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『かたつむりのメモワール』先行上映イベント

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 登壇者:アダム・エリオット監督

 第97回アカデミー賞®長編アニメーション賞ノミネート、アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞(最高賞)受賞をはじめ各国の映画祭を席巻している珠玉のストップモーション・アニメーション映画『かたつむりのメモワール』が、6月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほかにて全国公開となる。
 この度、3月18日(火)にアダム・エリオット監督が登壇しての先行上映が行われた。

 幼い頃から周囲に馴染めず、孤独を抱えて生きてきた女性グレース。カタツムリを集めることだけが心の拠り所だった彼女が、個性豊かな人々との出会いと絆を通して少しずつ生きる希望を見出していく……。本作は、波乱万丈な半生をユーモアとサプライズ満載で優しく描いた温かな人生賛歌。オスカー受賞歴を持つアダム・エリオット監督が8年間もの製作期間をかけ、<セット数200、小道具700個、総カット数13万5千>という膨大な手作業によって生み出された、愛と情熱にあふれたクレイ・アニメーションだ。時にブラック・ユーモアやビターな現実も織り交ぜながら、人生の喜びと悲しみにそっと寄り添う視点は、批評家・観客双方から絶賛を集め世界中で数々の映画賞を獲得。アヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞(最高賞)に輝き、アカデミー賞®長編アニメーション部門にもノミネートされた。

 その『かたつむりのメモワール』が、6月27日(金)の公開を前に、来日したアダム・エリオット監督が上映後Q&Aに登壇するスペシャル先行上映が3月18日(火)シネマート新宿にて行われた。アダム・エリオット監督は21年前となる2004年の『ハーヴィー・クランペット』でアカデミー賞®短編アニメーション賞ほか32に及ぶ映画賞を受賞し、一躍世界的な注目を集めたのち、日本でも2011年に公開された初長編作品『メアリー&マックス』(2009)でアヌシー国際アニメーション映画祭ではクリスタル賞(最高賞)を受賞。『かたつむりのメモワール』は実に15年ぶりの待望の長編新作となるアダム・エリオット監督。登壇時には、本作の「主演」でもあるカタツムリの帽子を被ったグレースの人形も一緒だった。

日本文化が大好き!来日は6回目!

 日本文化が好きというエリオット監督。今回に来日については、「明日、新潟国際アニメーション映画祭に行くんですけれども、今回は5日間と割と短い滞在です。実は今回で6回目の来日で、日本に来るのは大好きです。日本の文化も、その文化をリスペクトして守っている日本の方々も大好きです。そして何よりも僕の映画に出てくるジョークを理解してくれて、笑ってほしいポイントでしっかり笑っていただけるっていうのが、すごく嬉しいです」と手放しで喜びを語った。

 「前作の『メアリー&マックス』(2009年 ※日本公開は2011年)から15年ぶりとなる新作ですね」とMCから振られると、「かなり時間が経っていますから、この作品を発表した時、結構驚かれた方も多かったんですよね。あまりにもしばらく見ていなかったから(監督は)死んじゃったのかな?と思っていた方もいるぐらいなんです。次の長編はこんなにお待たせしないように3〜4年くらいで届けしたいなと思っています」と早くも次回作の構想も持っていることを明かした。今作はアヌシー国際映画祭での最高賞であるクリスタル賞受賞を始め、世界中の映画祭を巡り、先日はついにアカデミー賞®長編アニメーション部門のノミネーションを果たした。授賞式に参加された時の気持ちを聞かれたエリオット監督は、「25年前に『ハーヴィー・クランペット』で(短編アニメーション映画賞を)受賞をしてはいますが、アカデミー賞®にまさか2回もノミネーションされるなんて、まるで稲妻に2回打たれるような、そんなことだというふうに思いました」と、『ハーヴィー・クランペット』の主人公が雷に打たれる場面と絡めてユーモアを持って答えた。そして「授賞式は、正直ストレスを感じました。たくさんの人に(自分を)見られますし、取材やメディアの数もとても多くてちょっと疲れてしまいました(笑)。私はむしろ、こういった上映の場のQ&Aを通して観客の皆さんとお話しできる方が楽しいです」と素直な気持ちを語った。

このユニークな作風はどうやって生まれたのか?
「どんな人生にも光と闇がある。だから自分はそれを映画で描いている」
「世界のどの国で見られても、共感されるキャラクターを心がけている」

 Q&Aに移ると、早速、今日の上映に駆けつけたファンから次々と手が挙がった。最初の質問は、監督の作風についての質問で、「時に世の中の残酷な一面も描く作風や表現方法は、どのようにして生まれたのか?」という質問。エリオット監督は、「私たちの人生には笑えることも悲しいこともあります。光と闇があるんです。ですので、私の映画はみんなの人生を反映させているだけなんです。その上で、映画を観ていただいた時に、何か皆さんの“(心の)栄養”になるような作品を作りたいんです。単に楽しいとか悲しいという以外に、何かが心に残るような作品です。2回、3回と繰り返し観たくなり、映画を観たそれぞれの方々にとって特別な意味を持つような作品を作りたいです」と真摯に返答した。さらに「例えば『自分はこの世界であまり価値がないんじゃないか?』と思ってらっしゃる方や、『自分は他の人には見えずに、透明人間みたいになってるんじゃないか?』と思ってるような方に、『いや、自分は価値があるんだ、一人じゃないんだ』と感じられる助けにもなれるようなキャラクターを作るように心がけています。今作の主人公であるグレースは、映画の中で孤独な時間を経験します。でも、おそらく皆さんも人生のどこかでそういう経験をなさっているのではないかと思いますし、社会に居場所がないと感じる人もいらっしゃるかもしれない。実は私自身も、この変わった作風のせいで、映画業界ではなかなか話せる人がいないんですよね。そういう時、自分には居場所がないんじゃないか?と思ってしまったりすることもあります。だからこそ、今回のようなQ&Aがとても好きなんです。それは自分の友人をここで見つけることができるから。ちょっと変に聞こえるかもしれませんが、グレースは私自身なんですよね。他のキャラクターにも同じく私自身が投影されています。自分が作るキャラクターはとにかく国を問わず、皆さんが共感できるということを大事にしているんです」と語ると、会場からも拍手が起こった。

今回はハッピーエンディングにしたかった!

 『メアリー&マックス』に続き、エリオット監督作品のエンディングは、忘れられないようなカタルシスをもたらす。本作も例外ではなく、上映後もXには「こんなの見せられたら泣くよ!」といった感動のコメントが続々と投稿されている。(ネタバレになるので書けないものの)映画を観た観客からはエンディングについての質問も挙がった。エリオット監督は、「私が書き始めた時、8年前ですが16本の脚本のドラフトを作ったんです。実は、最初の案は少し悲しすぎるものでした。今までの作品はあまりハッピー・エンディングとは言えないものでしたので、今回はハッピー・エンディングにしたかったんです。ただ、安易な形ではなく、主人公のグレースが、自分の価値を見つけて、自立した強い女性になるところまではきちんと描きたかったんです。エンディングはある意味、彼女が報われるようなものにしたかったから、今の形になりました」と丁寧に意図を語った。

火葬と土葬について 死にまつわるものへの興味

 観客からは少し角度を変えた質問もあった。「オーストラリアでは土葬が主流なはずだが、映画では火葬が登場する。これには何か意図がありますか?」という質問が挙がると、エリオット監督は「実はオーストラリアでは、以前は土葬が主流でしたが、現在は火葬も増えているんです。今回、火葬を選んだのは、『身体が灰になる』ということでコメディ要素に使い易かったからです。また、オーストラリアでも日本と同じように遺灰を壺に入れて家に置いていらっしゃる方が多いんですね。土葬だとお墓になって墓地に置かれるけれども、火葬だとなぜ皆さん家に持って帰るんだろうってことがとても不思議だったんです」と“死”にまつわるものへの興味が前々からあったことを明かした。

本作の見どころは?
「すべてが手作りでCGは一切使用していないということ」
「良質なアートというものは人間の手によって作られるものなんです」

 最後に本作の見どころをたずねられたエリオット監督。すると即座にこう答えた。「全部が手作りでリアルだということです。CGは一切使用していません。火事は黄色のセロファンを使っていますし、タバコの煙はコットン(綿)です。人形たちの“涙”については、(『これは言ってもいいのかな(笑)?』とスタッフを見遣りながら)性交時などに使われるローションを使っています」と明かすと、会場からも驚きの歓声が上がった。監督は続けて「CGで作られるアニメーションも多いけれど、おそらくこの先、CGI(※Computer Generated Imageryの略で、コンピューター・グラフィックスで生成した画像やアニメーション)によってアニメーションが作られていくということが、残念ながら増えていくのではないかと憂えています。そこで皆さんにも思い出していただきたいのが、『良質なアート』というものはやはり人間の手によって作られるものだということで、AIというものは、『人間の経験』というものを取って変わることができない、絶対にできないんだということ。AIが今後どういうふうに活用されるかということは、しっかりと見ていきつつ、やはり日本を含め、世界中のアーティストを祝福するような、そういう映画の見方であったり、作品の見方をしていきたいと思います。ありがとうございました!」と力強く締め括ると、会場からは盛大な拍手が沸き起こった。

公開表記

 配給:トランスフォーマー
 6月27日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿 ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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