
登壇者:前田真宏監督、荒牧伸志監督
世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、漫画・アニメのクリエイターを数多く輩出してきた“アニメーション首都”新潟にて行われる新潟国際アニメーション映画祭。
第3回新潟国際アニメーション映画祭を2025年3月15日(土)より開催中!
アニメーションのトレンドを先取りしたセレクション、そして国内外の第一人者のクリエイターたちの生の声を聞ける機会とあって、新潟のみならず国内外からファンが駆けつけて、昨年の参加者数2万4000人の参加を上回りそうな熱気を見せている。
開幕初日となった3月15日(土)夜、オールナイト上映が行われた。今年のテーマは<日本アニメCGの転換点>。1990年代いち早くCGをアニメに取り入れた『青の6号』の前田真宏監督、そしてピクサーのようなフルCGが日本でもできるという驚きをももたらした『アップルシード』の荒牧伸志監督が登壇、トークショーが行われた。
深夜にも関わらずシネ・ウインドはチケット完売、満席のお客様で埋め尽くされた熱気の中、荒牧監督と前田監督が登場。OVAとして制作された『青の6号』は「PlayStationが勃興した時期、明確なビジョンがあったわけではないけれど『面白そうだからやってみよう』と始めた」と振り返る前田氏。荒牧氏は「80年代変形するロボット・メーカー全盛の頃で、僕もそれに乗っかってメカデザインの仕事を始めて。でも人の手でメカを描くというのは大変。そこでCGというものがあるらしいと知り、もっとメカがしっかりと形も崩れずかっこよく動くのではないかと予想して90年代からCGやデジタルの仕事をするようになりました」と語る。

実は20~30年ぶりの再会で、しっかりと話をするのは初めてかもしれないと語る2人。しかし大学時代からアニメーション制作に関わり、デザインで大きな功績を残して演出に進んでいった共通項もある。前田は、「大学生の頃、庵野(秀明)さんと山賀(博之)が『超時空要塞マクロス』をやっていた。チーフ・ディレクターをやっていた石黒(昇)さんが寛大な方で、新しいもの好きで、若者に何かやらせてみようという感じで任された回が、どれひとつ使えないレイアウトで「助けて!」という話になった。そこからですね。仕事で初めて絵を描いてお金をもらった。『マクロス』は当時としては画期的なお仕事で、メカを書くのはとにかく大変。「これを手で描くの!? しかもテレビ・シリーズで毎週放映するのを?」という感じで、描ける人は板野(一郎)さんとその配下くらい。それを外注しても理解されない。背景もレイアウトと言いながらパースしか引いてないとかザラで、パースが合っていればいいほうだから「どうしようもないからやり直して」と。不遜にもレイアウトを修正するところからキャリアが始まりました。その後宮﨑(駿)さんのところに行って『風の谷のナウシカ』に参加するんですけれど、すごく怒られました」と語る。「3Dに多分つながる話ですけど」と前置きし「『マクロス』の時は漫画の延長だろうという感覚で描いてるわけですよ。平面のグラフィックとして、コンポジション(配置)が気持ちよければいいだろうと。でもうちはそうじゃない、コンテから情報を読み取って、ここはどんな空間で奥行きはどのくらいあって、奥からキャラがくるんだったら何メートルあって何歩で歩くのかちゃんと考えろと。空間設計なんです。そういう意味ではCG的な捉え方」と話した。

一方1980年代変形するロボット・メカが全盛の時代、おもちゃのデザインからキャリアがスタートしたという荒牧氏は「手描きのアニメーションのコンテとか演出とかやらせてもらったんですけど、やっぱり撮影のこととかアニメのことが分かってないんで、コンテを切って派手なアクション・シーンを作ると大体全部『ここ無理』って切られちゃうんですね、描けないから。200カット作ると大体50カットくらいになる。それが『アップルシード』で初めてアクション・シーンを全部使ってもらえたんです。それで『CGは、これはいいな』」と振り返り、前田氏は「新しいタイトルも、『ブレードランナー ブラックアウト2022』とか『キャプテンハーロック』みたいな違う表現にチャレンジされても、『アップルシード』でスタイルが完成されてますね」と語った。

上映する『アップルシード』について見どころをきかれた荒牧氏は「途中飛び降りながら合体するシーンがあります。あれは多分カット割りそのまんま『アイアンマン』でパクられたんですけど」と語ると場内も爆笑。さらに自身のこれからの展望として「元のCGアニメのワークフローを使いながら、うまくAIを組み込めないか。物語を語る部分は自分たちでやりながら最後の絵の部分をAIでうまくコントロールできないか」と全てが自動でできてしまうと思われがちなAI技術への取り組みを語った。ガイナックス、ゴンゾ時代の秘話で会場を沸かせた前田は、『青の6号』の見どころについて「ゾーンダイクという悪者が出てくるんですけど、俳優の若松武史さんにオファーできたのが当時すごく嬉しくて今も印象に残っています。海外のイベントに出た時、向こうのアニメ誌のライターの人に『アニメの悪役で一番かっこいい』と言ってもらってすごく嬉しかったです。物語は主人公側から描いてますけど、悪者側の裏で動いている感情みたいなところを見てもらえると嬉しいです」と語った。
オールナイトは『青の6号』『アップルシード』のほか、『ミニパト』(2002年/神山健治監督)『劇場版 シドニアの騎士』(2015年/静野孔文監督)が上映された。
国際映画祭の舞台となる新潟市とは
19世紀、海外への窓口となる世界港をもち、北前船の経由地でもある新潟は、江戸を凌ぐ国際的な商業都市でした。また新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーター(水島新司、赤塚不二夫、高橋留美子、魔夜峰央、和月伸宏、八神ひろき、しげの秀一、長井龍雪ら)を輩出し、2012年から「新潟市マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」を策定、継続的なイベントとして今年度15回を迎える「がたふぇす」や、27回を迎える全国対象の「にいがたマンガ大賞」が開催されています。また、さまざまなジャンルの企画展を開催する「新潟市マンガ・アニメ情報館」やマンガ図書館「新潟市マンガの家」を運営、そして、かつては新潟版トキワ荘「古町ハウス」の設置、首都圏のマンガ編集部による添削会なども実施されており、日本有数の熱烈なアニメ・マンガ都市でもあります。
そして──21世紀、本映画祭に集結したエネルギーを、グローバル・アニメーションの創造へのマグマとし、新潟は世界のアニメーションの首都を目指します。
第3回新潟国際アニメーション映画祭 概要
■会期:2025年3月15日(土)~ 20日(木・祝) 6日間
■名称:第3回新潟国際アニメーション映画祭
Niigata International Animation Film Festival 2025
■主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
■フェスティバル・ディレクター:井上 伸一郎(「月刊Newtype」元編集長)
■プログラム・ディレクター:数土直志(アニメーション・ジャーナリスト)
■ジェネラルプロデューサー:真木太郎(㈱ジェンコ代表取締役)
■映画祭実行委員長:堀越謙三(ユーロスペース代表、開志専門職大学教授)
■副委員長:梨本諦嗚(映画監督、株式会社サニーレイン役員)
■東京事務局長:井原敦哉(㈱ジェンコ/プロデュース本部プロデューサー)
■新潟事務局長:内田昌幸(にいがたアニメ・マンガプロジェクト共同体統括本部長)
■特別協力: 新潟市、新潟日報社、新潟県商工会議所連合会、NSGホールディングス、他
■後援(予定):内閣府知的財産戦略推進事務局、経済産業省、文化庁、新潟県、新潟県教育委員会、他
■助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画祭支援事業)
■公式HP:https://niaff.net(外部サイト)
■公式X:https://twitter.com/NIAFF_animation(外部サイト)
(オフィシャル素材提供)