イベント・舞台挨拶

『BAUS 映画から船出した映画館』公開初日舞台挨拶

©本田プロモーションBAUS/boid

 登壇者:染谷将太、峯田和伸、夏帆、甫木元空監督

 甫木元空監督最新作『BAUS 映画から船出した映画館』の公開初日舞台挨拶が都内で行われ、主演の染谷将太、峯田和伸、夏帆、甫木元空監督が登壇した。

 映画上映だけに留まらず、演劇、⾳楽、落語……「おもしろいことはなんでもやる」という無謀なコンセプトを掲げ、多くの観客と作り⼿に愛されながら30年の歴史を築いた吉祥寺バウスシアター。本作は、「吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ⼦映画館三代記」(本⽥拓夫著/⽂藝春秋企画出版部発⾏・⽂藝春秋発売)を原作に⻘⼭真治が着々と温めていた脚本を、2022年3⽉の逝去を機に甫⽊元空が引き継ぎ執筆。時流に翻弄されながらも劇場を守り、娯楽を届け続けた⼈々の⻑い道のりを描いている。

 青山真治監督の命日でもあるこの日、客席から温かい拍手で迎えられた監督・キャスト陣。主演の染谷は、「初日、すごくうれしいです。緊張しています」と感慨深げに挨拶。峯田も「無事にこうやって初日を迎えられて本当に嬉しいです。来ていただきありがとうございます」と挨拶すると、夏帆は「本当にこんなにたくさんの方に来ていただいて嬉しいですね。ぜひ最後まで楽しんでいってください」とコメント。そして、監督の甫木元は「毎回映画を作るとお客さんに観ていただいて完成するものだなと改めて感じます」と話し、緊張が入り混じりながらも晴れやかな表情を浮かべた。そして吉祥寺バウスシアターの元館主である本田拓夫も冒頭サプライズで登場。登壇者の挨拶を優しいまなざしで見守っていた。

 公開を無事に迎えた本作について監督は「ちょっと寂しい感じもありながら」と前置きしながら、「今まで監督を務めた作品以上にいろいろな人の想いが込められた映画になっているので、不思議な気分です」と率直な思いを口にしていた。続けて製作の話になると「本田さんが原作で書かれていたような、バウスシアターが持っていた“おもしろいこと”があれば実現できちゃう空気感を現場でもみんなで楽しみながら作りました」と振り返る。

 出演オファーを受けた時、「ドキッとしました」と語る染谷。「まず、もともと青山さんが企画していたこともそこで初めて知って。バウスシアターは10代の頃からお世話になっていた劇場だったので衝撃が走ったのを覚えています。同時に個人的な感情が強い作品だったので、冷静に、客観的に役を演じなければとも思いました」と回想する。
 染谷が演じたのは、自身が社長を務める映画館を盛り上げようと奔走するサネオ。「人の記憶を旅する作品なので、時代物ではあるけれど、あいまいな部分もあって不思議な体験でした」と撮影時を思い返す。

 峯田は、斬新なアイデアを映画館に持ち込んでくるサネオの兄役・ハジメを演じて「格好や髪型は当時のままなんですが、今の時代を生きる自分を出せるような、その自由さがありました」と話す。

 そしてサネオの妻・ハマ役を演じた夏帆は「ちゃんと一人の人物として(演技が)成立しているのかという不安がありました。でも、実際に完成した作品を観たときにスクリーンの中で人物が生きている感じがあってすごく安心もしましたし、とても魅力的だなと思いました」と語り、それぞれがどのように撮影に臨んでいたかが窺える場面も。

 撮影時のエピソードを聞かれ「楽しかった」と声を揃える出演陣。峯田が「三味線を弾きながら活弁をしなくちゃいけない役なんですけど、適当にはいかなかった(笑)」と明かし、「大雪の中、現場の隅で活弁を練習していたところ『よかったらあったかいところありますよ』と声をかけてくれた染谷さんの優しさが思い出です」と述懐。染谷は「撮影が劇場だったので、休憩も劇場の座席で。その空間がとても心地よくて幸せでした」と映画館が舞台の作品ならではの撮影を振り返っていた。監督はそんなロケーションについて「昔ながらの雰囲気を残したまま今も運営されている、生きている映画館で撮影できたのが贅沢な時間でした」と語った。

 そして話題は、登壇日である3月21日が命日の青山真治監督との思い出へ。監督は「役者さんが持っている声を楽器のように扱う人だなと本作を通じて改めて感じました」とコメント。染谷は「活字だとしゃべっている印象が浮かばないんですけど、実際にしゃべると心からの言葉になるんです。活字と音になったときの、その独特なギャップにすごくハッとさせられます」と話し、続けて「人としても大好きな方だったので、いなくなってもいなくなっていない、ずっと続いているような気持ちです。だから今自分もここに立っているんだなと実感しています。そういう部分はこの作品に通じているところです」と語った。

 作品にちなみ『映画館で映画を観ることの魅力』を聞かれると、監督は「暗闇の中で大勢の人が一点を見つめる異様な空間なんですけど、自分を見る鏡のようでもありますよね。“あした”に出会える不思議な場所だと思います」と話す。峯田は「携帯の電源も切って、知らない人たちと一緒に作品に向き合って『こんなところで笑うのか』とか、自分と世界を共有できる特別な場所。映画館を出た後、同じものがいつもと違って見えたり、そういうのが好きなんですよね。スマホで観るのもいいんですけど、映画館で観るのはやっぱり特別」と熱弁。染谷は「映画を観に行こうと思った瞬間から映画が始まっていて、映画を味わって、外に出たら景色が変わっている。ずっと続いていく感じがします。このハコがあるから始まれて終われる。それをひっくるめて体験できる贅沢な空間だなと思います」とコメント。夏帆は「劇場で映画を観ることって単純に楽しい遊びだなと思っています。見ず知らずの人と同じ作品、同じ空間を共有することもそうですし、流れてきた予告で新しい作品に出合える。映画館でしか出来ない体験がいいなと思っています」とそれぞれの視点で魅力を語った。

 最後には、染谷が「この作品は失いながらも何かを得て、失ったことで続いていける、そしてそこに終わりがないというこの映画にしかない唯一無二の希望があると思います。それをぜひ味わっていただけたら嬉しいです。ご飯を食べると身体の栄養になるように、映画は心の栄養になると思っているので、ぜひその栄養をもらっていただけたら幸いです」とアピール。峯田は「僕は青山監督からオファーが来てやりますと言ってからお会いできないままだったんですが、甫木元監督がやるということで、撮影から約1年経ってようやく世に放たれることがうれしいです。普段音楽をやっている自分に機会を与えてくださって、言葉が見つかりません」、夏帆は「皆さんがどんな感想を持たれるのか、どのように受け取るのかが楽しみです。映画ってやっぱり素敵だなと思う瞬間が撮影中もたくさんあったので、皆さんもぜひ素敵な映画体験をして劇場をあとにしていただけたら嬉しいです」と語った。

 そして最後に「終わりがあるから始まりがある、ということが青山さんの脚本を読んで一番感じたことでした。バウスシアターに行ったことない人も、友人や家族を重ねて感じ取ってもらえたらと思います。青山さんの企画書の最後に“世界中の映画を愛する友人たちに、語りかけるように映画を作りたい”といったことを書いてらしたので、スタッフ・キャスト、映画が好きな人たちと作りました。この映画を観た人たちが少しでも何かを持ち帰って、またこの映画を誰かに語りたくなるような、そんな映画になれたらいいなと思います」と監督が締めくくり、公開初日舞台挨拶は幕を閉じた。

公開表記

 配給:コピアポア・フィルム boid
 テアトル新宿ほか全国上映中

(オフィシャル素材提供)

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