インタビュー

『いちばん逢いたいひと』堀ともこ(プロデューサー)オフィシャル・インタビュー

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 倉野尾成美(AKB48 チーム4のキャプテン)映画初主演で、白血病を克服した少女と、そのドナーになった男の数奇な運命を、実話を元に描いた奇跡の感動作『いちばん逢いたいひと』《来年2月17日(金)よりロケ地である広島県・福山駅前シネマモードにて先行公開、2月24日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開》。自身の娘が白血病になり、家族で乗り越え、自身もドナーとして骨髄を提供した経験を持つプロデューサーの堀ともこさんのインタビューが、2月4日の世界対がんデーを前に到着した。

 なお、2月9日(木)朝11:15より渋谷ユーロスペースにて、本作の舞台挨拶付きの完成披露上映会の開催も決定。上映後舞台挨拶に、倉野尾成美、三浦浩一、大森ヒロシ、崔 哲浩、丈監督が登壇する。予約は右記URLから:https://w.pia.jp/t/ichi-ai/(外部サイト)

娘さんが白血病になったとのことですが、いつの話ですか?

 そうです。

楓の子ども時代役の田中千空ちゃんは、堀さんの娘さんをモデルとしているかと思いますが、子ども時代のシーンを見て、いかがでしたか?

 リアルを追求してしまえば、闘病生活ってかなり厳しいんですけれど、うちの娘の現実とは全然違った意味で、私の理想のように、生き生きと演じてくださいました。娘が無菌室に入っていた時に隣だった2つ年上の女の子は、ドナーが見つからなかったんです。臍帯血移植をしたんですけれど、助からなくて、亡くなってしまいました。それを監督にお話しして、子ども時代のシーンを書いていただきました。実際は、同じ病気の患者さんが亡くなった時に、「自分も死んじゃうんじゃないか」と心配してしまうので、病院では、同じ病気だということも、ドナーが見つかったということも知らされないような環境でした。

高島礼子さんが演じたお母さんは、堀さんがモデルかと思いますが、現場で演技を見て、いかがでしたか?

 自分の時は、あんなに頑張れなかったと思います。ほぼ1年間本当に辛かったんです。リアルに映画にしてしまったら、観る人が耐えられないので、ものすごく明るい笹川一家は、「ああいう母親になりたかった」という理想像です。あの時に戻って、もっと余裕を持って見守ってあげたらよかったなと思います。崔 哲浩さんが演じる柳井との対比のために意図的に明るい家族にしていますが、実際は笑いなんてなかったんです。娘が辛い思いをしていると自分も辛くなってしまいます。娘の気をそらせるような明るさが自分になかったなと思います。

骨髄バンクについてのブルーナのチラシをコピーしているシーンがありましたが、皆さん、ご自分たちでコピーして配っているんですか?

 それはなかったですが、やればよかったと思いました。あのシーンは、私がお願いして作っていただいたシーンです。ドナーが見つからなかった時に、私たちに何ができるかって言ったら、実際にドナーを探せるわけではないので、ドナー登録を呼びかけることしかできないんです。いろいろな方にドナー登録をしていただかないと、適合する型が見つかる確率が低いです。うちの場合は、思ったより早く見つかったので、それはしなくて済んだんですけれど、もう少し遅かったらやっていたと思います。
 この映画を作るきっかけは、全ての患者さんに生きるチャンスを与えてもらいたいという気持ちからです。うちはたまたま助かったけれど、現在ドナー登録者は50万人いるのに、適合する型が見つからない人のほうが多いんです。移植をしたからといって全員が助かるわけではないんですが、分母を増やすしかないんです。亡くなった方たちも周りにたくさんいて、なんでうちの子だけが助かったのかとずっと考えてきていて。助かって嬉しいはずなのに、どこかでごめんなさいという後ろめたさがあるんです。うちの娘はたまたま助かったけれど、そうじゃない人たちもチャンスを与えてもらいたいという気持ちです。

骨髄を移植してもらう際、ドナーのことはどれくらい分かるんですか?

 どの辺の地域に住んでいるかと性別と何歳くらいかは教えてもらえました。うちはクリスマスカードが届いただけです。お互い2回まで手紙を書けることになっていますが、私たちの場合は、1回ずつでした。家族全員で書きました。

堀さんは骨髄ドナーに登録しただけでなく、適合して骨髄を提供したこともあるとのことですが、適合してから手術までの過程は、本作で描かれている通りなのでしょうか?

 娘が退院してすぐ登録しました。適合したのは、その3ヵ月後で、早くてびっくりしました。夏に適合して、1月くらいに移植を考えていると言われました。それまでの間、体調管理をしたり、お薬を飲んじゃいけないなど規制があります。何回か検査を受けたり、説明を受けたりしていたら、患者さんの都合で手術が12月に早まりました。娘の場合も移植が決まってから、手術まで半年以上かかりました。けれど、例えばその方が当日風邪をひいていたら、手術がなくなってしまうんです。別の日に延期はできなくて、また初めの抗がん剤治療に戻るので、命に関わるんです。なので、私が提供するときもすごく気をつけましたし、祈るような気持ちでした。本作で、高島礼子さん演じるお母さんが、「ドナーが見つかった」と、廊下を歩くシーンの演技は、自分の記憶と重なり、観る度に泣けてくるのですが、実際は、見つかったのはただの一歩でしかなく、心配が尽きなかったので、私はあそこまで素直に喜べなかったです。

「一人の命を救えたことが、わしの唯一の誇り」というセリフがありますが、崔 哲浩さんが演じた柳井役のそういう部分は、堀さんの実体験から描いているのでしょうか?

 はい。私の場合は、娘が骨髄をいただいているので、自分が提供するというのは自然の成り行きでした。私も「一人の命を救えたことが誇り」です。

倉野尾さん演じる大人になった楓がドナーに会いたいという気持ちは、娘さんのお気持ちなのでしょうか? フィクションですか?

 それはこの映画を作る時にすごく悩んだ点なんです。「会ってはいけない」というルールが前提にあるので、うちの娘は感謝の気持ちはあると思うんですけれど、実際に会って感謝を伝えたいという気持ちは多分ないと思いますし、私がドナーの立場として、骨髄を提供した相手に会うということも、私自身は全く考えてはいないんです。監督が、どうしても会いたくなるシチュエーションにするために、柳井の人生をあそこまで複雑なものにする必要がありました。全てを失った人であれば、「自分がかつて命をあげたその相手に会いたい」と、そこに救いを求めることはあると思います。今、患者とドナー、お互いが会えるようにしてほしいという運動が実際に各地で起きています。この映画は日本骨髄バンクのルールに則って製作していますが、命を助けていただいて元気になった方が、ご自分のドナーさんに一言でもいいから「ありがとう」を言いたい気持ちは当然ですし、とても共感できます。

キャストについてのエピソードは何かありますか?

 キャスティングの時は私も監督も全然知らなかったんですけれど、本読みの時に初めて(主人公の父親役の)大森(ヒロシ)さんにお会いしたら、奥さんが(本読みの)2年前に白血病で亡くなったという話をされて、(おじいさん役の)不破(万作)さんのお姉さんは、骨髄バンクができる前にやはり白血病で亡くなったと話されていました。不破さんは「今だったらな~」とおっしゃっていました。運命的なものを感じました。

本作はゆうばり国際ファンタスティック映画祭と広島国際映画祭で上映されましたが、行かれたんですか?

 はい。広島では、観終わった方々に、「ドナー登録はどこでできますか?」「どうやったらできますか?」と聞かれて、本作を作った目標が達成でき、ある意味この映画は成功だなと思いました。

本作の見どころはどこだと思いますか?

 闘病生活部分ではなく、楓が一人旅に出るところが見どころかなと思います。小さい頃の気持ちを持ち続けて大きくなった楓が、どういうふうに生きていくかという人生が詰まっているので、そこを観ていただきたいです。「人に感謝の気持ちを伝えたい」というのは普遍的なテーマだと思います。

読者にメッセージをお願いします。

 私は何回も観ているんですけれど、毎回泣くんです。見どころが毎回違ったりするんです。ずっと息子を待ち続ける(中村)玉緒さん演じる親の気持ちもそうですし、切石山の上で、楓と柳井が命の大切さを伝えるところが見どころだと思います。

(オフィシャル素材提供)

公開表記

 配給:渋谷プロダクション
 2月17日(金)より福山駅前シネマモードにて先行公開、
 2月24日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

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