登壇者:谷垣健治、ギンティ小林
香港No.1ヒット(広東語映画動員数※2024年9月現在)を記録した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は1月17日(金)より新宿バルト9ほか全国にて公開中。
公開するやいなや、「2025年のベストワン映画がすでに決まってしまった!」「こういう映画が観たかった」「今年はもう、この映画より面白い映画に出会える気がしない」「これが映画だ!」「『RRR』以来の衝撃!」などなど、SNS上には熱気に満ちた絶賛評が溢れており、映画グッズ、ブックレット付きクリアファイルなどは軒並み完売。すでに2回、3回と映画館での“おかわり”をするリピーターも続出中。名匠ソイ・チェン(『ドラゴン×マッハ!』)が紡ぐ男たちの義と情のドラマ、製作費の1/6とも言われる5,000万香港ドル(日本円=約10億円)をかけて制作された九龍城砦のセット、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』といったアニメからドラマ、CM、ゲーム、舞台、映画までジャンルを超えて数多くの劇伴を手掛ける川井憲次の音楽など見どころは数多いが、なかでも観客たちを熱狂させているのが、『るろうに剣心』シリーズをはじめ、日本が世界に誇るアクション監督・谷垣健治によるアクション・シーンの数々だ。“魔窟”とも呼ばれた九龍城砦の、迷路のように複雑で狭く限られた空間を存分に活かしたダイナミックで流麗なアクションは驚きと興奮に満ちており、見る者の心をがっつり掴んでいる。
香港はじめ世界中に活躍の場を広げている谷垣健治が、このたび1月24日(金)、新宿バルト9にて開催された公開記念舞台挨拶に登場し、ライター・編集者のギンティ小林とともにトークを披露。終始、身振り手振りをまじえてエネルギッシュに語った。
聞き手を務めるライター・編集者のギンティ小林に名前を呼ばれて現れた谷垣健治は、客席から登場。映画を観終えたばかりの興奮が客席から伝わるなか、観客を熱狂させたクライマックスのシーンについての質問からトークが始まった。
主人公であるチャン・ロッグワン(陳洛軍)が単身、九龍城砦に乗り込み、窮地に立たされた彼のもとに次々と仲間が集まるが、「あのシーンは(撮影の)最後のほうに撮ったんですけど、この映画のアクションの色合い、リアルなところに落ち着かせるのか誇張させるのか、というのがだいたい分かってきて、キャラも読めてきた頃」と撮影終盤だったと振り返る。空間を活かしていろんな場所から登場させたいと思っていたそうで、当初(テレンス・ラウ演じる)信一はバイクで建物の奥から来る予定だったが「上から来てもいいかな」と思い、「最初のロケハンの時、(スタッフに)『ちょっと飛ぶ?』って聞いたら、『いや、飛ばないっしょ〜』って(笑)」。だが、電線や盂蘭盆会(うらぼんえ)のセットなど、いろいろな物がセットに追加された結果、奥からバイクがやってくるのが難しくなったという。そこで再度谷垣が「上から来るかな?」と尋ねたところ、スタッフは「来るっしょ、そりゃ! 飛ぶよ、信一は!」と準備が進むにつれて気持ちも高まってきたようですんなり賛成、バイクで上から登場するという名シーンが誕生したという。「飛ぶでしょ、エンディングだから!ってモードに(スタッフが)みんな変わって。信一がなんで上からバーンとくるかというきっかけもほしかった。ただ単に来ただけだったらかっこつけたかっただけに見えるけど人を潰すために来たっていう。潰すでしょ、そりゃ(笑)」と谷垣が話すと、客席は賛同を示すように大爆笑。
ロッグワンら4人が顔を揃え、複雑な九龍城砦内で縦横無尽に繰り広げられるアクション・シーンについては、「それぞれバラバラに撮っているけど向かっているのは一つの場所。でも位置関係が分からなくなって迷子ですよ。カメラマンに聞いたら『どっちでもいい』と(笑)。バラバラだけど気がついたら都合よくみんな揃っているというふうにはしたくなかった。つながりがほしかったんです」と語る。そこで生まれたのが、上から室外機が落ちてくるシーン。「上でチャン・ロッグワンが戦ってる時に足場にした室外機が落ちて、それがちょうど戦ったばかりの人たちのところに上から落ちてきたら、つながるんじゃないか。そうすると『上だ!』と行くのが僕らにとっても説得力になるし、モンタージュとしてつながりが出せたらいいなと思ってました」と谷垣の言葉を聞いて、ギンティ小林が「立体的なステージを存分に活かしたアクションが堪能できました。ガンガンと落ちてきた室外機を見上げる彼らを見たときに現実にドンキーコングがあったらこんな感じかなと思いました(笑)」と笑うと、谷垣は「立体的というのはまさにおっしゃるとおり。僕はいつも撮影の中盤になると、アクションのなかで『これいいカットだな』と思うのを並べて適当に音楽を入れてみるんです。今回もそれを作ってソイ・チェン監督に送ったら“面白い”と。ただ、面白いけど高低差があるといいよね、という話に」なり、それが形勢逆転のきっかけとなるラストのシーンが生まれるアイデアにつながったのだとか。
また、4人で相手の手足をそれぞれに持ち、何度も地面に叩きつけるシーンについては、ソイ・チェン監督から「ティッシュみたいに人を殴りたい」という希望があったと明かす。ふわふわと舞うような動きにするため、ワイヤーを付けてサッカーのリフティングのようなことも試したが、なかなか上手くいかなかったのだそう。「カット割りしたくないし、カットを割れば成立することを見せてもしょうがない。何かないかな?」と考えた結果、芸人のビッグスモールンのネタをヒントに、4人で相手の手足をそれぞれに持つという“技”に。ちなみに、アクションは実際にやっているが、下にはマットを敷いており、CGでマットを消しているのだとか。
終盤では映画の公式Xで募った観客からの質問に答えた。「俳優ごとにどんなアクションが得意なのか見抜くコツを教えてください」という質問には、「得意なものというのは、だいたいやってると分かる。受け身したり、蹴りは高く上がるか、パンチはどうかなどを見るなかで特性はある。(四仔を演じた)ジャーマンは元からアクションが得意で、彼と初めてやったのは『スーパーティーチャー』(2018)。例えば刀を振ったりは何日か練習すれば形になるけど、蹴りは難しいので、彼に頼みました。信一(を演じたテレンス・ラウ)はものすごく体が柔かくて、柔軟性があるのでそれを活かせないかな、とか」と答えた。
さらに「サモ・ハンやジャーマン・チョンなど、 ご自分でアクションを指導できる俳優へのアクションの指示について、どのようにされるのか教えてください」という質問には「サモ・ハンに指示なんかしないですよ(笑)」と即答し、アクション監督でもあるサモ・ハンに、「とりあえずやってみてくれ」と谷垣が言うとサモ・ハンは黙って頷くのだそう。「一つだけ言われたのは、膝より高い蹴りはつくるなと(笑)。あとはなんでもやると。僕もファンですから、サモ・ハンの刀とか、棒術も見たいじゃないですか(笑)。『狭いところで長い棒って活きると思うんで……』と理屈をつけたんだけど単純に棒術が見たかった(笑)」と笑った。
最後に、「これを観た香港の人たちは『俺たちの映画だ!』と。あの時代を楽しんでくれるお年寄りのリピーターもいました。みんなで記録作るぜ!と盛り上げてくれたのを感じました。日本でも、盛り上げてほしいです。だからここに来た人たちは一人ひとり、使命感を持って伝えてほしいです(笑)」と谷垣がコメントし、場内は拍手でそれに応えた。
公開表記
配給:クロックワークス
絶賛公開中!
(オフィシャル素材提供)