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登壇者:角野隼斗、望月 馨監督
日本の学問において理系の最高峰である東京大学理科一類に進学しながらも、クラシック音楽界で世界的に活躍する異端のピアニスト、角野隼斗(すみのはやと)。パリ、ウィーン、台北、ソウル、上海で演奏会を開き、ロイヤル・アルバート・ホール(ロンドン)へのデビューを果たしたほか、ラヴィニア音楽祭にてマリン・オルソップ氏指揮・シカゴ交響楽団と共演し、大きな話題となった。昨年3月にはベルリンに本拠を置くソニークラシカルと日本人4人目の世界契約を果たし、同年10月30日にはデビュー・アルバムがワールドワイド・リリースされ、20代にしてクラシック音楽界でのトップ・アーティストの地位を築いた。
また“Cateen(かてぃん)“名義で活動するYouTubeチャンネルの登録者数は143万人を超え、クラシック・ファンにとどまらず、幅広い層から圧倒的な人気を博している。ピアニストとして世界を相手に戦う角野隼斗とは一体何者なのか。これまでにない音を奏で、聴衆を惹きつけるのは何故か。そんな姿を3年間にわたって密着。今まで明かされなかった素顔、現在の思考、挑戦し続ける姿を追ったドキュメンタリー映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』が2月28日(金)に全国公開となった。
全国公開を記念し、3月1日(土)、ユナイテッド・シネマ豊洲にて公開記念舞台挨拶が実施された。先日発表され、瞬く間に世界中で話題となっている「カーネギーホール大ホール」でのソロ・リサイタル・デビューが決定した今の心境や、本作で描かれているこれまでのさまざまな出来事など、角野隼斗を最も間近に見続けてきた望月監督とともにたっぷり話した。
会場は大勢のファンで満員。映画上映前の熱気あふれる会場内にやってきた角野は後方の巨大スクリーン、および大勢の観客で埋まった会場内を見渡し、「大きいですね……」と驚きを隠せない様子だったが、本作のオファーについては「2023年にお話をいただいたんですが、実はしばらく渋っていました」と明かす。その理由について「ドキュメンタリーといっても映画なので、ストーリーがないといけないだろうなと思っていたんですが、それをあえてつくりにいくのも違うと思うし、そんなに面白くならないんじゃないか……ということでずっと渋っていたんですけど、武道館でのコンサートが決まり、それはなかなかない機会なので、それを映像におさめていただくのはいいかなと思い、お受けしました」と振り返った。
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望月監督とは、角野が出演したテレビ番組「情熱大陸」がきっかけであったというが、角野が「望月監督には番組の後も継続的に撮ってもらう機会があったので。いつかはこういうふうになるのかなとなんとなく思っていましたが、でもきちんとした想像はできていなかったと思います」と本作について切り出すと、3年前から現在にかけて起きているできごとについて「僕は目標というのはほとんど言わないタイプですが、武道館も含めて今起こっていることは想定外でしょうね」としみじみと語った。
そんな角野の印象について「不思議な人だなと思いました」と語る望月監督。「カメラをいきなり回しても、カッコつけるわけでもなく、何かをするわけではなく。淡々と自分のことをやっているような感じで。最初からこうしましょうというような相談は角野さんとはしたことはない。今日の予定を聞いて、そこに行って、挨拶をして、あとはカメラをまわす。何かあったら撮らないという取材の仕方でした」と明かすと、角野も「忙しいのによく映画ができたねとよくいわれるんですけど、何もしてないんです。ただ自分の仕事をするだけでした」と同意。「カメラを意識するのか?」という質問にも「まぁ、ないですね」とこともなげに返した。
この日もひょうひょうとした様子で語る角野。撮影中も常に自然体だったようで、「ここは止めてとか、撮らないでということもなかった」と振り返った望月監督。「撮られたくないときには映せないような格好をすればいいから」と冗談めかした角野だったが、「自分が過ごしている風景とか、話している様子を見るのも気恥ずかしいんで、映画はチラ見で見ただけなんですが、それでもおもしろくて。良かったなと思いました。ありがとうございます」と望月監督に感謝の思いを述べるひと幕も。
スクリーンに映る角野の姿は淡々としていて、一定の感情をキープしているようにも見えるが、「心の中でのアップダウンはありましたか?」という質問に、「そんなに喜怒哀楽が表に出るタイプではないので、そういうドラマはこの映画には期待できないですね」と返して、会場を沸かせた角野。「ポーカーフェイスですからね」と語った望月監督には、「人狼ゲームとかはめっちゃ下手ですよ。すぐにバレてしまう」と明かす角野の言葉に会場は大笑いだった。
また映画から泣く泣くカットしたシーンについて質問された望月監督は「角野さんって一瞬でゾーンに入る人で。お昼ぐらいに撮りにいったのに気づいたら夕方ということもあった。いつまで練習するんだろうと思うんですけど、いい加減暗くなってくるのでカメラに映像が映らなくなる。『明かりを……』というと、『ああ!』という感じで。もちろんそれは何時間もあるんで、そういうところは映画に入れられませんでしたね。でもそういう時の角野さんってすごいなと思いました」と感心した様子だった。そんな角野に「今後挑戦していきたいことは?」と質問を投げると、本作のタイトルにかけて「不確かです」と返して会場を笑わせた。
そしてあらためて本作の方向性について質問された望月監督が「やはりファンの方たちには、これまで見たことのない角野さんの魅力を見ていただきたい。そしてはじめて角野さんを知る人もいらっしゃると思いますが、そういう人には角野隼斗という人間を知っていただきたい。ポーカーフェイスですけど、実はこんなに努力する人なんだということは考えながら編集をしました」と明かすと、「ありがとうございました」と謝辞を述べた角野。「あまり自分が頑張ってるかどうかというのは、自分では分からないものですが、こうして外から見る機会があると、こいつも頑張っているんだなと思いますよね」としみじみ。
そこで望月監督が「でもご自身にとっては頑張っているという意識はないのかもしれないですね。やりたいからやるという感じで。でも……頑張ろうと思うんですか?」と尋ねると、「思いますよ」とキッパリ返して会場は大笑い。「人は誰しも頑張る瞬間はありますから」と笑顔を諭した角野に、望月監督も「そうですよね。すみません」と笑ってみせた。
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今年11月にはカーネギーホールでのソロ・リサイタル・デビュー、そして来年3月にはマリン・オルソップの指揮によるフィラデルフィア管弦楽団とのオーケストラ・デビューも決まるなど、うれしい報せが続いている。そんな現状に「うれしいですよ」と笑顔を見せる角野。「それこそ3年前には想像もしていなかった。2023年にニューヨークに移り住んだんですが、その時はアメリカの仕事も何も決まってなくて。あまりにも不確かでしたけど、結局デビューすることができて。ひとつひとつ丁寧に進んでいきたいという気持ちでございます」と決意を語ると会場からは大きな拍手が送られた。
そして最後に「とにかく楽しんでいただいて、来てよかったなと思っていただけたら幸いです」と望月監督が語ると、角野も「ドキュメンタリー映画という形ですが、何か皆さんの心の中に残る瞬間があれば幸いだなと思っております。お楽しみください」と会場に呼びかけ、この日の舞台挨拶は幕を下ろした。
角野隼斗 プロフィール
1995年生まれ、千葉出身。
2018年、東京大学大学院在学中にピティナ・ピアノ・コンペティション特級グランプリ受賞。2021年、ショパン国際ピアノ・コンクール・セミファイナリスト。これまでにシカゴ交響楽団、ポーランド国立放送交響楽団、ボストン・ポップス・オーケストラ、ハンブルク交響楽団、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、NHK 交響楽団、読売日本交響楽団、他多数のオーケストラと共演。
2023年よりニューヨークに移住。2024年、自身最大規模の全国23公演の日本ツアーを開催し、全公演完売。自身の誕生日である7月14日に日本武道館公演を開催し、動員数は日本武道館におけるピアニストの単独公演として史上最高となる13,000人を記録。10月にはワールドワイド・デビュー・アルバム「Human Universe」をソニー・クラシカルよりリリース。
ロイヤル・アルバート・ホール(ロンドン)、グシュタード・メニューイン音楽祭(スイス)、ラインガウ音楽祭(ドイツ)へのデビューを果たしたほか、ラヴィニア音楽祭にてマリン・オルソップ氏指揮・シカゴ交響楽団と共演し、大きな話題となった。オーケストラ共演の他、パリ、ウィーン、シンガポール、台北、ソウル、上海などにてリサイタルを開催し、国際的な知名度を急速に高めている。
さらにFUJI ROCK FESTIVA や京都音楽博覧会への出演など、活躍の場はクラシック・フィールドに留まらない。6人組シティ・ソウル・バンド”Penthouse”のメンバーとしても活動中。
2018年9月より半年間、フランス音響音楽研究所(IRCAM)にて音楽情報処理の研究に従事。これまでにジャン=マルク・ルイサダ、金子勝子、吉田友昭の各氏に師事。MBS「情熱大陸」「一万人の第九」、NHK「紅白歌合戦」「あさイチ」「街角ピアノ」、テレビ朝日「徹子の部屋」「題名のない音楽会」など、数多くのメディアに出演し、J-WAVE「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」ではナビゲーターを担当。作曲家としてもNHK「サタデーウオッチ9」のテーマ曲をはじめ、ドラマやCMへの楽曲提供も積極的に行っている。CASIO電子楽器アンバサダー、スタインウェイ・アーティスト。クラシックで培った技術とアレンジ、即興技術を融合した独自のスタイルが話題を集め、”Cateen(かてぃん)”名義で活動するYouTube チャンネルは登録者数140万人超、総再生回数は2億回を突破。2020年、1stフルアルバム「HAYATOSM」をリリース。
2022年には、マリン・オルソップ指揮、ポーランド国立放送交響楽団とのライブ録音による「ショパン:ピアノ協奏曲第1番」をリリースし、異例のヒットを記録。クラシックのピアニストとして確固たる位置を築く一方、ジャンルの垣根を越えた音楽の探究心で知られる、唯一無二のピアニストとして注目を集めている。
キャスト&スタッフ
出演:角野隼斗
監督:望月 馨
制作:ネツゲン
(2025年、日本)
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
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公開表記
配給:ローソン・ユナイテッドシネマ
全国公開中
(オフィシャル素材提供)