映画『スクロール』の完成披露舞台挨拶が都内で行なわれ、W主演の北村匠海、中川大志、共演の松岡未優、古川琴音と清水康彦監督が登壇してクロストークを繰り広げた。
本作はYOASOBIの大ヒット曲「ハルジオン」の原作者としても知られる橋爪駿輝の小説「スクロール」(講談社文庫)を映画化。理想と現実のギャップに溺れながら社会や自分と向き合う若者たちの姿が描かれる。『CUBE 一度入ったら、最後』や『MANRIKI』などの清水康彦監督がメガホンをとり、米津玄師など多数のMVを手がけてきた川上智之氏が撮影監督を担当。『サバカン SABAKAN』で監督デビューを果たした金沢知樹氏と、ナイロン100℃/劇団コノエノ!の木乃江祐希らが脚本を手がける。
上司のパワハラに耐えながら消えてしまいたいと思い詰める〈僕〉を北村が、何事も楽しければいいと刹那的に生きるユウスケを中川が演じる。
北村は「やっとこの映画が完成を迎えることができ、それを皆さんに伝えることができて、とても嬉しく思います」と客席に向かって挨拶。
北村は、「“僕”という役名で演じるのは今回でおそらく3回目」と明かしながら、「“僕”という役を演じるたびに、俯瞰的な感覚を持っていないといけないと思います」と話す。さらに役作りについて「“僕”という役は自分自身のことでもあり、清水監督でもあると思う。現場では監督と会話しながら作り上げていきました」と語った。
また、今回の〈僕〉と古川が演じる〈私〉の世界について北村は、「すごく抽象的でありながらすごくグロテスクであり、そしてすごいファンタジーであり、リアリティのあるふわふわした世界」と説明した。
ユウスケ役を務めた中川は「ユウスケはテレビ局員として派手には見えるけれど、自問自答が多いキャラクター。孤独で繊細な男です。“僕”とユウスケは同じ人物像を二つに分けたかのように、繋がるところがたくさんあった」と自身の役柄を分析した。
北村と中川は、同事務所で、2人もそれぞれ小学4年、5年生のころに出会い、オーディションで同じ役を競い合ってきた間柄だという。
北村は「運命というか、ダブル主演がこの作品で良かった」としみじみ。中川も「こういう形で僕らが共演するのが宿命というか運命というか、この作品で良かった。お互いに意識する存在で、感慨深い。思い出深い作品になりました」としみじみ。
“結婚こそすべて”と信じる菜穂役を務めた松岡は「菜穂は、いろいろなリミットを自分で決めていて、そのせいで視野が狭くなっている人。でも、清水監督は、菜穂の持つ本当の気持ちなど大切に描いてくれました」と話した。
何者にもなれず“特別になりたい”と願う“私”役の古川琴音は「“私”は自分らしさとは何かを分かっている人。今の時代、それはすごいことだと思います。演じる中で“私”のパワーをお裾分けしてもらっていました」と話した。
タイトルにちなんで「自分のスマホでスクロールして見返したい写真は?」という質問が飛ぶと、スマホで写真を撮らないという北村は、「200枚ぐらいしかない」と告白。「さすがに思い出がなさすぎるなと思って、今年から撮ろうと思っている」と決意。そんな北村は、ふと思ったことを書き溜めているという“メモ帳”を清水監督と見せあったことがあるという。
中川は、引っ越しの内見で撮影した“まっさらだった頃の部屋の写真”を選んだ。
松岡は、「私は3万枚ぐらいありますね」と、携帯を変えても写真のデータは長年にわたって引き継いでいることを明かす。
北村と松岡は2011年のドラマ「鈴木先生」をはじめ多数の共演歴があり、松岡は「北村の中学1年生のときの写真もあります」と最初の共演時の写真も保有していることを明かした。
松岡が北村について「かわいかった。前髪がねえ、(額に手を当て)まゆ毛のこのくらいで……。それを本当にお見せしたい」と話すと、北村は「恥ずかしいからまじでやめてくれ」とちょっと焦り気味。ちなみに松岡は北村のことを”キタムラ”と呼んでいる。北村は「“キタムラ”と呼ぶのは、僕の知り合いでは彼女だけです」と苦笑。
さらに、松岡は「寝顔もあるよ」「いつまでも持っていようと思います。30歳くらいになったら許してくれるかもしれないから、そしたら一斉に放出します」とコメント。北村は苦笑いだった。
古川は“実家で飼っている2匹の兄弟猫が家に来た日の写真”を選び、もらったばかりの頃の小さな猫の写真を何度も見ているそうだ。
清水監督は、作品の見どころについて「映画が始まる最初のカットに注目してもらいたい」とアピール。「夕方から準備が始まって、ワンテイク目が回ったのが朝の3時」と話す中川。朝8時~9時頃までかかったという撮影に、北村は「不思議だったのが、全く苦じゃなかった。確かに1カット目はヤバい! 映画史に残ります!」と胸を張った。
最後に中川は「小学生の頃から同じ事務所で活動してきて、今もすごく意識をする存在。20代半ばになって同じ映画でW主演を務めることができたということが感慨深い、思い入れのある作品です。愛のある映画なので、ぜひ受け取ってください」。
北村も「ユウスケと〈僕〉が表裏一体でひとつだから僕たち2人がこの映画でW主演できたのかな。宿命というか運命というか。この作品は皆さんの物語であり、どこかにいる誰かの物語。そんな視点で観ていただければ嬉しいです」とアピールした。
登壇者:北村匠海、中川大志、松岡茉優、古川琴音、清水康彦監督
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:ショウゲート
2023年2月3日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開