋谷でトイレの清掃員として働く平山を演じた役所は、昨年の12月23日に開催された公開記念舞台挨拶にも登壇しており、「１年間のロングラン後に舞台挨拶をするって、デビューしてからも初めてで、やったことがないので何を話して良いか分からない」と奇跡のロングラン上映に戸惑いながら挨拶。上映館の東京・TOHOシネマズシャンテは、ヴェンダース監督が87年にカンヌ映画祭監督賞を受賞した『ベルリン・天使の詩』が88年に日本公開され、30週間ロングラン上映された場所でもある。

　役所は、23年５月にカンヌ映画祭男優賞を受賞し、作品は米アカデミー賞®国際長編映画賞（旧外国語映画賞）にノミネートされた。これまでに約90の国と地域で上映されてきた。役所は「いろんな映画祭に連れてってもらいましたね。訪れた国でその国の観客と交流して映画の力を感じました」と報告。

　満員の会場に目をやり、役所は「配信もされているのに劇場に来てくださったお客さんってほんとに神様ですね。本当にありがとうございます」と感謝の言葉を伝えた。

　役所は、作品のオファーがきた時を振り返り、「企画の内容が素晴らしかったので“参加したい！”と思いました。この映画は特別なものになりました」と話した。

　役所は、「企画が出来たときに柳井さんが、平山さんに『世界中の人が会いに来てくれるような映画になるといいですね』とおっしゃっていました。その言葉から僕の役作りが始まったんです」と話した。

　会場には多くのファンが集結。初めて鑑賞した観客や何回も観たという人のほかに中国から訪れて10回鑑賞した人、さらには「30回以上観た！」という声もあがって役所は驚きで眼を丸くしていた。

　この日は、個人プロジェクトとして21年に有限会社MASTER MINDを立ち上げ、企画発案、出資、製作と映画初プロデュースを手がけた柳井康治と、同じくプロデューサーで共同脚本を務めた、高崎卓馬も登壇。

　高崎は、「最終日にもこんなにたくさんの方に来ていただいて、ウルッときました。ありがとうございます」と感謝を伝えた。また、高崎は、かつて同劇場でヴェンダース監督作品を観たことを明かし、「（『PERFECT DAYS』が）毎年、年末にかかって、皆さんが必ず観る映画になるといいなと思います。応援して下さい」と願った。

　柳井は「役所さんから『トイレには神様がいるらしいので、きっとうまくいきますよ』というメールをもらって、心強かったです」と話す。

　役所は「トイレを見物するツアーが出来て、世界の人がトイレを見に来て、用を足してくれているそうです(笑)」と作品の成功に喜びを隠せない。

　ヴェンダース監督から「『PERFECT DAYS』を撮影し始めてから今に至るまで、すべての時間が最高の贈り物です。その体験を皆さんと分かちあえて、とてもうれしいです」とメッセージが届けられた。本作は国内の興行収入13億円を記録し、ヴェンダース監督作品としては『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』を抜く世界興行成績を収めている。

　最後に、役所は「この映画は“トイレ”というものを切り口に始めた物語。次に使う人のためにもきれいにしょうという気持ちになると思います。日本人の美しい心のアピールになるのでは。僕も公衆トイレをきれいに使うと、改めて誓います！」と客席に向かって伝えた。