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登壇者:小田 香監督、吉開菜央(出演)
『セノーテ』『鉱 ARAGANE』の小田香監督最新作『Underground アンダーグラウンド』(3月1日[土]〜ユーロスペースにて公開)が現地時間2月17日夜に第75回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品として公式上映された。
チケットがソールドアウトとなり、熱気にあふれた会場で、インターナショナル・プレミア上映となった本上映は、小田監督にとって初めてのベルリン国際映画祭での上映となり、上映後の会場は大きな拍手に包まれた。壇上には小田監督とともに、「シャドウ(影)」という女性の姿をした彷徨う存在を演じた、映像作家・ダンサーの吉開菜央も登壇し、観客との活発なやり取りが行われた。
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◆ベルリン国際映画祭での小田香監督の質疑内容
沖縄で多くの住民が命を落とした自然洞窟ガマを題材に加えたことを聞かれた小田監督は「(沖縄戦は)撮影しているときは過去の出来事なのかなと思っていましたが、平和の語り部として登場するガイドの松永光雄さんは“沖縄戦は終わっていない”と話していて、それがどういう意味なのかなということをずっと考えていました。映画の中で吉開さんがビーチに座ってサンゴの死骸を鳴らしている場面で、米軍のジェット機が自分たちの頭の上をたまたま通るんですけども、そういうシーンを自分たちはたまたま撮影してしまうということは、過去の記憶がレイヤーとして今も地上で生きていて、現在進行形のものだということをみんなと共有することが大きなことなんだと思います」と答えた。
また、強い光や影、暗黒の空間など何が監督を触発させるのかという問いかけに、「光と影もしくは地下に興味があるというよりは、自分の興味は何か地下にある隠されたものだったり、聞こえづらい声だったり、これまで拾われて来なかった物語を映画として、残していくことなんじゃないかと思います。私の映画制作のひとつのミッションとして、新しい集団的な記憶の層を、我々が映画を作ることによって、またそれを観客と共有することで作ることが出来たらいいなと思っています」とベルリンの観客に熱く語りかけた。
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◆ベルリン国際映画祭での吉開菜央さんの質疑内容
「監督からはどのような指示がありましたか」という質問に対して、吉開は「小田さんからの指示は、ここからここへ歩いてくださいなど具体的でしたが、それどのようにするかは(即興的な要素も多く)グルーヴ感のなかで出来上がっていきました」と、身振り手振りを交えて答え、会場のお客さんにも親密な空気感が伝わっていった。
(この発言を振り返り)吉開は、沖縄での撮影に先立って、ロケハンに参加したり出演の松永光雄さんとお会いしたりと、事前のリサーチで沖縄の空気や松永さんの人となりに触れていたことが「シャドウ(影)」を演じるうえで大きく役に立ったと語っていた。
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公開表記
配給:ユーロスペース+スリーピン
2025年3月1日(土)、ユーロスペースほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)