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『海辺へ行く道』第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門正式招待ワールドプレミア上映

© 2025映画「海辺へ行く道」製作委員会

 登壇者:横浜聡子監督、原田琥之佑

 映画『海辺へ行く道』(英題:Seaside Serendipity)が現在開催中の第75回ベルリン国際映画祭にて上映され、横浜聡子監督、主演の原田琥之佑が参加した。本作は、子どもを題材に扱った作品が選ばれる「ジェネレーション部門」の中でも4歳以上が対象となるGeneration Kplusコンペティション部門に選出されている。なお、7人の子ども審査員によって選ばれる最優秀賞(クリスタルベア賞)の結果は現地時間2月22日(土)の授賞式で発表される。

 2月17日(現地時間)に、『海辺へ行く道』のレッドカーペット、公式上映、舞台挨拶、Q&A、フォトコールが行われ、ワールドプレミアを迎えた。今回、現地には、横浜聡子監督と本作で長編映画初主演となった原田琥之佑が参加。上映前には部門ディレクターのセバスチャンが、「この物語は、日本でも珍しい、海辺に広がるPlace of imagination(創造の場所)が舞台になっています。美しいシーンと、素晴らしい構成、マジックが体験できます」と紹介した。コミカルな要素も散りばめられた本作の上映中は随所で笑いが起こり、Q&Aの際も場内は和やかな雰囲気に包まれた。

 上映後には、観客とのQ&Aの場が設けられた。制作の経緯を尋ねられた横浜監督は、「原作は三好銀さんが書かれた同名の漫画です。プロデューサーの和田大輔さんから映画化しませんかと声をかけてもらったのがきっかけです。私もその漫画が大好きだったので、私でいいのであれば、難しそうだけどぜひやってみたいです、とお答えしまして、そこから6年ほど2人で企画を温めてやっと実現しました」と明かした。また、映画化する上で、「原作は絵がとても象徴的で、絵を見ただけで、世界観が見てる側にぱっと入ってくるような、力強さがある漫画なんです。映画にする上で、この強い絵をどうやって映像にするかというのは非常に悩みました」と苦労した点を語り、「撮影の月永雄太さんが、やはりこの映画では色の設計をちゃんとやろうと提案してくれました。ノスタルジックなカラーというか、原作とはまた少し違うんですけれど、時代や時間というのが一見するといつなのかよく分からないような、どこにも限定されない浮遊した場所や時間ということをなんとなく意識していた気がします。そういう流れがあって、実際の見た目とは少し違うような世界の色が出せたと思います」とこだわりを明かした。

 本作で長編映画初主演を飾った原田は「今は15歳ですが、撮影は13歳の夏でした。(撮影を行った)小豆島は、とっても綺麗で、空気も新鮮で、空もすごく青くて、自然と(演じた)南 奏介にどっぷり入り込めるような環境でした。撮影時は163cmくらいだった身長も今は173cmまで伸びました」と撮影時を振り返る。

 若者のアートを信じる力に心動かされたという観客から、横浜監督自身にとって「アート」とはなにかという質問が挙がると、「私自身も映画を作っている立場として、そして芸術を受け取る立場として申し上げますと、やはり学校で教えてくれないことを知ることができると思っています。学校で教えてくれることだけだと人生で困ることっていっぱいありまして。私たちは、どうすればいいんだろうという、さっぱり答えが分からない局面にいつも立ち向かわなければいけないわけですが、そんな時に、自分が読んだ本、観た映画や絵画とか、人の思想とか、そういうものを思い出して、自分がもっと生き続けてもいいんだ、まだまだ生きていけるっていう、勇気をもらえる。自分にとってアートはそういう存在です。この映画の中でも主役の奏介にとって芸術というものがそんな存在でずっとあり続けてほしいと思っています」と思いを語った。

 また、本作の制作に対してのモチベーションについて尋ねられると、「原作は何話ものたくさんの話で構成されてる漫画なんです。登場人物も多く、誰が誰だか分からないくらいいろいろな人が出てくるんです。そんな混沌とした原作の世界観の中で、主人公はいますが、たくさんの人間たちの物語として面白く描けるんじゃないかなと思いました。とにかくたくさんの人がこの場所を行ったり来たりする。その中に人間ドラマが微かに見えるような群像劇を目指しました」と話す。また、いくつかのエピソードが代わる代わる描かれることについて質問が及ぶと、「一人ひとりの物語の全てを描ききらないこと、一部だけしか描かないことで、その人たちの生き様をちゃんと想像して欲しいなという思いで、あえて余白を残しています」とこだわりを明かした。

 日常でインスピレーションを受けるものを尋ねられると、原田は、「僕が今1番ハマってることはギターで、毎日弾いています。いろんなギタリストの曲を弾いたり、彼らの言葉を聞いたりすることが、僕が今1番刺激的なインスピレーションを受ける機会になってるかなと思います」と回答。横浜監督は「私は人の会話を盗み聞きするのが好きで、喫茶店とか入って、隣の人や近くの人が話してる日常の会話から、いろんなインスピレーションを受け取って、シナリオを書いたりします。今日もベルリンのホテルで、朝、宿泊してる皆さんがいろんなお話をしてるのをじっと見ていました。日常で人と人が対話してる姿っていうのが面白い。自分にとって1番刺激的なものです」と教えてくれた。

 集まった多くの観客たちからは惜しみない拍手と歓声が起こり、盛況のうちに幕を閉じた。

 映画『海辺へ行く道』の脚本・監督は、『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』『俳優 亀岡拓次』『いとみち』でその度ごとに話題を巻き起こして来た、横浜聡子。主演をつとめるは、約800人のオーディションを経て主演を勝ち抜いた14歳の俳優・原田琥之佑。本作は、今年で6回目を迎える日本最大級の芸術祭・瀬戸内国際芸術祭2025への参加も決定。映画ながら現代アート作品のひとつとして位置付けられ、芸術祭に参加する稀有な作品となった。なお、同芸術祭での映画の参加は本作が初となる。本編の撮影は2023年の夏にオール小豆島ロケで実施。小豆島特有の陽光や海と空に囲まれた絶好のロケーションが十二分に生かされている。
 なお、日本での公開は今年2025年の晩夏に予定。

© 2025映画「海辺へ行く道」製作委員会

ジェネレーション部門について

 1978年に設立され、2007年から2つに分かれることになった。子どもが主人公であり、子どもを題材に扱った作品が選ばれる。Generation Kplusは4歳以上が対象で、2025年は7人の子どもの審査員によって最優秀賞が選ばれる。Generation 14plusは14歳以上が対象で、5人の子どもの審査員によって最優秀賞が選ばれる。最近では、2024年にジェネレーション部門に『バブル』(荒木哲郎監督)と『マイスモールランド』(川和田恵真監督)が出品され、『マイスモールランド』が日本映画初のアムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを授与。

公開表記

 配給:東京テアトル、ヨアケ
 2025年晩夏 公開

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