
登壇者:嶋 陽大(主演)、佐藤直紀(音楽)、西川和宏(アニメーションプロデューサー)、鷲尾天(プロデューサー)、西尾大介(監督)、ペク・ヒナ(原作)
先日、第97回米アカデミー賞®短編アニメーション部門にノミネートされ、惜しくも受賞は逃したものの、東映アニメーションとしては初の快挙となった。これを受け日本のファンからも劇場公開を望む声が多く寄せられ、現在は期間限定で短編映画としては異例の劇場公開中。
そして、このノミネートを記念し、主人公のドンドン役・嶋陽大を始めメインスタッフが揃うと共に、原作者ペク・ヒナが来日。アカデミー賞の現地の様子や本作の映画化にあたり韓国でロケハンを行った時や、アフレコ時のエピソードが披露され、ペク先生と日本側のスタッフが緊密な連携をとり、かつ緻密な映像制作での様子などさまざまな話が披露された。フォトセッションでは東映アニメーションのシンボルとなっている「長靴をはいた猫」のペロがお祝いに駆けつけ、全員に花束の贈呈をした。終始温かな雰囲気に包まれた舞台挨拶となった。
舞台挨拶が始まり、早速アカデミー賞®のノミネートされた時の気持ちを聞かれ、西尾大介監督は「最初に、(ノミネートされた)報告いただいた時は現実味がなかった。ダンデライオンスタジオの会議室で各セクションのチーフやみんなが集合して生配信をみてたんです。そしたら、「Magic Candies」って言われて、僕はタイトルの説明だと思ったんです。この作品を制作した時点では(アカデミー賞®なんて)考えてなく、(テレビで)名前を呼ばれてもまるっきり現実味ありませんでした」と明かし、発表の当日に大阪に在住の嶋と、韓国からペク先生ともリモートでつないでみんなで喜んでいたことを振り返った。

そして、ノミネート発表を一緒に見ていたペク先生は「アカデミー賞®のノミネートまでは期待していませんでした。最初に、鷲尾さんがアニメーションを作りたいと言ってくださったのが約9年前でしたでしょうか。そこから長い期間かけて、スタッフの皆さんが頑張って作ってくださった」と感謝のコメントに続け、「(ノミネートの発表時に)久しぶりに、オンラインでしたが日本チームと韓国チームが顔合わせできたので楽しく思っていました。スタッフみんなさんが丁寧に作ってくださってたので、ドキドキしながら見てました。ノミネートされたことは本当に嬉しい。私としては原作者の役割は果たした、と思いました(笑)」と笑顔。

今回アカデミー賞®の会場には、西尾大介監督、原作のペク・ヒナ、鷲尾天プロデューサーに加え、主人公ドンドン役を演じた嶋 陽大、音楽の佐藤直紀、アニメーション・プロデューサーの西川和宏も現地入り。佐藤は「非常に格式高く、荘厳な雰囲気がありました。会場内は1階から5階までの客席があり、見たことがある景色でした。アカデミー賞®はエンタメをよく知る人たちが作る最高峰の式典だと思いました。短編アニメーション部門として5作品の中の1作としてノミネートされましたが、受賞関係なくノミネートされるということ自体が素晴らしいこと。乱暴な言い方ですがオスカーを獲れるのは時の運だと思う。『あめだま』はオスカーに左右されることなく素晴らしい作品であることは変わらない。せっかく呼んでもらえたアカデミー賞®なので、思う存分楽しみたいと思い参加させていただいた。勉強になりました」と佐藤のキャリアの中でも初のアカデミー賞®の体験を振り返る。

そして、嶋 陽大は、アカデミー賞®会場の様子に「何もかもがキラキラしていた。会場は、パーティーみたいで皆さんの熱気が伝わって、綺麗だなーって、思っていました」と圧倒された一方、会場入りする前に通るレッドカーペットでは、「夢がレッドカーペットを歩くことだったんですが……、もう終わっちゃったんですけど(笑)」と夢が早々に実現し、隣にいた西尾監督が「終わっちゃったじゃん︕ どうする︖」とツッコむと、嶋は「今度は、レッドカーペットを歩き受賞をするところまで行きたいな」と受賞への意欲を明かすと、場内から笑いとエールで大きな拍手が巻き起こった。

今回の制作にあたりダンデライオンスタジオのプロデューサー・西川和宏は、韓国のロケハンを振り返り「公園やアパートの造りとかを見に行き、写真を撮ったりしに行きました。その際に初めてペク先生とお会いして、絵コンテのフィードバックをいただいたり、お話をお伺いすることができました」とペク先生とのエピソードを披露したかと思ったら、ロケハンでの出来事を思い出し「ロケハンは朝から晩までやってて、夜暗くなっても公園にいたんです。そしたら、監督が犬のうんこをふんでたんですよ」とまさかの監督の行動を暴露。

西尾監督から「なんで、言っちゃうんだよ︕ 俺が言うことなくなっちゃうじゃん」と会場の笑いを誘い、西尾監督からは「あの時、俺は(公園を後にして)みんなで車に乗り込んだ時に言おうと思ってたのに、みんな知ってるんだもん。それが悔しかったんだよ~」とスタッフ一同いいチーム・ワークであることが垣間見える一幕も。
西尾監督は制作にあたり、「ペク先生とお会いしたりやりとりをする中で密度の濃さを久々に体験しました。とっても、よかったと思っています。確実に絵にフィードバックされてますし、僕たちは、自信を持って(ペク先生に)提出できました。各セクションの1人ずつの担当者の粘り強さに感服しました。緻密に繊細にやってたと思う。ダンデライオンスタジオのスタッフに感謝してます」と改めてスタッフの緻密で丁寧な仕事ぶりに感謝を伝えました。
また、ペク先生に改めて映像化のお話を聞いた時のことを伺うと「絵本を書いてた時は、手作りで粘土で人形を作ってました。しかし、アニメ化するにあたり、鷲尾さんから3DCGでやりたいと言われて、このアナログな感じを上手く表現できるのかと思ってました。すると鷲尾さんは“実際に作ってきますから、それから決めてください”とおっしゃってくださいました。制作が始まり映像を見せていただいた時に、かなり細かいディテールやフィードバックも反映してくださってました」と当時を振り返ると共に、完成した映画で一番感動したのは、愛犬のグスリとドンドンのシーンであると明かす。「この場面は長い時間議論をしてたのを覚えてます。このように映像化された作品を観ると、絵本にはないシーンが描かれてますが、主人公たちがまるで絵本から飛び出た感じで、魔法が起きたと思いましたが、さらにアカデミー賞®でアメリカにも行き、今こうして日本にも来て、本当に魔法が起きた、という感覚です」と本作の完成度の高さと広がりに感激。
また、今回の声優の嶋からはアフレコ時に西尾監督に実際に身振り手振りでドンドンのシーンを演じて見せてくれたとし、「場面場面で、ドンドンが飴を食べるシーンでは飴を実際に口に入れて見せてくれたり、布団に入ったシーンではハンカチを口に当てて見せてくれたりいろいろ教えてくれ楽しく収録することができました 」と西尾監督の丁寧なアドバイスがあったことを披露。また、ドンドンのキャラクターについて「内気な性格は僕と少し似てる」と言い、親近感が沸きながらアフレコに臨んだそう。
最後に日本の観客に向けペク「『あめだま』は子どもだけでなく大人でも感動できる作品だと思っています。より多くの方に愛されることを祈っております」とコメント。さらに、嶋は「僕は、思ってることを話したり伝えたりすることが得意ではないのですが、この作品の中で話す勇気を学びました。皆さんも何かに進めるきっかけになれば」と。プロデューサーの鷲尾は「海外原作を作るのは初めて。ロサンゼルスについたときさまざまな言語が飛び交う中、スタッフの皆さんが楽しそうにしている姿を見て、嬉しく思いました。またこうして皆さんと向き合う機会を作っていきたい」と今後も海外原作への制作への意欲を見せる。そして、西尾監督は「いろんな人にいろんな場所で観てもらいたい。そのきっかけがこのノミネートで知ってもらうことができた。最初は、第25回ニューヨーク国際子ども映画祭(米国) で、コンペ部門で上映すると報告を受け、そういうものなんだと思っていましたら、審査員最優秀賞をいただいて、そこから雰囲気が変わってきた。賞をもらったということではなく、いろんな国のいろんな人に認めてもらった、というのがすごく嬉しい。作ってよかった」短編ながら、各国で評価されることを素直に喜んだ。
会場からもあたたかな拍手に包まれる舞台挨拶となった。
公開表記
配給:東映アニメーション
全国19館にて2週間限定公開中
(オフィシャル素材提供)