イベント・舞台挨拶

『雪の花 ―ともに在りて―』公開記念舞台挨拶

© 2025映画「雪の花」製作委員会

 登壇者:松坂桃李、芳根京子、役所広司、小泉堯史監督

 映画『雪の花 ―ともに在りて―』の公開記念舞台挨拶が都内で行われ、主演の松坂桃李、共演の芳根京子、役所広司とメガホンを取った小泉堯史監督が出席してクロストークを行った。

 本作は、吉村 昭の同名小説を映画化。江戸時代の末期を舞台に、天然痘と命がけで闘った福井藩の一人の町医者・笠原良策(松坂)と、その妻・千穂(芳根)の愛と感動の実話が描かれる。

 実在の人物である町医者(漢方医)笠原良策役を演じた松坂は「時代劇は以前芳根さんとご一緒した『居眠り磐音』(2019)以来となりますが、改めて時代劇っていいなって思いました」と目を輝かせながら挨拶。

 松坂は、小泉監督との撮影現場を振り返って、「朝、現場に入ると照明もカメラもすべてセッティングされていて、段取りとテストをやってから本番――という早い流れで撮影が進んで、昼過ぎか、遅くとも午後3時頃には終わります。その後は翌日のリハーサルや本読みをするという充実した時間を日々過ごしていました。日々の撮影が健やかな状態で行われました」と笑顔で報告した。

 また、医師としての役作りについて、松坂は「当時(江戸時代)は漢方医学が主流でしたが、そこに蘭方を取り入れて、未曾有のウイルスをどう治していったらいいかというプロセスが、とても大変で、何よりも未知で不安なものに対して感じる恐怖みたいなものは、昔も今も変わらないんだなというのを実感しました」と話した。

 さらに、雪山を越えるという過酷な撮影もあったことを明かした松坂だが「良策の不屈の精神が折れなかったのは、素晴らしい妻がいたからです」と隣の芳根に感謝の目をむける。

 良策の妻・千穂役を演じた芳根は、「撮影中は小泉監督の『本番!』という声を聞くと、自分の心臓の音が聞こえるくらいにすごく緊張していました。でも、小泉監督は自然をも仲間にしてしまわれる方で、緊張しているのに自然の音が耳に入って来るという心地よい穏やかな現場でした」と充実の笑顔で話した。芳根と小泉監督のコラボは映画『峠 最後のサムライ』(2022)以来となる。

 良策が教えを請う京都の蘭方医・日野鼎哉役を演じた役所は「誠実で志に向かって諦めない良策という役は、松坂くんにピッタリ。普段の松坂くんが良い人なのかどうかは知りませんれど……(笑)」と会場を和ませるコメンをトして笑いを誘い、「この役は、松坂くんしか思い浮かばないような役。男でも惚れちゃう感じがします」と称賛。役所から褒められた松坂は「今日はゆっくり眠れそうです!」と満面の笑みだった。役所と松坂は5度目の共演となる。

 また、松坂は役所との共演を振り返り、「役所さんが演じる鼎哉先生のセリフで『名を求めず、利を求めず』という言葉が印象に残っています。そのセリフを聞いて、僕にも言われているような刺さり方がしました。そんなことはこの仕事をさせてもらう中で今まで味わったことのない感覚で、それが今でも残っていて、凄かった」と役所への深いリスペクトの気持ちを吐露した。さらに、松坂は、鼎哉先生が授業をするシーンで、「役所さんを先生として授業を受けられる感覚が楽しくて、毎日いい時間でした」と嬉しそうに話した。

 それを受聞いた役所は、ちょっとテレながら「先輩を立てて褒めてくれてありがたいですね~」と優しい微笑みを浮かべた。

 松坂は芳根の太鼓を演奏するシーンに触れて、「圧巻でした」と芳根の努力を大絶賛。「現場で久しぶりに会ったときに、芳根さんの手首がテーピングだらけで、どれだけ大変なことだったんだろうって。撮影が終わったとき、芳根さんは泣き崩れましたが、あれは忘れられないですね……」と感動を口にした。

 芳根は、「殺陣の撮影のときには監督が『芳根京子はこんなもんじゃない』って言ってくださったり、太鼓の練習場に何度も来てくださいました。小泉監督が鼓舞してくださることがモチベーションに繋がりました」としみじみと話した。

 芳根は、太鼓のバチさばきが今も体に染みついていると明かし、「細長いものを持つと、手首の角度がバチを持つときのようになってしまいます(笑)」と話し、ポーズを凛々しく決めて見せ、会場から大きな拍手を浴びた。

 小泉監督は、本作の現場に黒澤監督の私物である薬などを作るための道具・「薬研(やげん)」(映画『赤ひげ』で三船敏郎が使用したもの)を小道具として持ち込んでいたことを明した。松坂は「手が震えました」と恐縮しきりだった。

 終盤、“諦めないで、成し遂げようとした人物”笠原良策にちなんで、今年成し遂げたい目標を聞かれると、松坂は「年始に体調を少し崩しましたが、今後は体調を崩さないという強い意志で完走しようと心がけています!」と力強く宣言。芳根は「“今を全力で”ということを心がけているので、撮影中は無事故、無怪我で完走するのが目標です!」。役所は「職業柄、今年もお客さんに楽しんでもらえる作品になるように頑張ります!」とそれぞれに意気込んだ。

 本作の記念を公開して“鏡開き”も行われた。

 最後に小泉監督から、本作の撮影を担当し、黒澤組の名キャメラマンだった上田正治さんが今年の1月16日に87歳で亡くなられたという報告があった。黒澤 明監督の作品で長年助監督を務め、黒澤監督の“最後の弟子”とも言われている小泉監督だが、「上田さんとは、50年近くずっと一緒にやってきた。残念です。上田さんにとって本作が最後の作品になります。彼の映像の素晴らしさはスクリーンでなければ観れないと思いますので、上田さんのキャメラを観るつもりで、劇場に足をお運びください」と呼びかけた。松坂も「小泉監督がおっしゃる通り、上田さんにしか撮れない作品です。撮影中の上田さんにお会いしましたが、物凄いエネルギーとパワーで撮影現場にいらっしゃいました。その姿を見られて僕は幸せだったと感じています」と報告し、「そういった素晴らしいスタッフ・キャストが作り上げた作品なので、作品を観た後に、いろいろな人に『雪の花 ―ともに在りて―』の感想を繋いでくださると幸いです」と客席にメッセージを送った。

 (取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:松竹
 2025年1月24日(金) 全国公開

 (オフィシャル素材提供)

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