記者会見

『エゴイスト』日本外国特派員協会記者会見

©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

 2月6日(月)、映画『エゴイスト』日本外国特派員協会記者会見が実施された。出演の宮沢氷魚、監督の松永大司が登壇し、海外メディアによる試写鑑賞後の質疑応答機式の会見となった。
 宮沢はアメリカ・サンフランシスコ生まれ。幼稚園から高校までインターナショナルスクールに通い、高校卒業後2年間カリフォルニア大学に留学経験ありのネイティブレベルの英語力を駆使して海外に向けた会見に臨んだ。

 宮沢は英語を話すのは久しぶりだと話したが、「お招きいただき光栄に思います。また、素晴らしい監督とご一緒することができて感謝しています。ここにくるのは前々からの夢だったので嬉しいのですが、英語を話すのは久しぶりなのでお聞き苦しい点があったらご容赦ください」と冒頭から流暢な英語で自己紹介と挨拶をした。

 松永監督はこのテーマを手掛けようと思った動機について聞かれると、2つの理由があるといい、「1つ目は2011年のデビュー作『ピュ~ぴる』で、さまざまな海外映画祭に招待され、その中でLGBTQ+を取り囲む環境が圧倒的に日本と違いました。それから10年以上経って、以前よりは理解され、言葉が浸透していってる気がしますが、先日の岸田首相の『同性婚を認めると社会が変わる』という発言や、首相秘書官の同性愛者への差別的な発言は、誤解や大きな差別を生むと思っています。この映画はLGBTQ+に対しての定義や理解を深く求めるものではありませんが、この映画を見た方が考えるきっかけになったら良いなと思ったことです。LGBTQ+用語を正確にメディアの方に伝えてもらうのも僕らの役割だと思うので、プレス資料の後ろに用語集をつけました。2つ目は、阿川佐和子さん演じる妙子が愛について伝えている言葉があり、それを読んで映画にしようと思いました」と丁寧に答えた。

 続いて龍太役を引き受けた理由について聞かれた宮沢は、実は2度ほどオファーがあったことを明かした。「今回のオファーを受けるそのさらに2年前に1回目のオファーがあったときは実現できませんでした。そこから再度お話をいただいたときに決め手となったのは15年来の友人との体験でした。彼はゲイで、知り合ってからずっと、心地よく過ごせる自分の居場所を探しているように感じました。この映画を作ることを通して、友人のためになるのではないか、そしてLGBTQ+コミュニティのためにもなるのではないかと考えました」と自身の体験から出演を決めたことを明かした。

 会場から質問を募ると、早速松永監督へ『エゴイスト』というタイトルの理由が聞かれた。高山真さんの小説「エゴイスト」が原作となった本作だが、タイトルの理由はそれだけではなく、「一般的に『エゴイスト』という言葉はポジティブな意味では使われない。この映画で描かれている“エゴイスト”については、主人公の行動が悪いことなのか、良いことなのか、愛のあり方とはどういうことなのか、を問いたいなと思ってそのままつけました。観る前と観た後とで、「エゴイスト」の意味が変わると良いなと思います」とタイトルに込められた思いを明かしてくれた。

 演出について聞かれた宮沢は、「松永監督の演出がユニークで、撮影に入る前にリハーサルを重ねていきました。脚本ベースではなく、監督からはシーンの展開の説明のみだったので、即興で芝居をする感じでした。、脚本に書かれている言葉がそのままセリフになるのではなく、お互いに開かれた気持ちで自由にやらせていただいたので、いきいきとした芝居になったかなと思います。慣れない撮り方でしたが、自分の感情が湧き出て刺激的な体験となりました」とこれまでにない、演出と現場であったことを告白。見事な英語を披露した。

 続いてクレジットの中に出てくるIntimacy choreographerという役割について、Intimacyシーンを撮るにあたってどのように感じたかという質問に宮沢は、「過去にIntimacy choreographerが現場に付くというのがこれまでの現場ではありませんでした。これからはIntimacy choreographerがいないという現場が想像できません。こういうサポートがあるというのは日本映画において大きな一歩であると思います」とIntimacy choreographerの存在が安心できる上にIntimacyシーンの同意については必要であると回答した。

 またこの作品ではIntimacy choreographerとLGBTQ+ inclusive directorという担当者について監督へ質問があると「この作品は誰1人欠けても完成させることはできませんでした」と語り、「LGBTQ+ inclusive directorとして入ってくれたミヤタ廉さんの存在はとても大きかったです」とミヤタ廉の存在について話す。居酒屋のシーンなどで出演する浩輔の友人は、皆ゲイ当事者であるため、彼らを探す相談をしたり、Intimacy choreographerのSeigoも誘ってもらったと明かした。宣伝において正確な言葉を伝えるために、監修をしてくれている松岡宗嗣について紹介し、ミヤタ廉と松岡宗嗣が今日も記者会見を見守っていることに感謝をすると会場は拍手に包まれた。

 海外記者からミヤタ廉とSeigoは現場ではどういったことをしたたのか具体的に質問されると「細かく所作やセックスのシーンなど細かい部分を一緒にモニター越しで観てもらい、役者が何か演技で分からないことがあったときは、常に二人(ミヤタ廉、Seigo)に質問してもらうようにしていました」と二人の役割について説明した。

 記者から宮沢に、更迭された首相秘書官のLGBTQ+に関する不適切な発言に対してどう思われるのか、そして日本社会のLGBTQ+に対する理解不寛容、法制化の遅れに対してどう思うのか質問されると宮沢は、政治的な発言はあまり表立って述べてこなかったと語るも、「発言が出たことによって、たくさんの人が声を上げて、その失言に意見をする姿をたくさん見ることができました。日本の今までの歴史を考えても、間違いなく前進はしていると思いますが、他国に比べると遅れを取っているところもあると思います。そんな中、世論がたくさんの声を上げたことは日本の未来に希望が見えました。とても悲しい出来事ですが、それによって前向きな皆の意思の強さが見えましたし、そこに、もっと注目が集まってもいいんじゃないかなと思っています」と自身の気持ちを露わにした。

 最後に司会者より、宮沢にどうしてもしたい質問があるとのことで、「2015年に鈴木さんが外国特派員協会記者会見に登壇され、なぜハリウッドに出ないのかという質問に対して鈴木さんはまだ日本で学ぶことがたくさんあると答えたが、宮沢さんはいかがでしょうか」と質問すると宮沢は、「海外で活躍することは大きな夢の一つではあり、ハリウッドやアメリカだけでなく国外のどこかで活躍するために試行錯誤しています」と語った。そして今年ロンドンに行く機会があり、海外の役者に圧倒され、「自分も近い将来願わくば海外で撮影された作品を携えて、日本外国特派員協会記者会見に参加するために最善を尽くして頑張ります」と海外進出への意欲を示した。

登壇者:宮沢氷魚、松永大司監督

公開表記

配給:東京テアトル
2023年2月10日 全国公開

 (オフィシャル素材提供

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