映画『線は、僕を描く』の都内で行われた完成報告会に、横浜流星、清原果耶、細田佳央太、江口洋介、三浦友和と小泉徳宏監督が登壇して作品についてクロストークを繰り広げた。
本作は、砥上裕將の小説「線は、僕を描く」(講談社文庫)を映画化。アルバイト先の絵画展設営現場で偶然水墨画と出会い、巨匠・篠田湖山(三浦)に見出され、水墨画を学ぶことになり、その世界に魅了されていく主人公・青山霜介(横浜)と、霜介と出会い、ライバル心を抱くようになる篠田千瑛(清原)らが織りなすドラマが描かれる。『ちはやふる』の小泉監督を筆頭に製作チームが再結集した。
主人公の青山霜介役を務めた横浜は「墨と水と筆と紙だけで、こんなにも美しい絵が広がることに感銘を受けました。1年ほど実際に(練習を)やってみて、すごく大事な時間が過ごせました。水墨画を通して自然と向き合い、大事なことに気づけたので、本当に幸せな時間を過ごすことができました」と撮影を通じて水墨画と真摯に向きあった感想を、感慨深げ語った。
湖山の孫で、霜介にライバル心を抱くようになる篠田千瑛役を務めた清原は「自分にはとうてい描けないだろうって思うような絵などを、たくさん練習させていただく機会がありました。描いているうちに、触れて良かった、日本文化だなと思いました」と振り返った。
水墨画の大家、小林東雲が水墨画監修参加している。小林東雲によると、線を描いただけでその人がどんな人が分かるのだそう。
清原は「『思ったより大胆な線を描く人ですね。意外です!』って言われました」と話し、「負けず嫌いなところがあるので……」とコメントした。「練習する機会をいただけたのですが、長い時間水墨画に触れてきたであろうという所作に注力して演じていました」と役作りについて語った。
横浜は「『力強い線を描くね―』と言われました。霜介は繊細な線を描くので難しいところでした。どうしていこうかと……。その時の内面が映し出されるので、霜介のその時の気持ちになって線を描くようにしました」と苦労を吐露した。
共演した清原の印象について横浜は「役者としてリスペクトしています。以前3年ほど前に共演させてもらったのですが、芯があって、すさまじい集中力を持っていて。本当に頼もしいというか、信頼の置ける方です。刺激をたくさんもらいました」と語った。
一方、清原は「この数年でたくさんの経験を積まれて、あの頃より背中が何倍も大きく見えました。現場を引っ張っていく感じとか……。すごかったです」と称賛。横浜と清原は、お互いへのリスペクトを明かした。
霜介の友人役の細田は、横浜について「人見知りなんで、どうやって話しかけようかと悩みましたが、たまたま飲み物の好みが同じ(炭酸飲料)だったので、『お好きなんですか?』と声をかけました(笑)」と撮影現場で間エピソードを披露した。
横浜は「好きなものを共有すれば距離が近くなる」と話し、細田については「明るくて、実直で、好感の持てる方です」と印象を語った。
湖山の弟子の湖峰役を務めた江口は、横浜について「すごくストイックですね」と横浜の徹底した練習振りを称賛。「映画のなかでも彼(横浜)は、自分で描いているんです。自分で描いたものが、練習した跡として部屋中にあるんです。水墨画にどっぷり浸かっていましたね」と感心しきりだった。
水墨画の巨匠・篠田湖山役を務めた三浦は「入りやすい世界なんですが、なかなか先生のように出来なくて大変でした」と苦労を明かした。
横浜の印象について、三浦は「会うまでは、ナルシズムを楽しんでいるんじゃないかなという印象があったけれど、現場にコンビニの小さな袋で来て、そのなかに台本とか携帯とか入っている。『バッグないの?』と聞くと、『これです』って(笑)。その様子を見て、霜介だなと思いました」と横浜に偏見を持ってしまい、失礼したと詫び、横浜の俳優振りを絶賛した。横浜は「その偏見を覆せてよかったです!」と笑顔だった。
小泉監督は「やるべきじゃなかった。悩んでしまいました」と難しい映像化に苦労したことを明かした。工夫したのは「皆さんに徹底的に練習してもらいました」とコメントした。
最後に横浜は「水墨画の魅力もたっぷり詰まっていますし、人や自然の温かさ美しさ、言葉の力をとても感じました。皆さんにも何か感じてもらえたら嬉しいです」とメッセージを送った。
登壇者:横浜流星、清原果耶、細田佳央太、江口洋介、三浦友和、小泉徳宏監督
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:東宝
2022年10月21日 ROADSHOW